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◆マネジメント信仰が会社を滅ぼす・・・

ちょっとドッキリさせるタイトルの本が出ています。ですが中身は真摯、しかも深刻な内容なのですが読みやすく書かれた感動本です。
題して「マネジメント信仰が会社を滅ぼす」、深田和範著、新潮新書401なのですが、この本によると・・・

かつての経営書は深遠な哲学書、思想書といった趣があったが、この十年近くの傾向としてアニメ版ドラッカー『もしドラ』のヒットに代表されるように、マネジメント本がどんどん読みやすくなりしかもマニュアル本化している。

併せて経営者や管理職の経営書に対する反応も様変わりしている。かつてはコンサルタントが経営書に基づく指南をしようとしても“現場を知らない学者の言うことなど当てにはならない”と一蹴し、自己の信念で経営にまい進する経営者が多かった。不思議なことにそうした会社からはどんどん新事業や新製品が生まれ日本は高度成長を遂げてきた。

ところがここにきて、哲学や思想を議論するのはダサいといった風潮の中、スマートなマニュアル本がもてはやされるようになり、理路整然とした中期計画書や業務手順書、ITが駆使され完璧の管理体制が浸透するようになる中で、気がついてみると会社はビジネス志向からマネジメント指向に変身し、新しいビジネスへの挑戦意欲は影を潜めてしまった。これが日本経済長期低迷の一因なのだと・・・

理路整然とした“意見はあっても意思が無い”、失敗してもそれはマニュアルや規定のせい・・・こうした風潮を打破し、経済を活性化させるためには再度“経験と勘と度胸”をよみがえらせ、人には頼らず、自分自身が立ち上がるべきなのだと。


ところでこの本、皮肉にもというか面白くもというべきか・・・巻末の参考文献として往年の経営論の名著のリストと解説を添付。そして信仰に陥らないように取扱いには“自己責任”でご注意をと・・・

たしかに経営論自体が悪いわけではない。次々と紹介される経営論を勧められるままに盲信して吹聴する人、信仰しているふりをして巧妙に自己の責任を回避し思考を停止させてしまった人、マネジメンシする人とされる人が分業し、する側の人が自己目的化した精緻な制度や作業を強要しはじめたこと・・・そうしたことが折り重なって今日の状況に至った感はある。

ですが実は著者はさんざんマネジメント論を広めてきたコンサルタント会社のご出身。マネジメント信仰を加速したのはコンサルタントじゃないか等と言われかねない立場の人が、あえてこんな本を書かなければならないほどに事態は深刻ということのようです。(2011.1.8)

なお、信仰過剰の弊害が言われるものの一つ、“成果主義”については別掲記事も・・・

by c_mann3 | 2008-06-06 00:00 | Comments(1)
Commented by らゑしん at 2011-05-05 01:33 x
私もマニュアル本の類は敬遠していたのですが、最近、以前よりは速先して読むようになりました。

マニュアルなんて、所詮人間の考えたこと。直接肌で感じて、自ら考えを巡らし、試行錯誤した中にこそ、「生きた理論」が出来上がるのだと思います。それこそ、自らの感じている「クオリア」と深く対峙してこそ、経験は生き生きと力を発し始めると思うのです。


けれど、最近は、その思索の道しるべに、マニュアル本に頼るのも良いのかもしれないと思いました。それそのものをやるというより、その考え方を追体験すること。ひょっとしたら、哲学の名著を読むのと同じことなんでしょうか?
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