【2005.2.16記】 企業の目的、それは利潤追求か否か・・・なんてことを大上段に振りかざし「企業の存在意義:手段と目的の循環」と言ったメッセージを書いたばっかりに、文章も思いも出口のない循環プロセスに入ってしまいましたが・・・
企業理念にかかわる新旧二つの本を紹介することで循環プロセスから抜け出したいと思います。 ●日本型経営の源流 ここに一冊の本があります。とんでもなく古い本ですが・・・ 「日本型経営の源流」、森川英正著、1973年、東洋経済新報社刊。副題は“経営ナショナリズムの企業理念”です。 曰く、企業活動と、利潤追求は同義である。したがって企業の活動目的が利潤追求であるというのは、“同義反復”であり、論理として意味をなさない!ということで明治、大正、昭和と続く企業の群像を経営理念のケーススタディとして分析した本です。 江戸期、幕末と財を成した人たちが家業から出発して、経営ナショナリズム、技術ナショナリズムに燃え産業自立の国益志向へと大きく舵を切っていくプロセス・・・川上から川下へ、あるいはその逆へと一気通貫を目指して進む多角化の道・・・その過程のどの部分を見てもリスキー極まりない茨の道。官営払い下げ、国家保護というと聞こえはいいが、火をつけるだけつけておいて後は押し付けられ、一歩間違うと列強諸国の進入に押しつぶされて私財を失うかもしれない中で奮戦するしかない。 明治に始まったこの風景は敗戦の荒野を挟んで百年にわたって続きます。 そして到達したGDP世界第二位の地位。貿易が自由化されればビッグスリーや巨人IBMの前にひとたまりも無いといわれていたはずの、自動車産業もコンピュータ産業もいざふたを開けてみると強かに健在。 追いつき追い越せでついに世界の頂点に立ち経営ナショナリズムが意味を失ったとき、実はもうひとつの基調低音として流れていた経営家族主義が受け皿になれればまだしも良かったのですが・・・ 公害問題に見られたように閉鎖的な企業内家族主義への不信が高まる中でそれもままならず・・・、この本は昭和40年代のそうした理念喪失の中で書かれた篤き本でした。 財閥というと政商がらみの利権と利益の権化、従う従業員は滅私奉公・・・といったステレオタイプのイメージでは捉えきれない企業人の世界が余すことなく描かれた一冊です。 経営者といわず、従業員といわず・・・この先人たちを茨の道に駆り立てた動因はいったい何なのでしょうか・・・ 三井財閥が鉄鋼に進出する際、MIT帰りの団琢磨が三井総領家を口説いたせりふがすごい。「鉄は苦しい事業だが、あなたの子孫が鉄で苦しむのはいいことだ。国家的に有用で困難な事業をやっていないと人間は馬鹿になる」・・・と。 少なくとも、単なる営利目的にはほど遠い世界であったことは確かです。(2005.2.16)
by C_MANN3
| 2010-10-12 00:00
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Comments(6)
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コンパス
at 2006-04-03 23:37
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三井金属は鉄鋼メーカーじゃないし、三井系でどこが鉄鋼製造をしているのでしょうか?
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c_mann3 at 2006-04-03 23:40
コンパスさん、コメント有難うございました。でも一瞬ドッキリ!募る思いで文章が走りすぎることが間々あるのでもし間違っていたらと・・・
で、「日本型経営の源流」、読み直してみたのですが、28~29ページのあたりに記載がありましたので、改めてもう少し詳しく紹介させていただきます。 団琢磨さんは当時三井鉱山を率いていて、三井財閥が「商業の三井」に傾斜することに異を唱えて重工業を中心とした技術開発と工業的創業を目指していた人。 そして鉄鋼についてですが・・・三井財閥が大正13年、傘下に収めた北海道炭鉱汽船の輪西製鉄所の再開を通じて鉄鋼業経営に乗り出そうとした際、三井総領家の八郎右衛門高棟を口説いたせりふが前掲の一文と言うことです。 この団琢磨さんは「パイプのけむり」の名エッセイで知られる音楽家団伊久磨さんのお父さんなんですよね。 これからもいろいろと是非コメントをください。
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c_mann3 at 2006-04-03 23:55
《追伸》
この輪西製鉄所って一体なんだ?と先ほどWikipediaで調べていてびっくり・・・ この製鉄所、やがて室蘭製鉄所と名を変え、最終的には新日本製鐵室蘭製鐵所になったという由緒あるもののようなのですが・・・これじゃ源流が三井といわれてもピンとはきにくいですよね。
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安来武士屋
at 2007-04-02 16:50
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同じ鉄を作ることを経済的意義以上に考えている集団もありました。
安来鋼で有名な日立金属で、この場合、和式製鉄法の原理を応用して 高性能鋼をつくることを目指し、さまざまな近代化を進めてきたようです。 当時は低廉鋼で橋や鉄道などをどんどん巨大化していこうとする時代にあってこういう方向は、かなり苦難を強いられたようです。しかし、軍事用特殊鋼への用途が開かれることでその歴史的な意義を見出し、さらにそれが発展し、工具、金型、宇宙航空機、原子力などの超環境下での耐久性が求められる高級特殊鋼へとその流れが続いているようです。
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靖国
at 2017-03-12 23:00
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よくよく、吟味すると、日立安来工場の現在の発展の礎になっているのは、海綿鉄という。優秀な素材を大量に生産した、実績が大きい。すなわち、それは、たたら製鉄のルーツにつながり、和鋼製鉄が光を発している。
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海綿鉄の作り方。
at 2017-06-17 20:29
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真砂砂鉄から、ペレット作成から、低温還元法。詳しいノウハウは神秘のベールに覆われている。何万トン単位の製造力。
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