◆発送配電分離の危険・・・

[2012.3.12記]昨日は3.11から丸一年ということで日本だけでなく世界各地で反原発、脱原発のデモのニュースが流れていました。そんななかで、日本ではこの夏に向けての原発再稼働と発送配電分離や東電の経営権をめぐってバトルが続いていますが…今、味わい深い一冊の本が出ています。

題して「電力改革」~エネルギー政策の大転換~、橘川武郎著、講談社現代新書2145

明治以来の日本の電力事業の経緯を踏まえて“リアルでポジティブな原発のたたみ方”を説いた本なのですが、その中に気になる記述が出てきます。
IPP、自然エネルギー等々、発電の自由化は進めるべきだが、日本では発送電分離は急いで決めるべきではないと・・・
日本の電力の特徴は高い系統運用能力にある。そしてそれを支えているのは発電と系統設備のバランスの取れた投資、そして何より電力会社の“決して停電を起こさせない”という現場力。
今電力会社のあり方がきつく問われてはいるが経営陣の姿勢や経営のまずさと現場を支える人たちの現場力は分けて考えるべきであり、発送配電の分離はその現場力をそいでしまう懸念があると・・・

確かに貯蓄が効かない電力にとって送配電は単なる通路ではない。系統隅々までの電力の過不足をモニターし、一瞬たりとも過不足が無いように発電量や系統の電位を調整することが必要。そのためにはいつでも自由に増減できる一定量の自前の発電は必須。自前の発電力を全く持たずに需給調整するというのは酷な気もします。

言ってみれば今はやりのスマートグリッドで、発電機はなくても電線とコンピュータさえあれば需給はバランスさせられると言っているようなものですよね。
明治以来の抜本的な電力改革につながる発送配電分離は、少なくとも原発事故のエネルギー不足のどさくさに紛れて決めてしまうようなものではないのかもしれませんね。

ところでこの本、てっとりばやく最近のエネルギー危機の傾向と対策を窺えればと読み始めたのですが、第二章でいきなり明治以来の日本電力産業史に入ってしまい、最初はちょっと戸惑いました。

ですが読み進めるうちにやはり今回議論されているような大転換は単に外国がそうだからというのではなく、自国の歴史的な観点も踏まえて判断すべきとの著者の思いも理解できるような感じがし始めました。
また産業史自体も面白く、当初は高い志で日本の近代化をけん引してきた電力業界が、いつしか官僚的な事業者に変質していった経緯といったことも窺えるお勧めの好著です。

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by C_MANN3 | 2014-05-16 00:00 |  エナジー & カーボン | Comments(0)
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