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◆読書の履歴《グローバル経済・経済史系》1/2

◆区分別読書の履歴◆ グローバル経済・経済史系 1/2

区分けの境界はあいまいですが、スクロール上下で各区分も見て頂けるということでご容赦を!

◆日本人の勝算 H31/4読

日本経済の再生を篤く語ってやまないデービッド・アトキンソンの新著です。題して「日本人の勝算」。東洋経済新報社、2019年の刊。
論旨はこのコーナーにも別掲している本「新・所得倍増論」と変わりませんが、新著ではさらにすっきりした構成で話が展開し、何よりもエビデンスが豊富。118人の海外エコノミストの論文のエキスを抽出し、日本の実情を配慮した上で要所要所に重ねあわせてくれています。

日本の長期低迷の原因は人口の減少、とりわけ生産年齢人口(それはとりもなおさず主たる消費者人口でもある)の減少と、“良いものを安く作ってたくさん売る”企業姿勢への固執にある。旧来の企業の経営方針や政府の金融政策では効果は無く、そんなことで時間を費やしていると状況は今後もますます悪くなり、デフレスパイラルを経てGDPや生産性はさらに下がる一方。処方箋としては限られた人口で一人当たり生産性を上げるしかなく、そのための施策としては最低賃金の段階的なつり上げと、より実効性のある生産性の向上策が必要だと。

最低賃金の調整は格差の是正、女性活躍、技術革新の全てに作用するとして、英国の成功や韓国の失敗を分析し、所得の中央値の50%のラインを目指して適切な速度で上げていくことが適切だと解説してくれています。
また生産性を実効性のあるものにするためには技術革新の普及、組織の改革、そして何より就業者の継続的な再教育が必要だとし、英国の継続的な教育を強制する税制措置の紹介等が成されています。
そうしたことを重ねて目指す生産性向上の年率も算出してくれていて、現在のGDPを維持するだけでも生産性は年率1.29%、GDPを年率1%で向上させるなら生産性は年率2.31%の向上が必要だが、日本にはそれが可能なポテンシャルがあるはず。何しろ日本の現状は労働者の人的評価が世界第4位なのに、一人当たり生産性が28位なのだからと。

読んでいると全ての提言が国際比較やデータ分析に裏打ちされていて感動すら覚えるのですが、一方でこうして結果検証も含めて科学的であるべき政策が、まずは忖度か何かで決まりそれをデータで後付する、そしてつじつまが合わなければ基礎データの隠ぺいや改竄も辞さないといったニュースが続いている日本の政策立案当局の体質を思うと暗澹たる気持ちになってしまいます。いっそ、今後の経済政策はアトキンソンさんのような海外勢にアウトソーシングするというのは如何でしょうか?

◆「接続性」の地政学 上 H30/3読

題して「「接続性」の地政学 上」。パラグ・カンナ著、原書房、2017年の刊。
地球上はくまなく国境線で分断されているはずなのですが、実はその国境線の総延長をはるかに超える鉄道網、運河、海路、空路で互いに接続されている。著者は世界中を旅し、各地の国境とそこを突き抜けてつながる接続性のインフラの様子を描くことで、新しい世界観を提供してくれています。

私たちは今なお、世国境線で区切られて一定の面積を持った国の集合体として世界を認識しているが、例えばシンガポールのように四方八方に接続性の網を広げた国を国境や国土面積で認識してももはやほとんど意味がない。世界中に点在する都市間の距離もkmで比べても意味はなく、時間距離で再描写するとまた違ったものとなる。この本ではこうした新たな切り口で世界の今を浮かび上がらせてくれているのですが、その一つがメガシティ、そしてもう一つが一帯一路。

メガシティ; グローバル化の時代にあっては接続性の威力が国境による分断力よりも勝っており、その傾向はますます強くなっているが、その中で浮かび上がってくるのが接続性の結節点としての利便性を高めることで、益々存在感を増すメガシティであり、今や世界中の人、モノ、金、情報は益々接続性を高める限られたスーパーメガシティを介して流れている。
ただ、資本の効率を求めてインフラの強化が行われるため、こうしたメガシティでは生活空間としてのインフラが古いままに放置されがちといった問題もはらんでいる。本来それを担うはずの国家が、ことメガシティに対しては大幅な権限移譲をして後ろに回る傾向があることも放置される要因である。

そして中国の一帯一路; こちらは中央ユーラシアの旧シルクロードはいうに及ばずアフリカ、南米にまで隈なく触手を伸ばす中国のインフラ投資の様子が詳しく描写されています。これもまた接続性強化の一つの流れですが、こちらは世界中から資源をかき集める強引なサプライチェーンの形成といった様相を呈しており、ヒト、モノ、金が双方向に流れて、新たな結節点でメガシティが生まれるようになるのか、はたまた過剰な債務に苦しむ受け入れ各国が一斉に反乱を起こすことになるのか・・・その行く末が気になるところです。

ともあれ、トランプが国境に壁を築き、英国はEUから離脱するといった、一見、接続性を遮断する動きも出始めているタイミングで出されたこの本は、色々な事を考えさせてくれます。

◆デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論 H30/6読

著者のデービッド・アトキンソンは元ゴールドマン・サックスの敏腕アナリストで、現在は国宝や文化財の修理をする小西美術工藝社の社長。
よくテレビの討論会などに登場し、一味違った切り口のコメントをされており、その論調に惹かれて手にした本なのですが、題して「デービッド・アトキンソン新・所得倍増論」。東洋経済新報社、2014年の刊。

その切り口のベースは人口動態論。経済成長には人口ボーナスや人口オーナスが強く作用するが、それを乗り越えて経済成長を続けるには一人あたりの生産性の向上が必要なのだと。世界第三位のGDPや世界に冠たるとされてきた日本の研究開発力等を表すあらゆる指標も、人口一人あたりで見るとまた新たな風景が見えてくる、
著者は日本の戦後を三期に分けて分析します。人口は増えたが未だ生産労働人口の急増には至っていなかったにもかかわらず急成長した第一期。その人口がやがて生産労働人口の急増となってさらに成長が加速した第二期。そしてその後の長期低迷の時代に入って今に至る第三期。

この長期低迷から抜け出すために官民あげていろんな政策が語られ実施されてはみるが、実はどれも的を外したものであり効果は出ないまま。実はその要因は第二期の成長過程でしみついた思い込みから脱却できていないことにあるのだと。
戦後の第一期は確かに一人あたりの生産性の向上が経済成長をけん引したが、第二期は多分に人口ボーナスにより成長したもの。この過程で技術部門はどんな製品を作っても売れたためにそれが自身の技術開発力だったのだと思い込み、どんな企業戦略をとっても企業は成長したため経営者は自身の日本的経営スタイルがジャパン・アズ・ナンバーワンにつながったのだと記憶した。そして第三期に入り人口動態の様相が根本的に変化しているのに、昔取った杵柄の技術開発信奉、貿易頼みの日本的経営の呪縛から逃れられていない。

生産性向上についても誤解がある。リストラやアウトソーシングで人件費を削ることが生産性の向上と思っている節があるが、そうして得られた原資を値下げに使って競争力を維持するならば、日本人の一人当たりの付加価値生産性は下がり、デフレは深まるばかりなのだと。

▼ところでこの論調、どこかで見たと思って本棚を漁っていると出てきました。
題して「デフレの正体」。藻谷浩介著、角川oneテーマ21、2010年の刊。こちらも長期低迷の原因分析や脱却の処方箋は驚くほどよく似ているのですが、さらにこの本はいろんな指標を駆使し国際比較だけではなく国内の地域比較に充てられていることが特徴。その結果は言われてみるとなるほどといった話が満載です。例えば少子高齢化が景気低迷の原因で、その傾向が地方に顕著と言って片づけられるが、実は少子と高齢化を分けて考えると高齢化が一番進んでいるのは地方ではなく、その昔全国から団塊の世代をかき集めた東京や大阪であり、逆に人口動態のサイクルが健全なのは地方都市の沖縄だとのこと。

こうした分析とそれに基ずく処方箋には説得力を感じますが、デービッド・アトキンソンさんも藻谷さんもが口をそろえて、こうしていくら語っても、旧態依然の経済学者が取り巻く政府や、高度成長期へのノスタルジアから抜け出せない経済界には届かないとのこと・・・残念な話です。

◆巨龍の苦悩 H29/6読◇

 津上俊哉さん。“AIIB”、“一帯一路”と中国が描く巨大構想の国際会議やサミツトが続く中、5/15のBSフジプライムニュースではその中国をどう見るかで居並ぶ論客の議論が白熱していましたが、とりわけこの方のコメントに惹かれるものがあり手にしたのがこの本。

題して◆巨龍の苦悩。津上俊哉著、角川新書で2015年の刊。中国の威圧的な言動のニュースに接すると思わず感情的な理解に走りがちですが、経産省出身で中国との関わりも深い著者の中国を見る目には、変な感情が混じっておらず、しかも見方のフレームがすっきりしているので、大変理解の助けになります。曰く・・・
中国はもうGHPで米国を抜いて世界一になることはない。
逆に(一部の人たちが冷ややかに予想しているように)クラッシュすることも無い。
ただバルブの後始末を迅速に行わなければ数年先はかなりハードランニングに近い状況となる。

そして中国の動きを見る際は以下のフレームを踏まえておくべきなのだと。
中国共産党は右派・改革派と左派・保守派のせめぎ合いとバランスの上に立っている。またその中国共産党には三つの運動法則がある。
 (A)ピンチが来ないと舵を右に切れない。
 (B)右旋回するときはまわりへの補償が必要となる。 
 (C)そしてピンチが去ると左への復元力が働く。
そんな中国の行く末は経済と権力、二つの軸で区切られた四つの象限で考えると判りやすのだと・・・
 ①強くて穏健な中国。②強くて強硬な中国。③弱くて強硬な中国。
 ④弱くて穏健な中国
ここで中国の行く末は④といったことにはなりそうになく、②や③ははた迷惑。だとすると①になることを願うが、そのためには加熱しすぎてバブルめいた経済をいかにして中速の安定成長路線に移行させるかにかかっている。

習近平は中国共産党運動法則の“(A)ピンチ”への共通認識の中で期待の切り札として登場し、その権力基盤を固めつつ種々の施策を打ち出してはいる。だか推進に際しては常に“(B)の周りへの補償”の気遣いが必要。それが時としてはねっ返り左派の言動への容認やリップサービスとして現れ、そのことが周りの国にから見て強硬な印象を与えたりもする。だが改革に本気で取り組んでいることは確か、その邪魔をしないためにも外野席は変に中国のナショナリズムを刺激したりはしないほうが良い・・・等々とあります。

なおこの著者には他にも一連の著作があり、併せて読むとここ数年の中国の流れが更によくつかめます。
    ◆中国停滞の核心   文春新書957、2014年の刊
    ◆中国台頭の終焉   日経プレミア、2013年の刊
ともあれこれからは中国のニュースに接する際は三つの運動法則を思い起こして感情的にはならず、①の強くて穏健な国になって頂き共に栄えることができるよう祈るしかないようです。

◆なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか H28/7読◇

ロバート・C・アレン著、NTT出版、2016年の刊。この本の原題は“グローバル・エコノミック・ヒストリー”、それは歴史の事象を西欧中心史観や一国史観から脱却した視点で見直すことで新たな歴史観を得ることにあると。この本ではその中の争点の一つ、イギリスの産業革命とそれに続いた一連の国々の経済成長の様子が、成功の一般モデルの模索と共に分析されていて味わい深い一冊となっています。

イギリスの産業革命、それは到達した結果がドラスティックなものであったため、後に産業革命とよばれるようになったものではあるが、近年の新たな視点で資料の掘り起こし当時の社会状況や経済成長率の推定を重ねていくと、その実態はもっと緩やかで長期にわたる変化であった。長いプレ工業化社会を経て、技術的にも大発明というよりは職人的な技術改良を積み上げて段階的に工業化が進展したものであり、経済成長率も2%程度の穏やかなもの。

だがその到達点が他国に対して圧倒的に優位な地位であったために、他の周辺国は一斉にその後を追い始める。まずはドイツとアメリカが成功し、続いて帝政ロシアと明治期の日本が一定の成功を収めるに至る。だがその道筋は先行するイギリスの答えを見た上でのキャッチアップ型の産業化であり、機械や技術を導入し制度をまねても条件が整わない国では成功には繋がらなかった。
そこでこの成功、不成功の分析から導き出されたのが以下のキャッチアップの標準モデル。
  ① 内国関税の廃止、インフラ建設、国内市場の統一
  ② 幼稚産業の保護と対外関税の創設
  ③ 通貨の安定と産業資金供給の銀行設立
  ④ 工業労働者育成のための普通教育の普及
そして戦後にこのモデルをさらに徹底した経済成長のモデルが誕生した。それは“ビッグプッシュ型”の近代産業化であり、旧ソ連と日本がこの典型として年率6%を超える成長を五年、十年と続け、世界の先進工業国に躍り出ることとなった。

だがそれにも限界はあった。キャッチアップ型では、キャッチアップを成し遂げもはや目の前に追従するモデルが無くなってしまうと、後は自力で独自に成長のスタイルを模索することになるが、キャッチアップ後は世界の技術フロンティアの拡大スピードに合わせた成長しかできない。そしてそれはせいぜい年率1~2%なのだと・・・
ビッグプッシュ型の特徴は、イギリスが民間活力による自然発生的な模索過程であったのに対して徹底して官主導であること。官が指導モデルを見失い民間の活力に身をゆだねはじめると、その成長率はかつてのイギリスの産業革命時代のそれに回帰してしまうということなのかもしれませんね。

ですがそれよりも気掛かりなのはこれからキャッチアップしようとする国々。先進国がグローバルスタンダードを押し付けてくる現代にあっては四つの条件の、特に②などは確保することが難しそうな気がします。

◆ポヒュリズムとは何か H29/12読◇

トランプ政権の誕生や英国のEU離脱の背景にはポピュリズムの台頭があるなどといわれている中で、時を得た本が出ています。題して「ポピュリズムとは何か」。水島治郎著、中公新書2410、2016年の刊。

この名は19世紀のアメリカで一時期勢力を持った政党、人民党の別称が“ポピュリスト党”であったことに由来するとのこと。当時の米国では一過性の勢力として終わったのですが、その後炎は南米に波及。そこてはアルゼンチンで新たな大統領を生む等の盛り上がりを見せ、やがてヨーロッパ、そして再度米国にも燃え広がり今に至っているのだと。
発生する土壌としては資本主義の発展等により格差が拡大し、にもかかわらず既成の政党や官僚機構からはかまってもらえない“物言わぬ大衆”が急増する中で、そうした人たちに向かって組織に頼らず直接語りかけるカリスマ的なリーダーが火をつけることで燃え広がることが多い。

ポピュリズム勢力は、全圏一区の直接選挙や国民投票に強く、時として思わぬ人が大統領や知事として選ばれたり、国民投票では思わず息をのむかの結果を生んだりする。
だが過激な公約を掲げて勝利はしても、その歓喜の後が問題。大統領や知事の場合はその社会が三権分立等、成熟した政治社会の場合は身動きが取れない場合が多く、逆に未成熟な社会にあっては独裁権力につながる危険性をはらんでいる。国民投票の結果にしても結果の実行がままならないことは英国のEU離脱が示すとおりです。

とはいえ、一見過激に見えるポピュリズム勢力の主張には、大きな時代変化の中で既存の政党や官僚、社会組織が取り組もうとしない社会構造の根本に触れる課題も少なくないし、だからこそ大衆は動くのだと。
ポピュリスト勢力に勝たせてしまって(取り返しのつかない)オーバースイングをするか、その一歩手前で既成勢力がその主張を横取りし(程よいレベルでの)自身の身を切る改革をするか・・・その選択の事例は前述の19世紀の米国の場合にも見られ、大きなうねりのなかで民主党をはじめとする既成勢力がポピュリスト党の主張を大きく取り込みはじめたことで、社会の変化や制度の変革が始まり、それにつれてポピュリスト党は勢力を失っていったとのこと。
この本の副題、“(ポピュリズムは)民主主義の敵か、改革の希望か”は正に現代社会に向けられた大きな問いかけなのかもしれません。そしてそれを考えるきっかけをこの本は与えてくれているようです。

◆ブレイクアウト・ネーションズ H29/3読◇

ルチル・シャルマ著、早川書房、2013年の刊。今年の正月の1/3に放映されたBS1スペシャル「欲望の資本主義2017」は味わい深い番組でした。エマニュエル・トッド を始めそうそうたるメンバーのインタビューで構成されていたのですが、その中でとりわけ印象に残ったのがルチル・シャルマとトーマス・セドラチェクの対談でした。

そんなタイミングで友人に勧められたこともあり手にしたのがこの本なのですが、ルチル・シャルマはモルガン・スタンレー・インベストメントマネージメントの チーフストラテジストで新興国への投資を専門としているとのこと。
よく言われるBRICsの時代だとか次はアフリカがフロンティアだとかいうおしなべた見方や、10年20年先といった長期の見通しでなどで投資はできない。個々の国の今を肌で感じることが肝心と、この15年間1ヶ月のうち1週間はどこかの国に出かけていてその対象国は新興国、フロンティア諸国と全世界にわたっている。この本はそうした投資家の目利きで次にブレイクアウトする国はどこかと分析してくれている本であり、日頃はあまり耳にする機会のないアフリカ、南米、東欧圏、アジア諸国といった世界中の国々の社会・政治・経済の状況が軽妙な語り口で解説されていき、読み始めると目が離せなくなります。

結果として期待が持てるのは2011年のお見立てとして韓国、チェコ、トルコ、中国等、逆に冷ややかな印象をお持ちなのはロシア、ベトナム、サウジ等。そしてその解説として個々の国を見立てる際の著者の目の付け所を繋ぎ合わせていくと、なにやら新興国やフロンティア諸国がブレイクアウトしていくための条件といったものが薄っすらと浮かび上がってくる気がするのですが・・・一国の経済はそうした法則めいたものだけで動くわけではなく、それにトップやエリート層の資質、さらには政変、他国の変動の余波といった個々の事情が重なって思わぬ様相を見せるものでもあり、3年先、5年先に何が起こるかはだれにも分からないとも。とにかく面白いお勧めの一冊です。

◆善と悪の経済学 H29/3読

トーマス・セドラチェク著、東洋経済新報社、2015年の刊。著者は前掲の記事にも書いているようにBS1スペシャル「欲望の資本主義2017」でルチル・シャルマと対談していた方でチェコ総合銀行のマクロ経済チーフストラテジスト。

この本は格調が高い。何とまえがきがチェコ共和国初代大統領によるもので、紐解くと続く序章の後はギルガメシュ叙事詩、旧約聖書の章から始まります。
落ち着いて読むのはこれからなのですが、パラパラと捲っていて、以前から気になっていたことが一つスッキリしました。

それは・・・アダム・スミスが言ったといわれている「神の見えざる手」、それが実はアダム・スミスは"神の"とは言っていないと。えっ!と気になりながらも原本に当たるでもなくもやもやしていたのですが、この本ではこの"見えざる手"がどんな場面でどんな意味合いにおいて使われているかが詳しく解説されています。
個々人が私利私欲をめざして勝手にふるまっても神はうまく全体利益につながるように調整してくれる・・・まるでそのよりどころの免罪符の如く「アダム・スミスも言った神の見えざる手」のフレーズはあちらこちらで使われているのですが、やはりそれはアダム・スミス理論の誤用、悪用ということのようです。

そういえばBS1の番組のルチル・シャルマとの対談では"ケインズ学説の悪用”といったことが話題になっていました。巨匠の学説を捻じ曲げ隠れ蓑にしてまでも暴走する現代経済・・・やはり“善と悪の経済学”はじっくり読む必要がありそうです。

 
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by C_MANN3 | 2016-12-17 00:00 | Comments(0)
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