◆追記コーナー:読書の履歴編◆


◆追記コーナー:読書の履歴編◆

最新追記:4/28

【2015.9.8開始】 最近ブログへの記事アップが途絶えがちなこともあり、まとまった記事には至らずとも、ことある度に都度書き足していけるコーナーがあれば良いのかも・・・とこのコーナーを設けてみました。
題して“読書の履歴”、一冊読むごとに何がしかの思いを書き足していくこととしますが、いずれその中から独立した記事として仕立て直すものもあるかもしれません。
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新たな追記

◆シュメルの世界 H29/4読

別掲の本、「善と悪の経済学」の冒頭でギルガメッシュの叙事詩が語られていたのがきっかけで手にしたシュメール文明の本2冊、なかなか読みごたえのある本でした。

まずは◆シュメル-人類最古の文明。小林登志子著、中公新書1818、2005年の刊。5千年の昔にメソポタミアのチグリス・ユーフラテス下流に姿を現したシュメル人の世界。それは繰り返す洪水がもたらす肥沃な土壌の中で灌漑農業を行う一方で交通の要衝にあって広範囲な世界との交易にも長け、競い合ういくつもの都市を形成して栄えた世界最古の文明であった。都市ごとに独自の神を抱き豊かな神話の世界を持ち、交易取引の記録に端を発して世界最古の文字の一つであるシュメル文字を発明。そしてこれらの都市文明は諸都市を束ねたアッカド国へとつながり集大成されていく。楔形表意文字であったシュメル文字から表音文字をも含んだアッカド文字が生まれ、シュメル神話のモチーフはアッカドでギルガメッシュ叙事詩として編集され、やがて旧約聖書にも引き継がれていく。

世界最古の表意文字であるシュメル文字が形を変え、表意から表音へと機能も変えながら色々な言語に使われていく歴史には興味深いものがありますが、この本では一章をさいてその様子が解説されています。
その中で意外だったのは、現在のアルファベットのもとになったと言われているフェニキア文字はその形からしてシュメルの楔形文字の系統だと思っていたのですが、それはもう一つの表意文字であるエジプトのヒエログリフから派生した表音文字だとのこと。実はシュメル文字から派生した表音文字もあったのだが(ウガリト文字)、フェニキア文字の方が交易を通してギリシャ・ローマに伝わり今のアルファベットに・・・

そしてもう一つの本は◆シュメル神話の世界。岡田明子、小林登志子著、中公新書1977、2008年の刊。こちらは神話の世界をさらに詳しく一冊にまとめた本なのですが・・・
シュメルの神話は洪水を繰り返す沖積平野の自然を色濃く反映している。人は神々の代わりに労働をするものとして堆積する土を捏ねて形作られたとする創世神話、そうして命を得た人たちも神の怒りに触れれば繰り返して襲う洪水に押し流され、その中で一握りの人たちが生き延びるという洪水神話・・・こうしたシュメル語で書かれた数々の神話のモチーフは時を経てアッカド人の手によりギルガメッシュ叙事詩としてアッカド語に翻訳編集され、さらには旧約聖書の土(アダマ)から造られた人(アダム)の話やノアの方舟の話の原型として引き継がれているのだと。

しかしそうして人類最古の文明を生み出したシュメル人自体は無常観が漂う数々の神話の中に、琵琶法師の平家物語をも思わせるシュメル人国家滅亡の物語をも残して紀元前2千年にはメソポタミアの地から姿を消していく・・・なんとも魅惑的なシュメルの世界ですが、その魅力をたった二冊の新書版に要約してくれている著者に感謝です。

◆ブレイクアウト・ネーションズ H29/3読

ルチル・シャルマ著、早川書房、2013年の刊。今年の正月の1/3に放映されたBS1スペシャル「欲望の資本主義2017」は味わい深い番組でした。エマニュエル・トッド を始めそうそうたるメンバーのインタビューで構成されていたのですが、その中でとりわけ印象に残ったのがルチル・シャルマとトーマス・セドラチェクの対談でした。

そんなタイミングで友人に勧められたこともあり手にしたのがこの本なのですが、ルチル・シャルマはモルガン・スタンレー・インベストメントマネージメントの チーフストラテジストで新興国への投資を専門としているとのこと。
よく言われるBRICsの時代だとか次はアフリカがフロンティアだとかいうおしなべた見方や、10年20年先といった長期の見通しでなどで投資はできない。個々の国の今を肌で感じることが肝心と、この15年間1ヶ月のうち1週間はどこかの国に出かけていてその対象国は新興国、フロンティア諸国と全世界にわたっている。この本はそうした投資家の目利きで次にブレイクアウトする国はどこかと分析してくれている本であり、日頃はあまり耳にする機会のないアフリカ、南米、東欧圏、アジア諸国といった世界中の国々の社会・政治・経済の状況が軽妙な語り口で解説されていき、読み始めると目が離せなくなります。

結果として期待が持てるのは2011年のお見立てとして韓国、チェコ、トルコ、中国等、逆に冷ややかな印象をお持ちなのはロシア、ベトナム、サウジ等。そしてその解説として個々の国を見立てる際の著者の目の付け所を繋ぎ合わせていくと、なにやら新興国やフロンティア諸国がブレイクアウトしていくための条件といったものが薄っすらと浮かび上がってくる気がするのですが・・・一国の経済はそうした法則めいたものだけで動くわけではなく、それにトップやエリート層の資質、さらには政変、他国の変動の余波といった個々の事情が重なって思わぬ様相を見せるものでもあり、3年先、5年先に何が起こるかはだれにも分からないとも。とにかく面白いお勧めの一冊です。

◆善と悪の経済学 H29/3読

トーマス・セドラチェク著、東洋経済新報社、2015年の刊。著者は前掲の記事にも書いているようにBS1スペシャル「欲望の資本主義2017」でルチル・シャルマと対談していた方でチェコ総合銀行のマクロ経済チーフストラテジスト。

この本は格調が高い。何とまえがきがチェコ共和国初代大統領によるもので、紐解くと続く序章の後はギルガメシュ叙事詩、旧約聖書の章から始まります。
落ち着いて読むのはこれからなのですが、パラパラと捲っていて、以前から気になっていたことが一つスッキリしました。

それは・・・アダム・スミスが言ったといわれている「神の見えざる手」、それが実はアダム・スミスは"神の"とは言っていないと。えっ!と気になりながらも原本に当たるでもなくもやもやしていたのですが、この本ではこの"見えざる手"がどんな場面でどんな意味合いにおいて使われているかが詳しく解説されています。
個々人が私利私欲をめざして勝手にふるまっても神はうまく全体利益につながるように調整してくれる・・・まるでそのよりどころの免罪符の如く「アダム・スミスも言った神の見えざる手」のフレーズはあちらこちらで使われているのですが、やはりそれはアダム・スミス理論の誤用、悪用ということのようです。

そういえばBS1の番組のルチル・シャルマとの対談では"ケインズ学説の悪用”といったことが話題になっていました。巨匠の学説を捻じ曲げ隠れ蓑にしてまでも暴走する現代経済・・・やはり“善と悪の経済学”はじっくり読む必要がありそうです。

◆物語 チェコの歴史 H29/2読

薩摩秀登著、中公新書1838、2006年の刊。首都プラハの静かなたたずまいと共に、ルターよりも100年も早く宗教改革の嵐を巻き起こした国、どうやらキリル文字の原形を生み出したらしい国と歴史的にも興味をそそることの多い国ですが、この本ではその歴史を10個の物語でくっきりと浮かび上がらせてくれています。

9~10世紀の頃、この地にはモラヴィア国が隆盛を極め、東ローマ帝国に懇願し招請した修道士キュリロスが考案したグラゴル文字(これが後にブルガリアにわたってキリル文字となり、広くスラブ正教圏の国々に)で表わしたスラブの言葉で神に祈るキリスト教国を目指していたとか。だがマジャール人の進入を受け、対抗のために東フランク王国と手を組んだものの力及ばすチェコ、ハンガリー、ポーランドの三国に分裂。そのいずれもがラテン・カトリック圏となってしまい、独自の文字を使いスラブ語による典礼を行うキリスト教国へとの夢はついえることに。

b0050634_22411446.jpgそうして生まれたチェコ王国はカレル4世の時代に最盛期を迎えカレルはチェコ王冠諸邦の王、ドイツ王、神聖ローマ帝国皇帝を兼ね、首都プラハは中央ヨーロッパの要となる。ところでチェコの国名“チェコ王冠諸邦”というのは不思議な名称ですが、その心は国王の上に聖バーツラフの王冠を置き、国王もチェコを構成する諸邦の候と共に王冠を支えるということのよう。
同じくこの時代に設けられた制度が“選帝侯”。こちらは神聖ローマ帝国の皇帝がチェコ王を始めとする7名の国王により選定されるということのようであり、諸侯、諸国の主権を強く残したうえで(余計な戦争を避け大人の話し合いで)さらに大きな単位で纏まろうとするこうした制度は今の連邦共和国、EC等にもつながるヨーロッパの生活の知恵なのかもしれません。

ところでルターを先がけること100年の宗教改革の話は・・・1420年ごろプラハ大学の神学部を拠点にヤン・フスなる人物が贅を極める教会に異を唱えた神学論争がその発端。市民や諸侯にその支持が燃え広がり、フス自身は教会により処刑の憂き目にあうのですが、支持者の動きは収まらず何と15年にわたるフス戦争につながっていく。最終的にはカトリック教会のもとに収まってしまうのですが、この運動とフスの歴史は今もチェコの人々の誇りとして語り継がれることに。

ですがその後のチェコはハプスブルク家の率いるオーストリア帝国、オーストリア・ハンガリー帝国の構成国となり、やがてチェコスロバキアとしてソ連邦の影響下に組み込まれるといった激動の時代を経ながらも、その輝きは失われることなく現在のチェコに至る・・・
この本はそうした壮大なチェコの歴史を読みやすい新書版にまとめてくれた感動の一冊です。多少なりともこうした知識を仕込んだうえで訪れていたならば、以前足早に駆け巡りただただ景観に圧倒されるばかりであった中央ヨーロッパの観光旅行も、さらに味わい深かったのかもしれないと思うとちょっと残念です。
それにしてもヨーロッパ史に出てくる地名や人名はややこしい。“チェコ王冠諸邦”はラテン語式に“ボヘミア王冠諸邦”と称されることが多い。また“カレル”は仏語ではシャルル、独語でカール、チェコ語でカレル。よって神聖ローマ帝国の皇帝としてはカール四世と言われることが一般的ですがチェコ語ではカレル四世に。さらにこの四世は皇帝としてであり、チェコ王としてはカレル一世だとか。ついでにシャルルというのはカレルが少年期にパリの宮殿で育ったため、尊敬する育父シャルル王にあやかって名乗ったものとのこと。

◆その島のひとたちは、ひとの話をきかない H29/2読

森川すいめい著、青土社、2016年の刊。この本は精神科医でホームレス支援などの活動もされている著者が“生きやすさとは何か”を求めて全国五ヶ所の“自殺希少地域”を旅した印象記です。
その地は海辺や山あいの小さな町とか島だったりするのですが、なぜか自殺の少ないその地は何処も事前に期待していた癒しの空間ではなかった。ただ特徴らしきものは浮かび上がってきたと・・・

人間関係は(緊密過ぎると交流範囲が狭くなり排他性が生じやすいためか)意外に密ではない。だが疎にして広く、いわゆる緩やかな紐帯で結ばれている。
目の前で困っていると必ず、即助ける。しかも相手の要請の有無にはかかわらず、自分の気持ちからできることをする。できないことがあっても手は引かず誰かにつないで相談し、かつ解決を見るまで関わり続ける。その際上手くいかなくても何かのせいにして終わらせず、相談や工夫で事に当たることに長けている。

助けはしても見返りは求めていない。助けっぱなし、助けられっぱなしで世間は回っていく。だから助けられることに負い目は無く、“病は市(いち)に出せ”とばかりに自然に弱音を口にする。
老いて痴呆が始まったり、障がいがあったりしても(やもうえず施設を利用したとはしても)人間関係としては隔離せず、そうした人たちのペースに合わせて寄り添い続ける。

この本ではこんな話が含蓄のあるフレーズと共に全編にちりばめられているのですが、今は都会に住む私などが読んでいると、遠い昔の記憶がうっすらとよみがえってくるような、そして環境は違っても今の自分の生き方にも参考になるものが多いような気がし始める、なんとも味わい深い一冊です。

著者は国内の自殺希少地域のみならず、45か国もの世界中を旅をしていて、日本の自殺希少地域の様子が、最近日本でも紹介され始めたフィンランドのオープンダイアローグの世界にも見事に重なっているとも・・・
なお、オープンダイアローグについては別掲記事をご参照ください。

また著者のインタビュー記事がネット上にありましたので、宜しければ下記を。
     http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/04/morikawa-suimei1_n_11862926.html
     http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/05/morikawa-suimei2_n_11867888.html

◆大阪アースダイバー H29/2読

中沢新一著、講談社、2012年の刊。5千年の昔、大阪の地はほぼ全域が河内潟の底にあり、そのほとりには縄文人が住む世界であった。以来数千年、川が押し出す土砂は洲を広げそこをめがけて色々な由来と文化を持つ渡来人たちが層をなして住み着き、大阪の地は都市と文化を形成していく・・・
この本はその5千年にわたる都市形成のプロセスを神話、考古学、人類学、歴史学、民俗学とあらゆるものを駆使して語り上げた壮大な歴史物語です。

都市の形成にはいろいろなタイプがある。京都は中国由来の思想で人工的な南北軸を中心に形成されたが、東京は皇居を権力の中心として円環状に発達してきた都市。対して大阪は河内潟の縁の東西線上に自然発生的に形成されてきたことに特徴がある。それは太陽の運行、生命の生と死を基本とする自然観に基づく軸であり、軸上には太陽や生死にかかわる墳墓や社が配置されていった。
だがやがて5~6世紀の頃になると潟に突き出し南北に延びる上町大地の上に王権に纏わる南北軸が現れる。その両軸の和合を願って作られたのが四天王寺であり、そこにそびえる仏塔は両軸の交点で天に向かって伸びる垂直軸なのだと・・・

この本では漫才や浄瑠璃といった芸能、商人の町、墳墓、はては歓楽街やラブホテルの特異な集中スポットの由来といったことが次々と民俗学風の語り口で解説されていきますが、その一つの難波資本主義の由来も面白い。
古代の社会ではモノは全て贈与の形で取引され、モノと共に人格や相手への思いが重なって取引されることで深まっていく“縁”の世界であった。そこに現れたのが遅れて渡来してきた海人。当初は神社へ供え物を取り仕切っていたがやがてその余剰を市を開いてさばくようになった。このモノは神様への供え物が由来のため、人格や思いとは無縁で無機質な貨幣価値だけを持ったものとして交換されていく。これが商業、さらには資本主義の発端でありそこでは縁は断ち切られている。だが縁に変わるものとして生み出されたのが信用、暖簾であり、取り立てには厳しいが利益を社会に還元する(無縁を超える)超縁の世界なのだと。そしてこの話が現代の疲弊した資本主義にもおよび、超縁を結ぶことを忘れてただの無縁に終始しするのは本来の姿ではないと・・・

ところでこの本、読んでいてどことなくNHKの番組のブラタモリを思わせる雰囲気が漂っているのが気になり、調べているとありました。なんと「ほぼ日刊イトイ新聞」で糸井さん、タモリさん、そして著者の中沢さんがアースダイバーを話題に延々と盛り上がっている様子が掲載されていましたので、そのリンクを下記に。
    https://www.1101.com/nakazawa/2005-09-20.html

 
読書の履歴は更に続きますが、後は区分別の別室で! 

現在の各室の収納状況は以下の通りです。

《心理・認知系の部屋》・・・ ◆「無境界」・・・自己成長のセラピー論、 ◆レキシコンに潜む文法とダイナミズム、 ◆オープンダイアローグとは何か、 ◆ユングの「哲学の木」、 ◆ユングの「赤の書」

《進化・生命系の部屋》・・・ ◆生命 最初の30億年、 ◆エピジェネティクス、 ◆破壊する創造者

《経済・経済史の部屋》・・・ ◆資本主義の終焉と歴史の危機、 ◆問題は英国ではない、EUなのだ、 ◆ウォーラーステイン、 ◆世界システム論講義

《歴史等その他の部屋》・・・ ◆中東から世界が崩れる、 ◆イスラム国の野望、 ◆民族という名の宗教、 ◆シルクロードと唐帝国、 ◆多神教と一神教、 ◆古代都市平城京の世界、 ◆道が語る日本古代史/古代道路の謎、 ◆道路の日本史/完全踏査古代の道、 ◆古代飛鳥を歩く、 ◆シルクロードの古代都市、 ◆ジャポンヤ --イブラヒムの明治日本探訪記--、 ◆イブン・バットゥータの世界大旅行、 ◆甦れ、わがロシアよ、 ◆ロシア人しか知らない本当のロシア、 ◆物語 ウクライナの歴史、 ◆歴史の終わり 上・下、 ◆中世シチリア王国、 ◆NHK さかのぼり日本史 ⑦~⑩
全ての部屋をスクロールで一気に見る

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by C_MANN3 | 2016-12-28 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)
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