◆世界を知る力・・・そして知を志す覚悟

[H22.3.14載]普天間基地移設問題、外交密約の有無・・・日本の拠って立つスタンスにかかわる話題が続いていますが、こうした問題は理念や方向性と現実の間をどうつないでいくかが難しいんでしょね。そうした中で一冊の本が出ています。

題して「世界を知る力」、寺島実郎著、PHP新書646です。

この本は三井物産、ブルッキングス研究所、日本総研といろんな所に身をおきながら世界を見つめてきた著者が、その世界観とそれを構築してきたプロセスを熱く語った本なのですが、それによると・・・

いま世界は一極化、二極化と言った視点では捕らえられないネットワークの時代に入っている。旧大英帝国ネットワーク、華僑や台湾を含めた大中華ネットワーク、そしてアメリカを節にしたユダヤネットワークに情報と人、物、金が集中し益々強固に・・・

にもかかわらず日本からはそうした風景が見えていない。戦後60年、日本人はアメリカを通して世界を見る習性が身についてしまった。そのため日本人の国際性や世界観はある種の鋳型に閉じ込められ、戦前よりも劣る状態となってしまっている。

自身で情報を集め、世界観を組み立て、それを基に連係のネットワークを広げていくことが不可欠だが・・・たとえば日本には世界に通用する通信社と、シンクタンクが無い。世界中の情報をかき集める通信社と、その情報を基に世界観を組み立てるシンクタンクがなければ、情報も世界観もアメリカからの借用が続かざるをえない。

同じことは一人一人の個人にも言える。だから書を持って街に出よう!・・・街に出て拾い集めた情報はそれだけでは断片的な知識に留まる。それは書とつき合わせながら吟味して始めて新たな世界観の構築に繋がる。大空から俯瞰する鳥の眼と、生身の情報を取り込むための地面を這う虫の眼の双方が必要だとも。

そして何よりも“世界を知る力”と題した最終章の副題が“知を志す覚悟”とあるように、情報は教養の道具ではないし、知は覚悟を持って不条理と向き合うためのものであり、情や意と一体のものなのだと・・・

著者は民主党政権に極めて近いといわれているだけにこの本を読むと、アメリカとは友愛と対等の立場に立ち、アジアとの新たな関係を目指そうとする民主党路線の源を髣髴とさせるところが随所に出てきます。ですが一方において“知を志す覚悟”といった最終章を読むにつけ、理念が表層的な言葉として二転三転し空を舞うかに見える民主党の現状は著者の篤い思いとは距離があるのでは・・・などと思った一冊でした。

ところで著者は今、大阪の梅田北ヤードにアジア太平洋研究センターを開設することを推進中だとか。著者の言うように、世界から人と情報を引き付ける磁場のような情報センター、シンクタンクとして育っていくといいですよね。(2010.3.14)
by c_mann3 | 2016-05-12 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)
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