◆区分別読書の履歴・・・《心理・認知科学系》

 ◆区分別読書の履歴◆   心理・認知科学系 

区分けの境界はあいまいですが、スクロール上下で各区分も見て頂けるということでご容赦を!


◆「無境界」・・・自己成長のセラピー論 H24/10読

ケン・ウィルバー著、平川出版社、1986。太古の昔、①ヒトは宇宙とも自然とも一体の感覚の(無境界の)中で生きていた。だがやがて、②自然界と自分を(間に境界を設けて)別物と認識するようになった。だがこの時点では心身はまだしも一体であった。それがやがてさらに境界を設けて、③心と体は別物と認識するようになる。そしてさらに、④その心でさえも一つではなく無意識(影)とペルソナの間に境界を設けて今に生きている。
人は境界を増やすごとにその向こうとの交流を失い、ないがしろにした向こう側からの反撃を受け、軋轢を増やすこととなった。軋轢を力づくで乗り越えようとするヒトのエネルギーは文明進歩の源てはあったが、一方において病む原因を増やすことにもつながるものであった。
そしてあくこと無き文明の進歩の一方で広がる病みを解消しようとして、ヒトは次々とセラピーを編み出してきたが、それらは幾重にも重なり複雑に入り組む迷路のごとき状況である。

で、あまたのセラピー群を“どの境界の解消を目指したものか”で一気に整理し、それを辿っていくことで本来の無境界の世界へと回帰できることを示そうとしたのがこの本。
まずはカウンセリングや支持療法が④の“無意識とペルソナの境界”を解消する。続いて精神分析や交流分析が③の“心と体の境界”を解消し、ロゴセラピーや各種の人間性心理学が②の“自然界と自分の境界”を解消。そうしたステップを経て、ついには大乗仏教や道教を始めとする各種宗教が指し示す最後の①の“無境界で統一意識の世界”に到達することができるのだと・・・
心理学も宗教も一括した、なんとも壮大な構図の本なのですが、この本には面白いフレーズが出てきます。そんなふうに境界をなくし対立を消していくと(対立があればこそ生まれる)進歩への衝動はどうなるのかとの疑問が湧いてくるがと自問自答し、結果は衝動は無くなるだろう、だが進歩が幸せを生むという幻想に基づく不満もなくなるに違いないと言うのですが・・・

◆レキシコンに潜む文法とダイナミズム H27/10読

由本陽子著、開拓社刊。レキシコンとはヒトが心の中に持つ「心的辞書」のこと。その中核は母語に関わらず普遍的で生得的なものであり、だからこそ赤ちゃんは活用や文法の詳細を教えられるまでもなく、爆発的に語彙を膨らませながら活用し縦横無尽に言葉を操るようになる。
その動詞はいくつの項(目的語や補語)を必要とするか、名詞や動詞が互いに転用される際の規則は何か、派生語や複合語が生み出される際の制約は何か、そしてそれらは単純に割り切れる文法規則なのか語彙によってダイナミックに変化するものなのか・・・心的辞書にはそうしたことがぎっしり詰まっているとのことですが、この本ではその心的辞書が持つ構造を日本語と英語を対比しながら次々と解説してくれています。

ところでこの心的辞書の構造がほぼN.チョムスキーの「生成文法」そのものなのだと・・・
昔からチョムスキーの「生成文法」については気になっていながら本も読まずに過ごしてきたのですが、この一冊で長年の喉のつかえが下りた感じです。そしてこの本、期せずして放送大学のスクーリング授業のテキストとして遭遇したために、なんと著者の二日間にわたる熱のこもった講義付きで、感動的な出会いとなりました。

◆オープンダイアローグとは何か H27/10読

齋藤環さんがtwitterで頻繁に話題にされているのを見て手にしたのですが・・・齋藤環著+訳、医学書院発行のホットな本です。オープンダイアローグとは薬物治療で事に当たるのが常識の統合失調症を、薬に頼らず家族を含めた関係者の徹底した対話で高い治癒率を達成しているフィンランド発祥の治療体系とのこと。
本の前半では齋藤さんご自身の執筆で、強い思い入れの溢れる文章の紹介があり、その後翻訳された関連文献が三篇続く構成となっています。モノローグをダイアローグに・・・依頼があると24時間以内に患者、家族を交えたダイアローグを開始し、薬は極力使わず危機が解消するまで毎日ミーティングを繰り返す・・・
関連文献では生々しい会話の様子も紹介されていますが、この療法の背景には社会構成主義、オートポイエーシスといった深遠な哲学的基盤があり、その解説も丁寧にしてくれていて感動的な一冊です。

是非お勧めの本ですが、手に入るのが待ちきれないという方には斎藤さんの序文がこちらに・・・  http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=87749

◆ユングの「哲学の木」 H24/2読

この本は錬金術と深くかかわるとかで、何やら神秘的な雰囲気が漂っています。心の奥に漂うイメージを自問自答の瞑想でくみ上げ(このプロセスをアクティブ・イマジネーションと言う)樹木の絵として表現すると、無意識にひそむ表象が浮かび上がってくる。
曼荼羅が心の表象の横断面を表したものに対して、木の絵は表象の縦断面を表していて、自己との遭遇と変容に至る未来への道筋を表しているとのこと。そのためか、この本ではいきなり32枚の絵とそれへのユングの解説で始まり、その上でアクティブ・イマジネーションという工程が実は錬金術師の瞑想のプロセスときわめて類似といった本文につながっていくことに・・・

なお巻末には訳者(工藤昌孝さん)が樹木のイマジネーションの変化を心理臨床に適用した事例が添付されています。カウンセリング中に書かれた「木」の絵と、その絵が進展に伴って変化していく様子がぎっしりと解説されているのですが・・・こうした話は自分自身が一度そうしたカウンセリングを受け、心的変化のプロセスを経験してみないと深い理解には繋がらないのかもしれない・・・などと思ったりもした一冊でした。

◆ユングの「赤の書」 H22年/立ち読み

この本は買って手元にあるわけではありません。なにしろ大きくて重くて、とんでもなく高価。発売当時、とある書店でたぶん発売記念か予約受付だったかで・・・とにかく仰々しく飾られたコーナーで見開きで鎮座していたこの本を、恐れ多くもパラパラと捲って仰天したことを覚えています。

なんでもユングが苦しんでいた時代に書かれた原稿が銀行の金庫にしまわれ門外不出になっていたものがやっと解禁され出版にこぎつけたとのこと。真っ赤な表紙(だから「赤の書」と)で開くと、本文はドイツ語の花文字、そして随所に神秘的な絵が挿入されていて、まるで中世の秘伝書といった趣でした。
日本語訳は巻末に一括して付けられていて、ユング研究には必須の本とのことですが・・・私などには、ちょっと触れてため息をつくだけで十分なのかも。
この本、詳しくはこのホームページで、またその中に数ページが覗き見できる“本文見本pdf”のコーナーがありますので、よろしければ閲覧を。
   http://www.sogensha.co.jp/special/TheRedBook/


      
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by C_MANN3 | 2015-02-20 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)
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