◆原発事故から丸六年の節目を迎えて

【2017.3.11】 震災の日から丸六年が経過しましたが、復興事業では巨大な防潮堤の土木事業ばかりが目立ち、今なお8万人の方々が避難生活を続けておられるとのこと。カメラロボットが入った福島第一の炉内では想像を上回る破損の状態が露わになっているのに、追悼式典で首相の言葉からは“原発事故”との文言が消えてしまっているとのニュースが流れています。

ですがあの手この手で原発の再稼働をもくろむ政府の思惑とは裏腹に、日本はもはや原発は無くとも成り立つことが益々明確になりつつあります。
今年から始まった電力の完全自由化で低圧電力でも新電力へのスイッチングが着実に進み、すでに全国平均で5%を越えました。低圧、高圧を合わせて3月末には新電力の比率が10%に届きそうであり、その分旧電力の顧客は喪失し、もはや原発の稼働は必要不可欠ではなくなっています。

もともと日本全体の発電設備容量は原発を除いても、ここ数年の総電力需要に対して25%程度の余裕があり、しかもその構成が変化し続けています。この5年余りで石油燃料による設備が500万kW減少した一方でLNG火力は1400万kW増え、より高効率でCO2の排出も少ない新規設備へのシフトが進展しています。
また出力抑制や段階的なFIT価格の見直しでブレーキがかかると言われていたソーラーや風力の新規稼働もあまり減速することもなく、毎月60万kWのペースで増え続けています。
鳴り物入りで決めた出力抑制ルールは今の所離島でのみの発動です。ソーラーが増えすぎると火力のバックアップが間に合わず今にも破綻といわれていましたが、最も厳しい条件である端境期の昼間、5/4の九州電力では何と66%ものソーラー、風力を吸収する実績を残しました。その手段は火力発電の出力調整に加えて揚水発電の揚水をソーラー電力の一時蓄積に使うものであり、こうした調整の方式が定着するならまだまだソーラー拡大の余地はありそうです。

こうした変化と持続的な省電力の進展が相まって日本のCO2の排出量はここ2年連続して減少し、燃料輸入の増大で続いていた貿易収支の赤字も今年は黒字に転換。ソーラーのさらなる拡大や廉価なシェールガス輸入の始まりもあり、この傾向は一過性ではなく続きそうです。原発が無ければ立ち行かなくなると言われた理由はもはやそのすべてが成り立たなくなっている。日本のエネルギー構造はついにそういうステージを迎えたのかもしれません。

ここまで来るとそれでも原発の再稼働を求める理由は旧電力会社の利益確保ということになりますが、すでに何回もの電気料金値上げで各電力会社は黒字。それで最近は“その値上げ分を元に戻すため”だとか、“本格的な電力自由化で戦える経営体質を確保したい”といった説明に変化してきています。
これからは本格的な電力競争の時代に入ることは確か・・・ですがそのための経営戦略が原発再稼働かどうかには疑問符が付きかかっている。原発再稼働にはさらに増えそうな安全対策費や訴訟対策、そしていつ再稼働できるか読めないといった時間リスクが付きまとう。そんな時に原発にこだわり過ぎてポートフォリオを誤れば逆に新電力に足元をすくわれる可能性もある。原発にこだわり立ち行かなくなった東芝は電力会社の明日の姿の象徴かもしれません。

現在は3基の原発が稼働しているし、これからも何基かは再稼働するかもしれない。ですが各旧電力会社の経営判断としてエネルギー自由化を迎えてもはやそれどころではないと、原発再稼働が二の次三の次のプライオリティーに格下げされ、旧電力の中に実は隠れ脱原発の気分が漂い始めることを願う・・・そしてそれが最後の脱原発のよりどころとなる、というのは甘い期待なのでしょうか。

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by C_MANN3 | 2005-09-27 00:00 |  エナジー & カーボン | Comments(0)
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