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◆「サブリミナル・インパクト」・・・

脳と心について面白い本が出ています。

題して「サブリミナル・インパクト」、下條信輔著、ちくま新書757です。副題が“情動と潜在認知の時代”とあり、著者は知覚心理学、認知神経科学がご専門のカリフォルニア工科大教授。

著者が統括する「潜在脳機能プロジェクト」の成果をふんだんに織り交ぜながら、CMやニュースに刷り込まれ自覚の無いままに踊らされていることの多い世相と、そうなってしまう脳(こころ)のメカニズムが余すことなく解説されています。
こころの構造を「意識」、「前意識」、「無意識」の三層構造ととらえていて、ますます過剰になる環境からの刺激の殆どは「意識」ではなく自覚の無い「前意識」に忍び込み意識を越えた動きをするということなのですが、なるほどと思ったトピックスをいくつか紹介させていただくと・・・

▼心が先か、体が先か
眼球運動を観測しながら顔写真を見てどちらか好きなほうを決めてもらうといった実験をすると、意識が結論を出す前に体が答えを出してしまっていることが解るとか・・・眼球の動きでわかる意識下の選択は最初はゆっくりと、そしてやがて雪崩を起こすかのように一挙に結論が絞り込まれ、その後で意識のレベルに報告書が上がるといった感じなのだとか。
意識はその報告をまるで自分が意図的に選択したかのように感じるため、意識がそれとは異なる選択をすることは難しいとのこと。

▼当初の報酬目当てから糸の切れた凧へ
人は進化の歴史の中で、最初はパブロフの犬よろしく外的な報酬を求めて脳機能をチューニングしてきたが、その反射プロセスの効率を追求していく中で、外的な報酬を待たずに脳内に内的な報酬機能を持つようになった。いったんそうなると後は糸の切れた凧のように内的な快を追及しはじめるとのこと。

▼意外と手抜きな記憶機能
一度行ったことがある場所でも道順を説明しようとすると具体的には説明できないことがある。にもかかわらず実際に現場に向かうと次々現れる風景に見覚えがあり迷うことも無い。現場では全て覚えていたかのような錯覚を起こすが、実は人はいろんな場面をパソコンが写真を取り込むかのごとくディテールの隅々まて覚えているわけではない。
人が持つ記憶はシーンの特徴、ランドマークといった形で保存されていてそれに合致する風景を見た瞬間にそのすべてを記憶していたかのように錯覚するようにできているのだと。人の記憶の特徴はすばやい外部記憶へのアクセスにあり、記憶のほとんどは実は外部の環境そのものなのだとも。

意識が自覚していないところで前意識はこうした種々の仕組みを持ち、意に反してそうなってしまうといった不都合の原因となるのだが、一方においてそれを乗りこえて生きていく上で不可欠な創造性の源泉もまた前意識の機能によるもの。
ということでこの本の最終章は創造性に割り当てられているのですが詳細はこのブログの創造性コーナーで▼稿をあらためてということで・・・(2009.2.21)
by c_mann3 | 2012-04-14 00:00 | Comments(0)
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