◆変わる世界、立ち遅れる日本 ・・・

[2010.10.27掲載] 英国の「エコノミスト」元編集長がリーマンショック以降の三年間の世界経済を展望した本が出ています。題して「変わる世界、立ち遅れる日本」、ビル・エモット著、 PHP新書655。

日本の読者向けに書き下ろされたもののようで、小泉政権から現在の民主党政権に至る日本の経済政策についてもいろいろと言及してくれています。

著者は目の前の激変を数十年単位の歴史的なうねりの表れとして捉えていて、そうした視点で見ると・・・

リーマンショックで世界が変わったというが結局何も変わってはいない。ショックが急激で大きかったため各国の政府は巨大な資金を投じて一時凌ぎの施策を連発したが、ほとぼりが冷めるともとの木阿弥の世界に戻りつつあり、たとえば米国では政府資金でまんまとリセットを果たしたメガバンクでも再び役員が巨額の報酬を手にしはじめている。結局体質は変わらず、歴史的なうねりとしての変化への対応は今だ取り残されたままの状態が続いている。

では歴史的な変化に対しての調整はいつ始まるのか・・・

著者は、ひとつには遅かれ早かれそうなる中国元の変動相場制移行で中国の体質が変化し世界経済のバランスが再調整される。また重油価格の高騰による新たな技術創造が進行し、場合によっては産油国の経済優位が新たな国に移るといったことも起こりえる・・・そうしたことを積み重ねながら国家や経済ブロック間のバランスが変化することで歴史はゆっくり、しかし確実に動いていくものなのだと。

そんな中で日本の行く末は・・・

持続的な経済発展には市場原理が働く中での不断のイノベーションと生産性の向上が必須だが、60~80年代の日本の急成長は製造業の生産性向上によるものだった。その後の失われた二十年についてはいろんな原因が言われるが・・・最大の要因はその後、続いて行なわれるべきだったサービス業の生産性向上が全く手付かずのまま今に至っていること。
これに対して構造改革を叫んだはずの小泉政権でも実は手がうてていないし、続いて出現した民主党政権は過度な市場原理や規制緩和を批判するが市場原理自体が悪かったわけではない。

この閉塞感を打破し、さらに生産性を向上させるためには日本は従来の製造立国神話からの脱却が必要。インフラや行政を含めたサービス部門はすでにGDPの70%を占めておりこの分野での生産性向上がなければ再度の成長はなく、そのためには真の知識経済社会を目指すべきなのだと。

どうやら著者はパックスブリタニカがパックスアメリカーナに移行していったような歴史的な時間尺度で経済を見ておられるようで、そう思って改めてこの本のタイトルを眺めると・・・何とも味わい深く示唆的な感じのする本なんですよね。(2010.10.27)
by c_mann3 | 2016-05-14 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)
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