◆100分で「平和論」・・・

【2016.1.3】 荒れ狂うIS、溢れる難民、拡散するテロ・・・騒然とした世界情勢の中で迎えた新年、そんな中で今年のNHK「100分de名著」の新春スペシャルはなんと「平和論」。昨年のスペシャル「日本人論」と同じく、今年も味わい深い番組でした。

今年取り上げられた名著は、斎藤環さんによるフロイトの 「人はなぜ戦争をするのか」、水野和夫さんによるブローデルの 「地中海」、田中優子さんによる井原西鶴の 「日本永代蔵」、そして高橋源一郎さんによるヴォルテールの 「寛容論」。

▼まずは“戦争と平和”について・・・フロイトによると人の心の奥底には生への欲動と死への欲動があり、この死への欲望が外に向かって発動されると暴力や戦争が起こってしまう。それは人の本質に起因するものであるから、これからも完全に抑え込むことは簡単ではないと・・・そもそも現実には個人のレベルでの暴力がその上位の法による暴力で抑え込むしかないように、国家間の戦争も超国家による武力の監視が必要となるが、武力を持たない国際連盟や国際連合では十分な抑止力とはなりえないことは歴史や目の前の現実が示しているところだと。
本来はもう一方の生への欲動に根差す「連帯感」が死への欲動への押さえになればよいのだが、これも1回転ねじれると内輪の過剰な連帯が死をも辞さない他者への攻撃に転じかねない危険をはらんでいる。
では一体何に期待をすればいいのか・・・取りあえずこの場の斎藤さんによる締めでは文化の発達と対話(ダイアローグ)に期待ということに、そしてこの番組の構成としては、その一つの道筋が文化や叡智に支えられたヴォルテールの 「寛容論」ということなのでしょうか。
それにしても齋藤環さんにダイアローグとルビを振った“対話”に期待と話を締められると思わず齋藤さんの近著「オープンダイアローグとは何か」を思い出してしまってにんまり苦笑・・・

▼さて続いてもう一つの話題は“経済と平和”・・・ブローデルの 「地中海」が紹介され、一旦は国の繁栄を導く資本主義もやがて一国の経済が飽和状態を迎えると、資本は更なる利潤を求めてグローバル化を目指し、やがては国内外をとんでもない状態に追い込んでいくのだと。それを避け、安定した経済的平和を持続させるには、成長を求めず、地域に根差した多様な価値観に基づく抑制的な経済活動が望まれると・・・で、そんな世界が本当にあり得るのかといった話から、独自の経済倫理に支えられ250年の安泰を見た江戸文化、井原西鶴の 「日本永代蔵」の世界が一つのモデルだということに・・・

実はこの話の流れを聞いていて思い浮かべてしまったのが・・・フランシス・フクヤマさんの「歴史の終わり」。紛争の動因にフロイトが生と死の欲動に持ち出すのに対してフクヤマさんは優越願望と平等願望を、そして歴史を安定させる究極のモデルとしては同じく日本の江戸時代を持ち出しているんですよね。こんな風にあちらこちらで持ち上げられる江戸時代というのは、私達ももう少し勉強した方がいいのでしょうか。
そしてこの番組を見てぜひとも目を通してみたいと思った「地中海」なのですが・・・これは何と5冊から成る大著、まずは一冊にまとめられた解説本もありそうなので、そのあたりから取り組むのが無難なのかも・・・

     なおこの番組の公式紹介ページがこちらに・・・
     http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/2016special/

⇒⇒新着記事渡り歩き⇒⇒

by C_MANN3 | 2015-12-26 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)
<< ◆歴史の終わり・・・  ◆「ユーロ」、危機の中の統一通... >>