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◆ オートポイエーシス

「自己組織化」とよく似た言葉に「自己創出」ってのがあるようですね。別名“オートポイエーシス”、これがまた面白い概念です。

この理論によると・・・AさんとBさんが会話をしているとき、一見お互いが相手の言葉に反応して会話をしだんだんと合意に達しているように見えたとしても・・・実は二人はお互いに、相手の言うことなんかに反応しているわけじゃない・・・じゃ、何だ?と理論は展開されていくことになります。


自己創出理論の特徴のひとつは、《入力と出力の不在》と言われているらしい。もっとも不在というのは言い過ぎのようで、入力や出力がないわけではないが、自身を形造っていく上で取り立てて影響を受けない、勝手気ままに自己を形成していく上でのきっかけ程度の役割しか担っていないと言うことのようですが。

実は、このオートポイエーシスを基軸に生物細胞の挙動から、人の心の動き、社会システムまでを一網打尽に語りつくそうとした壮大な試みの本《基礎情報学》、東大院情報学環教授、西垣通著、NTT出版を読んでしまいました。


で、なんとなくつかめかかったイメージは、こんなものです。

オートポイエーシスの特徴は、今風の社会の中の個人と個人の会話に特徴的に現れているようです。
すなわちAさんとBさんが会話をしているが、Aさんの刺激(S)に反応(R)としてBさんが答えているわけじゃない。AさんもBさんも周りには関係なく心の中にはあられもないことがうたかたのように生起消滅している。もちろんこの生起消滅のきっかけ程度にはAさんの言葉は作用する。そしてあたかもそれへの返事のごとく言葉を発してはいるが、その内容はSR理論で説明できるほどの因果関係はなく、単にその瞬間に想起したことを口に出しているだけ・・・

一見かみ合って会話が弾んでいるように見えることがあっても、それは勝手気ままに自分の気持ちを吐き出しあっているだけの二人が実は、相手の立場を考えたわけでも、相手の影響を受けたわけでもなく、世間の会話ってのはこうした言い回しで、こうした論理で言うべきなんじゃないかという社会性の通念にしたがって語っているだけ。で、二人の通念に共通項があれば、これが観察者にはしばしば会話が成立し、まるで意気投合しているように見える・・・

じゃ、こんな話のどこがオートポイエーシスなのか・・・実はこうして周りとの入出力に取り立てて依存せず、ひたすら想起消滅する思いを自己循環的に再生産し、これが心の中に“ひとつ上の概念の社会通念(と本人が思うもの)”を形成していく・・・この様を自己創出というようです。

わかったようなわからないような話ではありますが・・・そういわれてみると私なんかも、会話はしていても人の意見は聞いていないなぁ・・・相手の話の枝葉をイントロに勝手気ままに自分の話したい話をしてしまうなぁ・・・いつもそうして自分の考えを整理してるんだよなぁ・・・なんてことを思うと、この理論、まんざらでもない、奥の深いものを感じてしまうのですが・・・

とにかく、この《基礎情報学》は一読に値する、不思議な本でした。(2005.2.20)
by c_mann3 | 2012-02-12 00:00 | Comments(1)
Commented by らゑしん at 2011-05-05 01:25 x
興味がわきました。是非一読してみたいと思います。
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