◆社員の熱意とロイヤリティ

米国のギャラップ社が、企業人の会社への帰属意識や仕事への熱意といったものの国際比較調査を行った結果、日本は調査対象国14ヶ国の中で最下位だったようです。(2005.5.13 朝日新聞)
トップの米国では“非常にある”人が29%で“まったく無い”人が17%。
以下、ブラジル、カナダ、英国・・・と続き最下位の日本では“非常にある”は9%、“まったく無い”が24%です。

仕事人間、会社人間が多いと揶揄されながらも会社員のほとんどが漠然とではあるが会社との一体感を持ち、この漠然とした関係のよりどころをとりたてて疑うこともなく会社の職務に没頭していたかつての日本。ですが昨今の状況は、三菱自動車の不祥事やJR西日本の事故のニュースにもあるように何かが変わりつつあることを実感させてくれます。

例えばJR・・・自身の家族や我が身に何が起ころうとも職場を離れず一人駅を守っていたかつての国鉄ぽっほ屋の姿は、もはや高倉健が扮する映画の中だけの世界なのでしょうか。先日の大惨事の際もそうでしたが、一刻を争う必死の救出作業の中で死者の確認数が増え続ける真っ最中の同じ時間帯にボーリング場やゴルフ場にいることに躊躇を感じなくなった現在のJR。

ひとつには田舎の駅をたった一人で守らざるを得なかった only one の自覚と、数百人でひとつの職場を構成し、組織の群集に紛れることができる one of them の人たちの立場の違いがあるとしても、時代の変化とともに一人一人の心の中で会社や職業への意識が変わりつつあることは確かなようです。

この調査はいろんなことを感じさせてくれます。

まずトップの米国の29%という数値は思っていた以上に高い。80年代にGEの会長ウェルチが社員を20%のAクラス、70%のBクラスと残り10%のCクラスに峻別するバイタリティーカーブ論を唱えていましたが、そのAクラスの数字よりも大きい。ということは、この20年の間でも米国の会社員のメンタリティーは荒廃するどころか、さらにミッションを高めていたと言うことなのでしょうか。

GEではミッションマネージメントを専門に担う役員を配して推進されるミッション経営と、バイタリティーカーブ論で社員を峻別することが表裏一体、車の両輪といった感じですが・・・ウェルチは社員に対して単なる仕事の成果だけでなく、組織への帰属意識、ミッション、ロイヤリティといったことを強く求めて上位20%を厳選する一方、C級と格付けられた10%の人たちには退職を勧告するとか・・・

ひるがえって日本では従来、社員のクラス別けはしても、AクラスとBクラスの境界があいまいでした。会社が両者を際立っては峻別しなかったこともあり、社員の側でも多くの人たちには自身がAではなくBなのだという意識は希薄でした。このあいまいな集団幻想のおかげで日本ではAクラスだけでなくBクラスの人たちをも含めた大多数の人たちが会社に対してAクラスに匹敵する熱意やロイヤリティーを注ぎ、大家族主義を支えていた面がある・・・

しかし時代は変わり、この10年余で会社自身がこの幻想を急速に崩し始めた・・・

・成果主義を掲げて評価を精緻化し、君は実はBクラスなのだと思い知らせる。
・終身雇用が崩れ、生涯勤めて退職金をもらうか、いつやめても損の無い退職金組み込み型の給与にするか・・・好きに選択してもらって良いんだよと言う。
・会社人間は要らない、よその会社でも通用するほどの職能を磨きそれで会社に貢献してほしいと言う。

・さらにカンパニー制や、分社化が進行し、個々のユニットが独自に人事採用をはじめると全社への帰属意識も持ちにくくなる。
例えば世界に誇るAV機器を製造販売する企業かあったとして、従来のように大○○株式会社に入社しいろんな職場を経験しながらキャリアを重ねて行った時代には、会社や世界に冠たる製品自体が社員の誇りでもあったが・・・その企業が機能単位に分社化されていて、その物流子会社に就職したとなると対抗心を燃やす競合企業は他のAV機器メーカーではなく、宅急便の会社であったりFedExとなったりで・・・親会社への帰属意識とか親会社の製品への関心は持ちにくくなるのは確かです。

こうした中で、会社員の意識は確実に変わりつつある・・・それも主としてBクラス社員の層で・・・(2005.5.28)
by c_mann3 | 2009-06-20 00:00 | 組織心理学の心象風景 | Comments(1)
Commented at 2005-12-14 23:37
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