◆区分別読書の履歴・・・《グローバル経済・経済史系》

◆区分別読書の履歴◆  グローバル経済・経済史系 

区分けの境界はあいまいですが、スクロール上下で各区分も見て頂けるということでご容赦を!

◆資本主義の終焉と歴史の危機 H29/1読

水野和夫著、集英社新書0732、2014年の刊。ただ事ならぬタイトルの本ですが、日々のニュースに現れる事変や相場に一喜一憂していては見えない歴史の本質を400年スパンの金利の変化でひも解いてくれていて、しかも不気味な説得力がみなぎっている本です。

この本によると・・・資本主義は(国や地域、産業分野といった)中心と周辺から構成され、中心が利潤率を高めて資本の自己増殖を推進するシステムであり、それが機能し続けるためには常に新たな周辺の確保が必要。
大航海時代にはじまり空間としての周辺を広げてはきたが、途上国が成長し新興国になれば更なる周辺が必要。だが21世紀を迎えた今、もはや地球上に新たな実空間としての周辺は見当たらない。
資本主義の始まりはフィレンツェで利子が容認されるようになった12~3世紀と見ることができるが、以来利子率の長期低迷が続くとその都度新たな周辺が切り開かれてきた。

投資先である周辺を失えば金利はおのずと下がる。そうした歴史の中でもっとも最近の1990年代の利子率低下時代を突破するために生み出された新たな空間がグローバルでバーチャルなな電子・金融空間であったが、それは必然的にバブル生成と崩壊を繰り返す性質のものであった。
そして崩壊の度にバブルをあおった側の巨大金融機関は公的資金で救済される一方で、一国の中では中間層がローン破綻やリストラにあい貧困層に転落、国家のレベルでは債務破綻国が生みだされて格差を広げていく。気が付けば遠くの地に求めるはずであった周辺が、中心であるはずの国や地域の内部に形成されつつあり、それがたとえば日本では非正規社員層の出現であり、EUではギリシャ問題である。

資本が利潤を生む空間を失えば資本主義は行き詰る。そしてそれが格差の拡大や中間層の崩壊を伴うものであれば民主主義に基づく国民国家の基盤も失う。資本主義の終焉とは近代の終わりであり、西欧史の終わりでもある。
金利の長期低下は資本主義終焉のバロメータであるが、そうした中で日本が世界に先駆けて到達したせっかくのゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ。このアドバンテージを利用して日本は“定常状態、脱成長という成長”を模索して歴史の危機に立ち向かうべきなのだが、それにう抗い成長路線に先祖がえりしようとすることは沈没を早めるだけなのだと・・・
ではこの危機を乗り越えソフトランディングする新たな処方箋とは何か、実は著者ご自身も明確な答えは持ち合わせていないとのことなのですが、この本の構図を念頭に置いておくといま世界で巻き起こっている現象が理解しやすくなることは確かです。


◆問題は英国ではない、EUなのだ H28/12読

エマニュエル・トッド著、文春新書1093、2016年の刊。この本は英国がEU離脱を決定し、米国ではトランプ旋風が巻き起こる中で出版されたエマニュエル・トッドの新著。

EU離脱については既にそれを予見していた著者にとって当然の帰結であり、強引に推し進められるグローバリゼーションに疲弊する世界の中で巻き起こったネイションへの回帰なのだと。
今回の英国のEU離脱、そして米国のトランプ旋風・・・それは世界中をグローバリゼーションの渦に巻きこみ込んだ火元の国でさえもが、人・物・金の見境のない流動による弊害が耐え難い状況に至ったことを示している。
そうしたこともあり今回EU離脱に至った要因については移民の急増や経済格差が言われているが、実はもっと重要な動機は英国議会のEUから主権を回復することにあったことが投票の出口調査からもうかがえ、それは英国が世界に先駆けて"近代”の扉を開いた“名誉革命”へ回帰とでも呼ぶべきものであると・・・

EU離脱を決めた英国はいま戸惑っているようにも見え、次は連合王国の分裂かともいわれているが、そんなことにはならず、時間はかかるかもしれないが広大な英語圏諸国との絆を深める中で英国は再び確固たる地位を再構築するに違いない。

では一方のEUはどうなるか・・・超国家を目指して突き進んできたEUは益々構成国の国家主権の垣根を低くしEUとしての官僚組織を肥大化させる傾向にあるが、そうした中で経済政策、移民政策等で益々理想主義を貫こうとするドイツに対して、今までは仏・英が歯止めの役割を果たす微妙なパワーバランスの上に成り立っていた。
だが今後は英国の援護射撃を失ったフランスがドイツの歯止めとなることは難しく、おそらくは益々ドイツ色の強いものとなる。そこでドイツが理性的にふるまわなければあちらこちらで超保守が台頭し、構成国のネイション回帰が始まり分裂する可能性もある・・・というのがトッドさんのお見立てのようです。

ところで著者のE.トッドさんは歴史人口学者で家族人類学者。この本の後半ではご自身の血筋やキャリアの中で一連の著作を世に問うに至った思索変遷の経緯が回顧され、併せて人口学や家族の形態比較の視点から見た歴史の様相が解説されていきます。

外婚制共同体家族を基盤とする国家とかつての共産圏は分布が重なる。ベトナムは共産主義化したがとなりのタイは母方同居を伴う核家族をベースにした社会だったために共産主義には染まらなかった。その共産圏が崩壊した際も核家族型のポーランドや直径家族型のチェコはスムーズに共産主義を脱したが、中国やロシアは今後も尾を引きずると。また直系家族の社会は国家機能を内包しているがゆえにとりたてて国家を必要としないとか、核家族の社会は個人主義を発達させるが実は個人主義ではみ出したものを補完するためにかえって確固たる国家を必要とする、はたまた内婚制共同体家族のアラブではもともと国家形成が困難なのだ等々・・・

そしてこうした見方の延長線として2030年代の世界を展望する章へと続くのですが、読み進めるうちにこれからもE.トッドさんの予見が現実のものとなる場面は種々出てきそうな気がし始める貴重な一冊でした。

◆ウォーラーステイン H28/10読

川北稔著、講談社選書メチエ222、2001年の刊。経済史の本を読んでいると必ず出てくるウォーラーステイン著の「近代世界システム」。一度は読まなければとは思ったものの分厚い全4巻の大著でしかもさらに第5巻が予定されているとのことで、それを読むのは大変と手短な解説本を探していて手にしたのがこの本。

著者の川北さんは学生時代にウォーラーステインの著作に接して感動し、そのままウォーラーステインのもとへ留学し「近代世界システム」全巻を訳された方。
まずはウォーラーステインの「近代世界システム」の要点、論点を箇条書きの6項目としてたった2ページに要約してくれていて思わず納得。ですがウォーラーステインの神髄はむしろその定番の6項目に至る思索のプロセスにあると。

例えば世界システム論の特徴の一つには世界を保守と革新、先進国と後進国といった二項対立でとらえることに異を唱え、対立しているかに見える二項は実はセットで互いに役割補完のシステムを生成してしまっているというのがあるのですが・・・こうした観点は米国生まれのユダヤ人であるウォーラーステインが研究活動に入って以降のアフリカの経済開発との関わり、1968年の世界規模で巻き起こった反体制学生運動への大学側の立場での関わり、そしてその後のブローデルの「地中海」との遭遇と続く経緯の中で少しずつ確信を深めて「世界システム論」として集大成されたものなのだといったことが解説されていて、ウォーラーステインの著作を理解し納得するためには大いに参考になりそうな一冊となっています。

◆世界システム論講義 H28/10読

川北稔著、ちくま学芸文庫、2016年の刊。上掲の「ウォーラーステイン」に続いて同じく川北さんの著作ということで手にしたのがこの本。
こちらはタイトルがずばり「世界システム論」とあるように、文中にウォーラーステインの名は出てきませんが、まぎれもなく“(近代)世界システム論”そのものの全容を15章にまとめてくれています。この本はもともと2001年に放送大学の15回分の講義のテキストとして執筆されたものとのことで、凄く読みやすい構成となっている有難い一冊です。


      
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by C_MANN3 | 2015-02-17 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)
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