◆日本辺境論・・・

内田樹著「日本辺境論」、新潮新書336。
日本人ほど日本人論が好きな(自身の位置付けを気にする)民族はいないとのことですがこの本も面白い日本人論の一冊です。

そして読み進めるうちに、山本七平さんの「日本人と組織」に出てくる“円環的枠組組織”や河合隼雄さんの「中空構造日本の深層」ともどこかでつながっているような感じもしてくるのが不思議です。

日本はいつも中華や西欧といった自己を主張する国や文化の辺境として存在してきた。そのため自国や自身の自我が世界の中心といった思想を持つことは苦手というか、できないというか、そんな気がもともとないのが特徴だとか。

したがって日本人固有の何かを探しても表面的には何重にも借り物を装っていて見えないが、実はその借り物を借りて取り込む際の振る舞いには古来から変わらない固有の様式があり、それが辺境の辺境たるゆえんなのだと。

たとえば国名の「日本」・・・日の出ずる国(つまり東)ということ自体が「越南(ベトナム)」などと同じように中華を軸とした辺境の方位を現したもの。これは例えると自身の居場所を絶対位置では表現せず、常に何がしかのランドマークを基点にした相対位置で表現する習性があり、自身をランドマークにするといった発想は無い。

他にも辺境ゆえに身についた日本人の特質の話が満載です。
例えば「道」・・・武道、茶道、書道と全てを「道」として捉えどこまで行っても「私は道半ばの未熟者ですから」と一見謙虚ではあるが、それは頂点に立とうとしない責任回避の姿でもある。

そして「機」を捉える・・・機を捕らえてその瞬間に何かをなそうという発想も自我の意図するところに従って自身から動く西欧の発想とは異質。目的や意図があるのなら機を待つのは時間のムダだし、機の状況で対応を変えるのでは恣意的な生き方とは言えないと。

さらには「ブリコルール(器用仕事)」といったものまで出てくるんですよね。このブリコロール、初めて聞く言葉だったのですがレヴィ=ストロースが「野生の思考」で使っている概念だとかで、これもまた面白い。

ですが著者は“だから日本人はダメなのだ”と言いたいわけではない。そうした日本人の特質をポジティブに自覚しそれを活用していくしか道はないのだとのことです。

そしてできればその特質を言葉にし世界に向かって表現できればいいのだが、こうした概念を表わす日本語を翻訳することは至難の業なのだと・・・となると日本人的な発想がグローバルスタンダードになることはやはり至難の業ということなんでしょうね。(2010.6.30載7.20改)
by c_mann3 | 2010-06-16 00:00 | 組織心理学の心象風景 | Comments(0)
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