◆「思考停止社会」・・・

このブログでも組織の不祥事についていくつか雑感を書いているのですが、不祥事の発生は相変わらずですよね。ですが法令遵守、コンプライアンスといったことが以前にも増して言われるようになるなかで新たな社会の姿が浮かび上がっている・・・そんな切り口の新書が出ています。

題して「思考停止社会」、もと検事の郷原信郎さん著、講談社現代新書1978。
副題が“「遵守」に蝕まれる日本”。職場などで口に出して言うと誤解を招きそうな話ですが、なかなか含蓄のある本です。

ここ数年、日本ではコンプライアンス、法令遵守といったことが強く意識されるようになり、企業や官庁の偽装、改ざん、隠蔽が発覚するたびに大騒ぎになりマスコミを中心に世を挙げてのバッシングが繰り返される。だかそこでは“けしからん”といった倫理の次元に話題が終始し、そうなった動機、背景、それを叩くことによって巻き起こる社会の混乱回避といったことには話が進まず、そこに広がる風景はまさに思考停止の社会。
例えば耐震設計偽装をきっかけに法改正が行なわれたために、一挙に建築不況になったりしたことも・・・

殺人や強盗といった事犯ではなく、社会の仕組みや経済活動にまつわる法律や規制は生きた社会活動の現実とは乖離しやすいもの。

それを補うために米国では常に法を適用し議論を蒸し返し判例を積み上げることで法を時代に追従させていく。
対してして日本ては伝統的に法は神棚に祭り上げ、日常の揉めごとは別の形で調整することが多かったため、結果として法は古色蒼然としていてズレたままのことが多い。
そうした中に突然米国式の法令遵守が言われても、法の精神に照らしてジャッジをしようとすると使い辛く、とんでもない巨悪のように言われていながら実際の起訴理由は殆ど別件逮捕に近い形式違反的なものが多いとのこと。

著者は事犯を感情的なバッシングに終わらせず、その都度そこに潜む法や手続きと実社会の乖離に目を向けて修正を図ることのできる真の法治国家を目指さないと日本はとんでもないことになるのだと・・・確かにそんな気がしないでもないですよね。(2009.4.30)

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◆(2009/5/23追記)不正DMの郵便割引悪用が発覚・・・

ダイレクトメール(DM)広告の発送に障害者団体向けの郵便割引制度が悪用されていたことが発覚。JP日本郵便の支店長等が逮捕される事態になってしまいましたが・・・
この事件の再発防止とかで郵便物の判定が厳しくなり、そのあおりで真っ当な障害者団体の機関紙発行等の運営が行き詰るところが出始めているとか・・・機関紙購読料の8割以上の入金の確認が必要となり、お世話になった方たちへの無料配布も困難に。

不祥事が発覚するたびに、奇妙な形に世の中が捻じ曲がっていく・・・これもまさしく「思考停止社会」を思わせる流れですよね。


◆(2010/9/11追記)不正DMの郵便割引悪用、その後・・・

この事件は真っ当な障害者団体の機関紙発行等の運営が行き詰るといった弊害をもたらしていながら、肝心の事件捜査にもずさんなきめ付けがあったことがだんだん明らかに・・・
この件で逮捕、起訴されていた厚生労働省の元局長村木さんに9/10無罪の判決が・・・これも事件をきっかけにした過剰反応のもうひとつの表れだったということなのでしようか。

それにしても村木さんの無罪記者会見は印象的でしたよね。「残念ではあったが拘留されていたこの一年で、家族の絆がよみがえり、支えでもあった」との言葉には何かしら救われるものを感じさせてくれました。そして笑顔がいいですよね。とんでもない理不尽な事態であったはずなのに・・・心が怒りや憤りのみでうずまれ尽くされていたらこんなさわやかな笑顔は出ない。なんか吹っ切れた境地にあったんじゃないかなどと思ったりも・・・
by c_mann3 | 2008-06-08 00:00 | 組織心理学の心象風景 | Comments(0)
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