◆中沢新一さんの「対称性人類学」

前掲の記事(ひとつ上にスクロール)でスティーブン・ピンカーの本「人間の本性を考える」を読んでいると書いていたのですが・・・上、中と読んだところで途中下車し、急に以前から気になっていた中沢新一さんの「対称性人類学」を読み始めてしまいました。
どうやらこの寄り道は正解だったようで・・・二人の本を同時進行で読むことで何かくっきりとしたものがつかめそうな感じがしてきました。


◆「対称性人類学」・・・
この本は宗教学者である中沢新一さんが自身の講義録を基に編集した5冊のシリーズの最終冊です。すごく読みやすい本なのですが、この本によると・・・

旧人類の時代、人の脳は視覚、聴覚といった機能別の具象的な情報処理をするニューロンしか持っていなかった。ところが数万年前に、こうした個別機能に横串を刺すニューロンを持った人類が出現。こうして横串ニューロンが生み出す無意識の世界を獲得したのが現生人類であり、その後の人類の文化や文明の発達は全てこの無意識の世界から生み出されたもの。

世界中で伝承されてきた「神話」と「近代科学」・・・両極にあり決して両立しないと思われているこの二つも、実は人類が持つ無意識の中で渦巻く流動的知性を言語化したものという意味では同根。

無意識の世界では過去と未来といった時制の垣根がなく、生と死、人と自然といった対概念の中に同質性(対称性)を認め、その間を自由に相互乗り入れする流動的知性が渦巻く世界であるが、これをそのまま言語化すると神話や多神教の世界が出現する。

対して言語化する際に流動性を抑圧し、区分化した物事の違い(非対称性)に注目し、時間軸を導入して論理を組み立てたのが科学や一神教の世界。西欧の文化や文明はそれを極限まで磨き上げて今日に至っているが・・・実は抑圧されたものも大きい。

ですが注目すべきは、科学や一神教もそれを生み出すプロセスでは対称性を重視した流動的知性が不可欠であったこと・・・

出来上がってしまった科学や技術を受身で習得し活用するだけなら一神教的な非対称性思考が効率がよいが、それを乗り越え新しいものを生み出していくためには対称性思考を取り入れたバイロジックの発想が是非とも必要ということのようです。


◆ところで・・・
科学はその生い立ちに一見、科学とは相容れない世界とつながるものを持っているといった話は、別掲の記事▼《現代科学は魔法の末裔・・・》と相通ずるものがあり、人の創造性の根幹に関わるものを感じてしまいます。

また科学や一神教を徹底的に磨き上げてしまったことが人類をある種の袋小路に追い込んでおり、そこから脱却する手立てとして仏教をはじめとする東洋思想に注目するといった論調は、これまた別掲の記事で紹介の▼《西垣通さんの「情報学的転回」》を連想させるものがあります。
片や人類学、他方は情報学。論者や出発点が異なっても同じ結論に至る・・・どうやらこのあたりが閉塞した現代から脱出する“人の英知”の時代潮流、ファイナルアンサーなのかもしれませんね。(2006.12.28)
by c_mann3 | 2012-04-18 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)
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