◆新エネルギー戦略決定・・・風穴があきましたね。

[2012.9.17記] 首相を含めた関係閣僚が出席した「エネルギー・環境会議」で新たなエネルギー戦略が方針決定されて三日が経ちましたね。せっかく思い切って30年代に原発ゼロ%を目指すと打ち出したのですが、結果は選挙目当て、矛盾だらけ、具体性が無い・・・と散々な評判です。
 
ですが方針をよく読むと文面としては凄くよくまとまっていて包括的になってきた感じもあり、もう少しお褒めの言葉もあってもいいと思うのですが・・・

http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2012/pdf/20120914senryaku.pdf

第一章・・・40年限度厳守、新増設はしない、2030年代にゼロを目指す、の脱原発三原則。
第二章・・・節電と再生エネルギー、第三章・・・安定供給のために火力を重視、第四章・・・電力システムの改革、第五章・・・地球温暖化の25%削減を明確に。

世間の目は第一章の原発比率や年限ばかりに向きがちですが、今回の注目点は何と言っても第3章の火力です。
原発にお引き取り願う後継としては再生エネルギーと火力が車の両輪と位置づけ、やっと火力に真正面から言及。しかも火力はLNGやコージェネだけでなく、石炭火力もありと。そうなると問題になるCO2の25%目標は第五章を設けてハッキリ見直しになると言明。
 
エネルギーのポートフォリオとしては、すごくバランスが良くなり、遂に未来に向かって風穴があいたという感じです。確かに言われているように選挙目当てのきれいごとの面はあるのかもしれないし、未消化で矛盾を残したままの所もあったとしても、これが一つの方向性になることは確かです。
 
こうして打ち出された以上は曲がりなりにも、それと整合性のある形での施策や予算措置がとられます。現にコージェネ優遇の予算措置が取られ始め、シェールガス権益には国の資金も投入され始めている。火力発電建設の最大のネックのアセスメント期間も多少は短縮されそうです。
 
もともと不安定電力のソーラーや風力が原発の置き換えになるはずもなく、火力こそは原発に憂いなくお引き取りを願うための快速、豪直球です。今回の方針決定でそれが加速されるなら、その効果が出始める2020年ごろには日本のエネルギーの状況は一変しそうです。
 
現在は「原発が無ければ計画停電不可避」、「割高な再生エネルギー依存で電気代を高騰させるか安価な原発か」と脅迫まがいの議論が続いていますが、2020年には「もはや原発は不可避ではないが、やや割安な原発はいかが?」といった程度の落ち着いた冷静な議論になっていそうです。
 
コストにしても大盤振る舞いの再生エネルギーに置き換えるから高くなる。ソーラーを抑制し石炭やLNGの比率を高めれば安価なシェールガスの普及と相まって様相はかなり変わりそうです。
 
ところがそれほど威力のある第三章なのに、閣議決定の翌日の朝日新聞では・・・結構スペースを割いた政府文書の要約でなんと第三章のみは“省略”とたった2文字でおしまい。そんな感覚でまともな世論の喚起が出来るのでしょうか?
 
でもものは考えよう・・・第1章と違って話題にもならない第3章なら変な横やりが入ることもない。着々粛々と実行されれば2030を待たず、2020年に決着がつきそうです。

それにしても政府としてはとりあえずはこんな方針を掲げておいて、安全が確認され次第極力早く全基の再立ち上げをしたいのでしょうが、“2030年代には原発ゼロ”と出口がふさがれると入口の風も止まってしまう。来年の秋、大飯が止まると次の再稼働にはまたぞろ反対運動が盛り上がり、全基再稼働どころか5~10基とまとまった基数が立ち上がるのに3~5年かかるんじゃないかと・・・意外とそんなことになりそうな気配もありますよね。


◆その後の顛末について追記(2012.9.19)・・・

せっかく策定した方針ですがその後、国内外からの強い反発を受け政府はほんの数日で一転トーンダウン。一旦決定していた新エネルギー戦略(上記リンクの文面)自体の閣議決定は見送りそれを参考文書とし、“戦略を踏まえ不断の検証と見直しを行いながら推進する”との文言のみを閣議決定することになったようです。

ただ参考文書に格下げになったとはいえ、戦略文書は原文のまま残り、その中で今回横やりが入ったのは“ただ一点”、第一章の原発ゼロの文言です。 こうなると戦略文書の中でもクレームの付かなかった第三章を黙々と実施することがますます重要となってきます。もともと第一章の将来の原発比率などはその結果としておのずと決まる(ないし、まともな議論ができるようになる)性質のものなんですから。

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by C_MANN3 | 2005-09-14 00:00 |  エナジー & カーボン | Comments(0)
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