[2010.8.21掲載] 菅政権が掲げている増税、福祉による経済活性化を既に実践している先進国、スエーデンの最新事情を紹介した本が出ています。
題して「スエーデンはなぜ強いのか」、北川孝義著、PHP新書681。 スエーデンでは戦後の経済発展の労働力確保と男女平等理念のもと女性が急速に社会に進出した結果、一挙に家族が崩壊し、受け皿として国家の家族、「国民の家」構想が立ち上がる。最初は子供の救済から始まったが、経済の成長と増税を背景に枠を広げてたどり着いたのが現在の高福祉国家の姿。 高福祉には高負担が伴うが少子高齢化、経済の減速はいずこも同じで、ここ十年をかけて持続可能性を重視した制度に順次変更。そんなことができるのは国民の政府への信頼があってのことであり、それを担保するのが徹底した情報公開、説明責任。 市場運営では、分野を明確に峻別した上で市場原理を徹底利用するのが特徴。 教育、医療は国営を保持するがそれ以外は徹底的に市場原理を活用する。したがってバブルがはじけても基幹産業さえ救済しない。企業のリストラはOK。一方で失業者には手当てと職業訓練。このセットで労働力の流動化と産業構造の再編成を促し市場の効率化と活性化を狙う。 日本でも話題になることが多くなったH&M、イケアといったスエーデン企業も特徴的。顧客の個性を前提に多様性のある商品展開を高品質低価格で提供することをモットーとし、社員、ユーザーを含めた大家族主義的な運営が特徴だとか。 そういえばテレビで紹介されていたH&Mジャパン一号店の開設パーティーでは本国から赴任した女性社長の横で走り回る小さな子、それを見守るご主人の姿があったりして印象的でしたよね。 個性的であり自由で平等であることが国民にも企業にも国家にも大前提。EUには加盟しているが独自の社会経済システム保持の妨げになりそうなユーロの導入には懐疑的。 おりしも菅政権は増税、福祉による経済活性化を掲げていて参考にはなりそうですが、政府への信頼が前提といわれると・・・日本では簡単に真似ができるものでもなさそうです。 でも大家族主義的な企業経営のくだりは読んでいて、どこか懐かしい感じもあるんですよね。(2010.8.21)
by c_mann3
| 2016-01-07 00:00
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