◆続、うつとの会話・・・あれこれ

ふたつ上(にスクロールしたところ)の記事と合わせてお読み頂きたいのですが・・・
日頃は叱咤激励が飛び交う職場にあっても鬱懸念の人が現れると「叱咤」は問題外、「激励」さえも避けるべきであり、会話は“受容、オープンリード、リフレクション”が肝要だとのこと。
ですが一方で海外ではまた違った対処の仕方をしているといった情報も目に付きます。

▼まずはカナダの話・・・
以前、朝日新聞のbe欄での「うつ」に関する記事で気になるフレーズを発見しました。

カナダに本部があり、うつと闘うNPOの日本代表、山口律子さんの紹介記事なのですが、その中で・・・
“「うつ病の人を励ましてはいけない」というのは日本だけではないでしょうか。むこう(カナダ)では患者をうまく励まして、ともに闘っていくという姿勢です。”と・・・

これって、何かすごく示唆的な言葉ですよね。接する際はオープンリードとリフレクションなどといって固唾を呑み見守るだけではラチがあかない場合もある。状況にもよるのでしょうが、もう少し激しい言葉や心の絡み合いがあっても良いような気もします。

▼さらに英国の場合・・・
先日12/19のNHKスペシャル、「うつ病治療 常識が変わる」では英国のカウンセリング風景が紹介されていました。

英国では2007年以降、国を挙げて抗うつ薬中心の治療から認知行動療法をベースにした心理面からの治療に切り替えたとのこと。
鬱が懸念されると病院に行く前にまず近くの診療所の心理療法センターでカウンセリング(無料)を受けるのですが、その風景が紹介されていました。
日本のカウンセリングでは傾聴重視が基本となるのでしょうが、ここでは結構ハードな会話が繰り広げられていて少なくともオープンリードといった雰囲気ではない。着地点を見立てて会話を誘導し答えを強要する。そして別の見方を気づかせる。

認知行動療法は薬物療法に比べて改善率が高く、結果として医療制度の総費用も低減できるとのことなんですよね。

▼そういえばロゴセラピーといったものも・・・
認知行動療法といった言葉も無かった数十年前、フランクルの本「現代人の病-心理療法と実存哲学-」(1973)を読む機会がありましたが、この本ではロゴセラピーといった療法が紹介されていました。
生きがいを見失ってしまった人が再び生きる意味を見出すことを狙いとしたセラピーなのですが、別名“逆説療法”というだけあって本の中に出てくる臨床場面の会話はこれも結構ハードで鋭い質問がグサリと突き刺さる禅の問答に近いと感じた記憶があります。

和風カウンセリング、カナダやイギリス風、ロゴセラピーや禅問答・・・いずれも会話を通して違った認知の仕方もあるのだと気づき、変容してもらうことを狙うという意味では同じなのですが・・・心のもつれを解きほぐす会話には硬軟いろんなメニューがある感じはします。


◆となると、あらためて職場での会話とは・・・

香山リカさんの本、「悪いのは私じゃない症候群」におもしろい話が出てきます。
病院で対象を患者として扱う精神科医と、企業の中でとりあえずは健常な従業員と接する精神科産業医では立場も違うし落としどころも違うと・・・

職場での対象は荷重労働に起因し体調に変化をきたしてしまっている本格鬱から、仕事や職場に対する認知プロセスの基礎が無いままに職場に迷い込いこみ途方にくれてはいるが私生活では元気はつらつといった若者までタイプはいろいろ・・・
職場の鬱ではおそらくスキルの不足、職業観、組織観の不適切といったこともきっかけや原因になりそうなのですが、いったん病院の門をくぐると精神科診療室ではおそらく原因も結果もが心の問題として取り扱われてしまう。

今の時代、職場ではちょっと突っ込みすぎるとパワハラと誤解されかねない風潮が強まっていますが、病院に駆け込む手前の段階としての職場という臨床現場で日常的に有効な会話、OJTならぬオン・ザ・ジョブ・カウンセリングとしても使える会話とは・・・といったことが気になりますよね。(2010.3.17)
by c_mann3 | 2009-04-10 00:00 | 組織心理学の心象風景 | Comments(0)
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