◆ピンカー著、「人間の本性を考える」

認知、進化心理学、果ては脳科学・・・不確かな知識を省みず雑感を書き連ねているのですが、こうしたテーマに踏み込む以上、スティーブン・ピンカー(ハーバード大)の著作は避けて通れない。
ということで、遅まきながら「人間の本性を考える」、日本放送出版協会刊を読み始めました。

副題は・・・心は「空白の石版」か。
人は身体的な特徴はともかくとして、心や知能は白紙の状態で生まれ、その後の環境や学習で全てが決まる・・・遺伝否定のこの思想は不合理な差別撤廃に大きな役割を果たした一方で、教育過信の源ともなった。ですが、実は心や知能をつかさどる脳の機能の大半は遺伝的資質によって胎児の段階から方向付けられているのだと・・・

ただし、それはAさんよりBさんが資質に恵まれているとか、アーリア人がユダヤ人より優れているといった類の話ではなく、種としての霊長類人類が抜きがたい特徴として持つ特質の領域の話。
それは人類が石器時代に環境を生き抜くために進化適応した資質であり、今もそれを色濃く引きずっている。その後の人類は自身を進化させることを止め、外部に制度や文化や科学的な思考方式を発達させることで、生き延びて余りある現代を築き上げてきた。人はその現代に生物学的な遺伝子DNAと文化的遺伝子「ミーム」の合わせ技で適応し生きているということなのでしょうが、この二重構造が現代に生きる人類にいろんな悲喜劇をもたらしている。

例えば高度な数式を駆使し高度な最適判断ができる人類も、時間を限って結論を急がせるとトタンに直感に頼って乱暴な選択をする。崇高な倫理観を持つに至っているはずの人類が制度や文化のタガが外れた状態ではとんでもない殺戮の世界に突っ込んでいく。それは高度な教育と教養を身につけたはずの現代人が垣間見せる石器時代のDNAの姿なのかも。

企業の日常でも似たような現象は起こりえる・・・会議室でじっくり方針や施策を練りこんではいても、突発的な事態が続くと全く別の付け焼刃の行動戦略が作動する。

だとすると、種としての人類が持つ性癖をよく見極め、それを御する算段をすることが必要、なんてことを思わせる示唆に富んだ本なのですが・・・上、中、下と分かれた大作で読むのが大変なのが玉にキズ。

そういえばピンカーさんの著作にはほかにも感動的な本「こころの仕組み」、「言語を生み出す本能」等があるのですが・・・いずれも上、中、下とか上、下に分かれた大作なんですよね。(2006.11.28)
by C_MANN3 | 2012-04-20 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)
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