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★クオリアから仮想へ・・・

クオリアに初めて接したのは茂木健一郎さんの本でしたが、その茂木さんに新著が出ました。
題して「脳と仮想」、新潮社、2004年9月25日発行。


クオリアは胸中に浮かんでは消える断片的なもの・・・対して仮想はもう少しストーリー性を持った思い。著者は冒頭で、女の子が信じている“サンタさんの存在”を引き合いに出すことから話を始めます。
クオリアが想起消滅を繰り返すスチール写真のワンショットだとすると、仮想は長編のビデオのようなものかもしれません。

仮想は二つに大別される。そのひとつは幾多のクオリアが連なって仮想となり、それが現実の世界とつき合わされ確認されることでどんどん確信として成長していくもの・・・事例としては数理モデルや物理学の世界。そう、こうした自然科学も実は現実世界の写像であり、現実そのものではない仮想というわけです。

で、もう一方の仮想は、現実世界と照合すると破綻する、現実にはあり得ないもの・・・でもそうした仮想を持たずして生きていくことは困難とか、持つことが救済になるといった、現実世界への希望や願望といったもの・・・前述のサンタさんもこの類ですが、これはいわば現実世界の逆写像であり、これももうひとつの仮想ということのようです。

随所に含蓄のある表現が見られますが、そのひとつ・・・

ある体験から心に傷を受ける・・・その体験によって脳内の神経細胞は大規模な再編成(言い換えるとクオリアや仮想の再編成)を余儀なくされる。それは既存の脳内認知システムでは取り込めない状況に直面して新たな認知ネットワークが編成されるということでもあるが・・・こうした再編成の結果、新しいものが生み出されるプロセスを人は“創造”と呼ぶ。要するに・・・脳は傷つけられることがなければ創造することもできない。   ・・・なんていうフレーズもあり、とにかく読んでいて面白い。

ですが・・・脳科学をベースにした論理とは言うものの、クオリアに接したとき以上に、科学というよりは更に哲学に近くなっている感じがします。もっとも科学も哲学も宗教も全ては仮想なんだと思えば、どうということもないのかも。(2004.10.24)
by C_MANN3 | 2012-12-16 00:00 | Comments(0)
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