組織と創造性:行動科学 VS 認知科学

個人のレベルでの創造性自体の話を続けてきましたが、このあたりで「組織心理学」トピらしく、“組織と創造性”ないし“組織の創造性”といった話にシフトしていきたいと思います。

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Finkeの「創造的認知」を読むうちにひょっと懐かしくなり久しぶりに古い本を引っ張り出してみました。
名付けて「創造の行動科学」D.C.ペルツ、F.M.アンドリュース著。1966年、ダイヤモンド社刊。副題は“科学技術者の業績と組織”、行動科学全盛期の名著といったところでしょうか。
これは副題が示すとおり、単なる創造性の枠を超えています。“自由性、コミュニケーション、多様性、献身、動機付け、満足度、類似性、創造性、年齢、雰囲気、集団”といったファクターと技術者の業績の関連性を徹底的に調査し、数百項目にわたって相関検定表やパーセンタイルのグラフ付でコメントにまとめたもの。行動科学の本らしく、コメントは憶測、推測を廃しストイックで簡潔です。いくつかを例示しますと・・・

●多様性の影響については、
・研究開発の直接業務だけに専念する人より、時間の数割を管理業務等の副業に使う人が業績が高い。
・専門を一個しか持たない人は複数個持つ人より業績が低いだけでなく、専門を持たない人よりも低い。
●創造性については、
・自由なコミュニケーションがある場では創造性が業績に貢献するが、柔軟性のない場では逆に阻害する。
・プロジェクトに参加した当初は創造性が業績に貢献するが、長期にわたると逆に阻害要因となる。
・高レベルの研究職では強い献身、のめりこみが創造的成果を加速するが、他の職種では逆の傾向がある。

何れも研究部門と開発部門、ドクタークラスと一般技術職といった区分ごとに分析されており答えも一様ではありませんが、40年近くの昔のしかもカルチャーの違う外国のデータであるにもかかわらず、今読み返しても鮮度を失っていません。なるほどといったものだけでなく、意表を突かれる意外な結論といったものも少なからずありますが、意外と思えるものも研究開発部門の現場で周りを見渡していると少しずつそう見えてくるのが不思議です。


余談ですが・・・

前掲のFinke著「創造的認知」は、その名のとおり、創造性を認知科学的に扱ったものです。ジェネブロアモデルはそれを構成する“生成、探索、制約”の各要素についていろいろなモデルを想定し認知実験を繰り返えすことで検証を積み重ねた体系ということで、この本では綿密に仕組まれた実験の過程や結果が満載されています。
対して今回の行動科学では、ひたすら外部から観察できるパラメータ間の相関分析を列記したものであり、どもページも相関検定表とパーセンタイルグラフで埋め尽くされている・・・二つの本を並べて読むとなんとも不思議な感じがしてきます。

この二つ、学としての成果を活用する市井の立場からするとどちらがいいんでしょうか・・・

行動科学は欲しい因子についてずばりの調査結果があれば即、頂きということで手っ取り早い感じもしますが、それで更に興味がわき「それってどうしてなの?」といった疑問が沸いたとしてもそれについてはノーコメントで後は自己責任で推量するしかないといった感じがします。
対して認知科学はモデルの構成自体が思考のヒントになり、かつモデル構成要素の部分部分でも実験的な裏づけがあるものが多く、自分の思考体系をできるだけ実証されたものに置き換えていきたいとと思って知識を吸収しようとする場合はこちらの方が得られる情報が多いといった印象はあります。
by C_MANN3 | 2009-08-20 00:00 | 組織心理学の心象風景 | Comments(1)
Commented by gorogoro at 2006-09-25 01:09 x
こんにちは。ヤフーのIDでは、gorogoro19682000です。ユングトピでも書き込ませていただきました。この記事、面白いですね。非常に興味深いです。でも時間がないので、後ほどじっくり読ませていただきます。まずはご挨拶まで。では。
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