◆原発事故から丸五年の節目を迎えて

【2016.3.11】 今日で原発事故から丸五年が経過しました。日本のエネルギー事情はこの五年間で年を追うごとに大きく変化してきましたが、それは原発がほぼ動かない中でも社会は回っていけるということを実証し続けた、日本の誇るべき適応力の姿でもあります。
必要とする発電設備の容量は年間のピークを迎える7~8月の最大電力によって決まりますが、下の図表に示すようにその値を7月の最大電力の年次推移で見ると、震災前のH22年を基準にして既に15%(東京電力に至っては20%強)も低減されていることが解ります。

b0050634_21453745.jpg最大電力の低減は日内のピークを直接下げる手段と、ベースを下げる間接的な手段によって達成されますが、自家消費分のソーラー、ピークカット自家発電、ガスヒーポン空調等の普及が日内のピークを下げることに貢献しているようであり、昼下がりのピークは以前に比べると格段になめらかになっています。また大口需要を中心とした新電力への乗り換えの加速もベースを下げる形で旧電力会社の必要最大電力を下げることに寄与してるはずです。
そうしたことの結果として震災前を基準にすると比率で15%、絶対値としては10電力合計で2600万kWの最大電力減となるに至っているのですが、これは既に原発26基(点検停止の稼働率を考慮すると30基)分に相当する発電設備が削減可能な(というか余力になっている)ところまで来ていることを示すものです。

b0050634_1441750.jpgなおFITで全量買い取りとなる大規模ソーラーがついに2000万kWを越えましたが、これは電力需要の削減には寄与せずFITを介して電力会社の供給力となり、日中の最大電力への対応力を増大させています。

このソーラーの2000万kWという値は前述の夏の最大電力の13%に相当するものです。上の図はとある電力会社の7月の電力の日内負荷パターンにその13%相当のソーラー発電の効果を組み合わせた概念図ですが、青線の見かけ上の日内電力負荷に対して、ソーラー分を減じた赤鎖線のラインが実際に電力会社が火力、水力等で確保しなければならない電力であることを示したものです。結果として、日内の最大値はかつてのように青マルの午後の2~4時ではなく、赤マルの夕刻の19~20時に一段低い値となって移動しており、この青マルと赤マルの落差分が電力会社が確保すべき最大設備を削減できるソーラー効果となりますが、これを全電力会社で合計すると800~1000万kW、すなわち原発8~10基分程度になっていることが窺えます。

いずれにせよ大手(旧)電力の実質的な日負荷パターンは絶対値もプロポーションも様変わりし、もはや原発が無いとピークか乗り切れないといった状況ではなくなりました。また火力代替では燃料コスト増で経営が成り立たないといった話も降って湧いた燃料価格の暴落で大きく軽減され、各電力会社がそろって黒字になる有様です。

にもかかわらずここにきて、安全審査の終わった原発が川内、高浜と動き始めています。このまま20基を超える審査待ちの原発が次々と動き始めれば日本の原発依存はもとの黙阿弥ではないか・・・そんな暗澹たる気分になりかけていたところにこのタイミングで出てきた高浜原発の稼働停止の仮処分決定で、なんと一旦動き始めていたものを含めて2基が停止に。こんなこともあり得るんだ、諦めるのはまだ早い・・・そんなことを思いつつ迎えた5年目の節目となりました。

確かに安全審査には20基を超える原発がその合格を待っている。しかし一方でそれを上回る稼働差し止めの訴訟も判決を待っていて、たとえ一時だとしても都度ブレーキはかかる。審査が進むにつれ、その安全対策費も巨額な物として立ちはだかっている・・・やはりこの数年でバタバタと10基を大きく上回って再稼働し始めるといったことには多分ならない。
そしてそのタイムラグの1年1年で日本のエネルギー事情はさらに変わる。4月からはついに小口電力の自由化が始まり、その先には2020年の発送電分離が迫っている。この5年間で地道に仕込まれてきたLNGや石炭の大規模高効率火力発電所が発電を開始し、シェールガスを始めとする低価格の燃料調達も動き始め、その多くが新電力の戦力となっていくことで、旧電力への依存は大きく減じ始める・・・一部の原発再稼働ありきの電力会社を除けば、もはや原発はコストカットの切り札というよりは足手まといになりつつあるのかもしれない。

ともあれ急速に変化するエネルギー事情を背景に原発再稼働の圧力と阻止のせめぎ合いの中で、いずれは脱原発に向かうのだとしても、その途中の過渡期最大稼働数が10基を大きくは超えないことを願うばかりです。そしてそれが、後始末もままならない未曽有の大惨事を引き起こし、幾多の先進国を脱原発に舵を切らせてしまった日本の自省を込めた節度、矜持というものです。 (6/1 ソーラーに関して一部訂正)

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by C_MANN3 | 2014-09-04 00:00 |  エナジー & カーボン | Comments(0)
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