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◆日本の脱原発、欧州のエネルギー事情

[2012.11.7載] 東京電力の火力発電所建設がついに動き始めるとのニュースが流れていますね。入札方式で事業体を募集するとのことです。
このブログでは、ここ数年を何とかしのげば後は順次LNG火力発電が立ち上がってくるなどと書いていますが、この一年余りの間にニュースになったものを拾い集めてみますと・・・

中部電力(2014年に上越で238万kW)、東北電力(2016年に新仙台で200万kW)、中部電力(2017年に西名古屋で220万kW)、北海道(2021年に石狩で50万kW)、そして今回の東電入札(2020年に260万kW)、さらにこれに関電が決心すれば(2020年ごろ和歌山で370万kW)、そして東京ガスなどのIPPの計画と続き、これだけでも原発15基分を超えることになります。

このすべてが原発の置き換えになるわけではなく、喘ぎながら今を支えている老朽火力の更新にも回るのでしょうが相当な規模になることは間違いありません。


▼ところで今日は欧州のエネルギー事情について・・・

欧州の事情について一冊の本が目に留まりました。題して「欧州のエネルギーシフト」、脇坂紀行さん著、岩波新書1370、今年5月に出た本です。

欧州のエネルギー事情がきわめて分かりやすく包括的にまとめられているのですが、この本によるとEUとしてのまとまりを追及しているはずのヨーロッパもエネルギー問題となると国情により様子はさまざまのようです。それを大きくタイプ分けしてみると・・・

  ・ドイツを筆頭に脱原発を宣言するイタリア、スイス、ベルギー等
  ・反対にこれから新たな原発の導入をしようという国は
     ・EU加盟の条件として旧ソ連式の原発廃棄を余儀なくされ、できれば
      新たな原発が欲しい旧ソ連圏諸国。
     ・北海油田の枯渇懸念と老朽化した原発の更新で新たな原発が欲しい
      英国。
     ・国情から水力も風力も期待できず、ロシア依存からの脱却には原発が
      欲しいフィンランド。
  ・そうした国を相手に、原発技術への絶対的な自信から自国はおろか世界の原発
   化を指すフランス。
  ・一方、風力とバイオコージェネで脱原発はおろか脱化石燃料をも目指す
   デンマークやスウェーデン・・・といったところでしょうか。


▼こうしたなかで例えばドイツについては・・・

2002年に一旦脱原発を決めソーラーや風力の導入を進めてはいたのですが、政権が変わり目標を緩めた矢先に起こった福島の事故で、再度方針を転換し新たに2022年までに脱原発と決めました。

そんなドイツに対して日本では“自然エネルギーの買取制度は破たんしかかっている”とか、“脱原発と言っても隣の原発電力を輸入するなら同じ”といったことが言われていますが、そのドイツでは首相の諮問を受けた「倫理委員会」が脱原発に至る際の6ヶ条の条件を策定しており、その中にはこんな条項も・・・
   ・隣国の原発で作られた電力を安易に輸入しない
   ・再生可能エネルギーの加速的拡大に安易に頼らない

そんなルールを守りながらどうやって脱原発を達成するのかというと“徹底した省電力の推進”と“過渡的には高効率ガス発電(大規模集中)とガス・コージェネ(小規模分散)”ということのようです。

ドイツはもともと電力の輸出国であり脱原発をしても輸出余力が減るだけのこと、また再生エネルギーの買取価格もどんどん訂正され、ここ数年でほぼゼロになってしまうようです。

ですがここ当面はガス火力の助けを借りながら徐々に再生可能エネルギーを増やし、2022年には脱原発、そして2050年ごろには脱化石燃料をも狙うとのこと。

ところでそんな方針を策定するほどに大きな影響力を持つ「倫理委員会」については下記のサイトに概要が紹介されていますが、まさに必見ものです。
  http://webronza.asahi.com/synodos/2012072700002.html
    このリンクもつながらなくなっていますので、以下のリンクに張り替えます。
  http://synodos.jp/international/1553

  http://www.nikkeibp.co.jp/article/reb/20111108/289865/

また委員会の報告書自体も60ページの大作ですが、読み応えがありますのでこちらに・・・
  http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/dai3/iidasiryou2.pdf

この本や「倫理委員会」の記事を見ていると、どうやら欧州の脱原発を目指す国々は本気のようです。そして脱原発の向こうに脱化石燃料をも視野に入れています。

もちろん全欧州をつなぐ電力融通網があればこそ成り立つ面はありますが、単に電力エネルギーだけでなく熱エネルギー全般の節減を目指しており、産業革命という革命が欧州で起こったように、この50年で再び起こりそうな気配の“グリーンエネルギー革命”もまた、欧州発となるのかもしれない、そんな感じがしはじめました。・・・ん、考えすぎ?
by C_MANN3 | 2023-08-12 11:07 | Comments(0)
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