◆「日本版:意識の起源史」

E・ノイマンの「意識の起源史」・・・ウロボロスとか大母といった魅惑的な話が満載のようでぜひ一度読まなければと思いつつ、上下に分かれて二冊、分厚さに腰が引けてそのままになっていたのですが・・・日本の神話をベースにした「日本版:意識の起源史」ともいえる本が出ているんですね。

題して「ユングでわかる日本神話」。林道義著、文春新書462。気がつくのが遅かったのですが、昨年の9月の発刊です。
著者が前書きで“ノイマンと同様の分析を日本神話についてやってみようと思いました”と書いておられるとおり、この本は紛れもなく「日本版:意識の起源史」です。


神話に出てくる神々やドラマのモチーフがどんな元型や象徴かといったことについてもなるほどといった記載が多いのですが、この本の狙いはそういった物語を創出したその時代の日本人の“意識”の確立具合を推し量るところにあるようです。
意識というものは結局のところ無意識の世界から分離して生まれてくるものなのですが、この分離度合いが創出する物語のモチーフやキャラクターに反映される。そうした観点でいろんな国の神話を比較してみても日本神話を創出した時代の日本人の自我の確立度合いは相当な段階にあったとのこと。

林さんの本はいつもそうですが、面白くてわかりやすい。いつもの調子で、“ユング派の人たちはすぐ***というんですよね。でも違うんじゃないか”と言ったニュアンスのフレーズが随所に出てくるのですが、この差異表現が実は素人が勉強していく際に複眼的で立体的に理解を進める助けになっているんじゃないかと思うことがよくあります。
それにしてもご自身がユング研究会の会長をしていて“ユング派の人たちは・・・違うんじゃないか”という表現も面白いですよね。


ちょっと順番としては逆なのかもしれませんが・・・この本を味わった上で古典的名著といわれるノイマンの「意識の起源史」を紐解くのもいいのかも。
それともうひとつ、たぶんこれとよく似た話がぎっしり詰まっているに違いない本、「神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡」、ジュリアン ジェインズ著・・・キャッチコピーは“右脳に囁きかける神々の声はどこに消えたのか?3000年前まで人類は「意識」を持っていなかった!”。
なんとも魅惑的なフレーズで読まなければと気にはなっているのですが・・・この本はさらに分厚く、重い。 (2006.2.1)
by c_mann3 | 2007-08-12 00:00 | ユングのすそ野の 風景 | Comments(0)
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