◆「私はうつ」と言いたがる人たち・・・

五木寛之さんとの対談「鬱の力」に続いて香山リカさんの新しい本が出ています。題して“「私はうつ」と言いたがる人たち”、PHP新書534。

なかなか味わい深い本ですが、この本によると・・・うつにはCTやMRI、血液検査といった客観的な診断法が無い。自己申告と面談を主たるよりどころにDSM-Ⅳという世界標準のマニュアルに照らし合わせて判断することになる。

従って重度の本格うつで苦しむ人がいる一方で、ちょっと気分が滅入ると「私はうつ」と医者に駆け込み、医者も気軽に薬や診断書を出す傾向が広まっている。

今や国家公務員の長期休職の要因の63%が「精神・行動の障害」であり、癌や循環器といった疾病をはるかに上回っているとのこと。
メンタルケアの行き届いた公務員や大企業ては気軽に発行される診断書を盾にまんまと長期休暇や希望する職場への転属を手に入れる「うつセレブ」がいる一方で、職種や企業規模によっては同じ診断書を提出したばかりに白眼視されたり解雇されたりする「うつ難民」がいる。
「うつ」の世界もまた格差社会なのだと。

この本では野党の追及を受け自殺してしまった松岡農水大臣、あれやこれやで政権を投げ出してしまった安倍首相、一瞬プッツンしてしまったと自己申告した小沢党首などが引き合いに出されているのですが、ポイントはうつだから難局が乗り越えられなかったのではなくて、難局が一時的なうつ症状を引き起こしたということ。

人は困難に直面すると悩んで耐えて突破口を見出すのが本来の姿。その入り口でせっかくの悩みを「うつ」という病気にしてしまうのは人生にとってもチャンスロスなのだとも・・・

重度の本格うつには真剣な対応が必要なことはもちろんなのでしょうが・・・まるでファッションのように「私はうつ」と言う人が蔓延しているといわれると・・・私などにもちょっと胸にぐさりとくるものがある一冊でした。(2008.8.26)
by c_mann3 | 2009-02-16 00:00 | 組織心理学の心象風景 | Comments(0)
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