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◆実験進化学・・・

進化心理学、進化経済学・・・進化論をモチーフにしたいろんな本を読み、なるほどと思いながら肝心の進化論の本を読んだことがない。やっぱりそれはまずいんじゃないかなどと、図書館をうろうろ・・・そこでとんでもない本に出会ってしまいました。

題して「追いつめられた進化論」、西原克成著。副題が実験進化学の最前線。

いきなり・・
>本書はダーウィニズムを否定するとともに、進化の謎を実験進化学的手法によって解明しながら検証し、正しく解説したものである・・・と。


とんでもないフレーズからスタートするのでいかがわしい感じがして一旦は書棚に返したのですが・・・
やっぱり気になり借りてしまって、読み進めるとこれが面白い。困惑と感動がバームクーヘンのように層を成していて、このまま読み進めて飲み込んでしまうと体に変調をきたすんじゃないかと気にになりつつも読み始めると止まりませんでした。


進化は遺伝子の突然変異と適者生存の自然淘汰が積み重なったもので、獲得形質はその代限りのもの・・・というのは嘘。ダーウィンは一旦は医学部に進みながら解剖学がいやで神学部に転向したひと。そんな人が生み出した進化論は科学じゃない!なのにそれを信じた学者や学会は150年間その呪縛から逃れられなかったのだとも・・・

われわれの祖先は突然変異などという不確かなものによって形態を変えてきたのではない。たとえば地殻変動や気象条件の激変で陸に上がった魚は20倍に増えた酸素濃度と6倍に増えた重力の作用の中でのた打ち回らずをえず、それにより強制的に内臓配置や骨格が新しい形態に変化した。
そうして得られた新しい獲得形質はもちろん遺伝子に作用することはない。だから獲得形質自体は遺伝するわけではないが、同じ環境が続く限りその獲得形質は保存される。

さらには遺伝子は突然変異など待たずとも、環境変化でトリガーが掛かればとんでない変容をきたせるものを内蔵しているのだとも。で、そんな環境の激変と変容を何回か繰り返しながら今日に至ったのだと。

例えば、遺伝子重複で多体節化した生物が海中を泳ぐようになると慣性の作用で形が変わり、臓器の配置が変わる。
やがて陸に上がると重力の影響でさらに骨格と臓器の配置が変わる。酸素濃度の変化と呼吸の仕方の変化で新たな臓器が誘導される。臓器間の連携のために血管神経網が誘導される。
さらには酸素濃度の影響による化学的な変化がトリガーとなって遺伝子から新たな機能が発現する。

それを確かめるべく、著者はトチザメやネコザメを毎日一時間だけ陸揚げしたり、メキシコサンショウウオを陸揚げして臓器の変化を観察したり、その変化を人の胎児の変化と執拗につき合わせみたり・・・その結果、進化は実験で確認できる物理現象や化学変化であり、確かに個体発生は系統発生を繰り返しているのだと。

医学や解剖学の専門用語が多すぎて頭がくらくらするのですが、そんなことは気にせず無理やり読み進めるうちに・・・なんかそんな気がし始めるといった不思議な本です。

ところで、そうなると遺伝子の突然変異はどうなるの?ということになるのですが・・・それについては稿を改め次の記事に。(2009.6.24)
by C_MANN3 | 2012-08-20 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)

◆突然変異の効能・・・

前掲の本、西原克成さんの「追いつめられた進化論」では・・・
進化は突然変異などという不確かなものに頼って起こるのではない。形質の変化は環境の激変により物理法則にのっとってあっという間に起こる。さらにラマルクの“用不用の法則”による変容や退化がそれを仕上げていくのだと。

だとすると突然変異の効能はなんだってことになるのですが・・・この本では進化が起こった後、長い時間をかけて突然変異が蓄積されることで、もはや元の環境に戻ってもそれに適応していた元の形質には戻れなくなる働きをしているのだと。

突然変異は進化を起こすのではなく、それを後追いし歯止めをかけるもの・・・?

この本ではそれ以上の解説が無いため、最初は面食らったのですが、何回か読み返すうちになんとなくつかめかかった勝手なイメージでこんな図ができてしまいました。
b0050634_1283259.jpg
突然変異は超大なDNAのランダムな場所で、役に立つ立たないはお構いなしの変化として発生する。そしてどうやらその場所がポイントのようです。

すでに発現し現在の環境に適した形質を形作っている源となっている領域で突然変異が起こるとそれは奇形となる確率が高く、結果として生存には適さないため種として蓄積されることはない(区間A)。
一方、太古の昔に使われていて今は退化してしまっている領域や、いまだ使われないままの領域で突然変異が起こるとそれは発現されることもなく、従って淘汰されることもなく、単なる情報として複製され蓄積されていく(区間B)。

そうした後でいったん陸に上がった生き物が再び海に戻るような環境の後戻りがあったとしても、変異しつくしたDNAからはもはや再度それに適した形質を発現することはできなくなってしまっている・・・おそらくこんなイメージなのかもしれません。

言われてみると・・・ランダムで気まぐれな突然変異が突然の環境変化に合わせて都合よく起こるというのは不自然ですよね。だから西原さんはダーウィニズムは科学を装った創造神話、神学だというのですが・・・


◆となると、ちょっと困ったことが・・・

上の勝手な図にもあるように西原さんの進化論ではさらに新たな環境に適応するための進化は、現在の形質が自然法則にしたがってさらに変容していくことで達成されていく、それで足りないものがさらにDNAから誘発されていくとしてもそれはすでに現在のDNAにビルトインされているものということになるんですよね。

この進化論、かなり納得はしかかっているのですが・・・そうなると突然変異の効能はネガティブでむしろ生存や進化の足を引っ張る要因といった感じとなる。

実は私などは突然変異がもたらす多様性、多様な異端、異端の効能が社会や技術の進歩の源泉などといった思い入れを持っていて、このブログでもそんなモチーフの記事をあっちこっちに書いてしまっているんですよね。
異端は不要。正当な保守本流は絶滅などはせず、それ自身が内包するDNAを発現させていくことで進化は可能となると・・・異端の信奉者はある種のパラダイムシフトを迫られかねない。

・・・と一瞬悩んだのですが、落ち着いて考えてみると異端の源を突然変異に求めるからまずいんでよね。異端の効能は変わらない。そして異端は変異に頼らずとも内なる世界を独自に掘り起こすことでも生まれうる。

そう思ってみると“内包するDNA(無意識)を発現させていくことで進化(変容)が可能”とのモチーフはどことなくユングの世界とも通じるものがある・・・などと、とにかくいろんなことを考えさせてくれる進化論ですよね。(2009.6.24)
by C_MANN3 | 2012-08-18 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)

◆環境が誘発するDNAの発現・・・

進化は突然変異などという不確かなものに頼って起こるのではない。形質の変化は環境の激変により物理法則にのっとってあっという間に起こる・・・
前掲の本、西原克成さんの「追いつめられた進化論」では、陸に上がった魚は20倍に増えた酸素濃度と6倍に増えた重力の作用で形質を変えたとありましたが、それを髣髴とさせるテレビ番組がありました。

▼重力が変える・・・

NHKの“サイエンスZERO”、「踏み出せ!宇宙農業への第一歩」で紹介されていたのですが・・・シロイヌナズナを遠心力を使って過重力で育てる。あるいは宇宙船の中で無重力で育てる。
すると同じ種子から発芽させていても、まったく異なる形に成長するんですよね。過重力の環境に置くとほんの一日でリグニンが増えるといった変化がおこり、これにより細胞壁が強固になり花が咲きにくくなる。そして逆に無重力の環境ではまるで開放されたように枝葉を広げ、すくすくと伸びる。
なんとシロイヌナズナの全遺伝子26000個の中で600個はその発現量が重力の影響を受けることがわかってきたとのことですが、これはその昔、浮力の働く水中で生育していたころから名残なのだと。


▼酸素濃度が変える・・・

こちらは立花隆さんの“NHKスペシャル”、「がん、生と死の謎に挑む」での話。
大きく成長したがん細胞の固まり・・・その中央部では血管も損なわれて酸欠の状態。普通なら細胞はがん細胞もろとも死に絶えるはずがFIF-1という物質が活動し始め低酸素でも生き残り、しかも浸潤し易い細胞に変質する。

これは酸素の供給が乏しい初期の胎児が生き延びるため、もっと遡れば海と陸の間を行き来していたころからDNAが持っていた機能がFIF-1の刺激で発現したもの。このFIF-1は酸素センサーとしても働き、100以上のほかの遺伝子の発現に影響するとか。FIF-1が活動できない状態にしたマウスの胎児はいろんな器官を生み出していくことができず死に絶えるとのことなんですよね。

重力や酸素濃度などの環境変化で思わぬ発現をするDNA。そういえば・・・南米の荒地が原産のトマトは極端に節水して育てるとDNAが持つ祖先の記憶がよみがえり、きわめて糖度の高いトマトとして成長するといった話も。どうやらDNAが内包する記憶の奥深さと、それが発現する可能性には計り知れないものがあるようです。(2010.3.12)
by c_mann3 | 2012-08-16 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)

◆人類進化の700万年・・・

最近どういうわけか、進化とか遺伝子といった本を読み漁っています。
で、たどり着いたのが「人類進化の700万年」、科学ジャーナリスト三井誠さん著、講談社現代新書1805。

読みやすくて感動的な本です。それにしてもちょっと変わった畑の本を読むとまったく知らなかったことに次々と遭遇し感動させてくれます。

現生人類の祖先は4万年前にアフリカを発った人たち。しかも現生人類の前にもう一つ前の人類がいたようなのですが、それも180万年前にアフリカを発った人たちで、この原人が生まれたのが700万年前だとのこと・・・

で、第一陣のアフリカ発の原人はヨーロッパやアジアに進出していたのですが、そのあと出てきた第二陣の現生人類に圧倒されて消滅してしまったと・・・

700万年の人類の歴史などというと日常生活には何の関係もない話のようでいて・・・なんかいったんは世界中に広まっていた技術や製品が、その後から出てきたものにあっという間に駆逐されて跡形もなく消滅するとか、突然降って沸いた観のある新たなグローバルスタンダードとやらが世界中の経済を席捲するといった話を連想させるものもあり・・・企業に身を置く者としてもいろんなことを考えさせてくれますよね。

こんな本を読んでいたさなか、ロシア南部で発見された原人が実は前記二つの系統とはまた別の人類だということが判明したとのニュースが流れていました。

化石の歯から採ったDNAから分析した結果とのことですが・・・この領域ではいまもなお次々と新しい発見や解釈が生まれつつある・・・

素人ながら興味津々、目が離せなくなるといった感じですが・・・こういったことを解説してくれる良質な科学ジャーナリストの存在ってありがたいですよね。(2010.4.26)
by c_mann3 | 2012-08-14 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)

◆そしてふたたび遺伝子の突然変異・・・

ひとつ上の記事で紹介している本「人類進化の700万年」、その第6章は“遺伝子から探る”と題したもので、DNAに関する最新の知見が満載の分りやすくて感動的な一章となっています。

“環境の激変に遭遇した際に起こる形質の変化は突然変異なんかによるものではない。突然変異はそんなに都合のよいタイミングでしかも種全体に一斉に起こったりはしない”・・・それはその通りなのだとしても、その環境変化に対応して新たな形質が発現できるのはDNAにその準備があってのことであり、その準備となるのが遺伝子に作用する突然変異の蓄積ということ。

この本によると、突然変異は一定の確率で確実に起こる。人の場合でいうと一世代でひとつの塩基に起きる突然変異の確率は五千万分の一、それでも60個の塩基に変異が起こる。その変異がその時点での生存に必要な部位であった場合はたいていの場合は生存不適となり、淘汰されて残らない。だが生存にかかわらない領域で起こった変異は交配により種の中に広がっていく。そしてその蓄積が次の環境変化の中で発現し、それが優位な場合は種を滅亡から救う。そんなことを繰り返しながら現生人類は今に至っているのだと・・・

人とチンパンジーの遺伝子の違いは1.23%・・・そのうちのどの遺伝子が人を人たらしめているのか・・・あごが弱り脳が大きくなったのは?言語を生み出すきっかけになったのは?・・・一つひとつの遺伝子の働きと変異が発生した時期が少しずつ明らかになりつつある話は感動的ですよね。

そしていくつか上の記事の中で、首をかしげながらも勝手な思いで書いていたDNAの変異と発現の図は、この本と照らし合わせてもとりたてて間違ってはいなかったようで・・・まずは一安心。

ただ厳密には有害変異は淘汰され、中立変異のみが広がる・・・といっただけではないようです。
遺伝子の変異と拡散については太田朋子著、「分子進化のほぼ中立説」と言った本もあり、母集団サイズによっては揺らぎの中で弱有害変異が保存されていくとも。この本、面白そうなのですが、難解です。(2010.7.20)
by c_mann3 | 2012-08-12 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)

◆人類や生命の単一起源説・・・

前掲の本「人類進化の700万年」のもうひとつのポイントは“単一起源説”なのでしょうが、実はこの“単一起源説”、何年か前に初めて接したときはちょっとしたショックでした。

以下、生命の進化と文明の進化(発達)を同一視して話をするのは気が引けなくもないのですが・・・

現生人類には共通の祖先があり、それはアフリカから始まったと。で、あちらこちらで発見されていたネアンデルタール人や北京原人は勢力を確保できないまま消滅していったとのこと。化石からもDNAからも証拠付けられるこの説に異論は唱えにくいのですが・・・生命進化では単一起源説が有力といわれると、生命の進化論を文明や文化の進化にも重ねたがる私のようなものにとっては、ちょっと心情的に引っかかるものがあるんですよね。

関孝和がニュートンやライプニッツに先駆けて微分や積分の概念に到達していたといった話がありますよね。あるいは発明や発見がまったく交流の無いあちらこちらでほぼ同時に生まれ、特許出願が一日違いだったといった話もある。
こうした話に感動しやすい技術系の私などは、発明や進化というものは環境や状況(ニーズ)、発達段階といったステージが似ていれば、相前後してあちらこちらで類似のものが花開くなどと思っていることもあり、人類の起源もあちらこちらで発見される原人がその地域での起点だとする「多地域進化説」を素朴に信じていたんですよね。

技術開発でも「多地域進化説」なら、他国や他社の動向を気にしなくても勝手に想像力を膨らませて、その筋さえよければ同等の価値を持ったものが独自に生み出せて並存できるというわけです。

他にも疑問はいろいろ・・・メソポタミア、中国、マヤ・・・数千年前に世界の各地の古代文明で天文学をベースにした正確な暦ができていますよね。これって同じ星を眺めていれば同じ結論に至るといった多地域起源?それともアフリカ起源の人たちが世界に散る過程のどこかで既に天文学に近いこと知っていた単一起源?あるいはシルクロードさえなかったはるか昔にアジアの西と南米の間では既に交流があり、実は単なる文化の伝播と模倣の構図たったということなのでしょうか・・・?


もっとも心情的に引っかかったのは私だけじゃなく、中国の学者の方にも少なくなかったとか・・・
火薬、ロケット、印刷技術、あらゆる文明の発祥の地と自認する中国としては祖先は自前の北京原人であってほしいですよね。ですがその思いの出口を塞ぐかのように・・・仮に北京原人が祖先だったとしても実は北京原人もネアンデルタール人もアフリカが発祥の地で第一陣として180万年前にアフリカを出て世界に広がったもの。その後それを追っかけて10万年前にアフリカを出発した第2陣の現生人類に取って代わられたのだと・・・
これでは遡っても遡ってもアフリカ発の単一起源の波状攻撃といった感じで、中国の学者も浮かばれないですよね。

◆さらに枠を広げて生命の起源の話となると・・・

これはNHKのTV番組「進化の木、人の起源に迫る」で紹介されていた話なのですが、地球上のすべての生命は辿っていくと共通の祖先LUCAに行き着くとか。
このLUCAを起点にした生命の共通項はACGT四つの塩基からなるDNAと20種類のアミノ酸からなるたんぱく質で構成されていて、35億年をかけて分岐を続け現在その仲間は5千万種とも一億種とも。
もっともその殆どは古細菌、バクテリアといった細菌類が占めていて今もなお新しいものが生まれ(枝分かれ)、行き詰まったものは絶滅していると。
となるとここでも単一起源説になってしまうんですよね。もっともこの番組の解説ではLUCAが出現した時代に存在していたのはLUCAだけじゃなかったと・・・だとすると単一起源ではなく単一生き残り?

こうしたネタをもとに勝手な思いをめぐらせながら、無理やりまとめてしまうと進化の歴史というものは・・・
  ①まずは単一起源でスタートしたとしても
  ②それがいろんな環境の地域に拡散し
  ③それぞれの場所で多地域進化を進め
   (この間、中立変異も蓄積され続ける)
  ④やがて訪れる極端な環境変化か競争淘汰で単一生き残りとなる

そしてこの④が次の単一起源となって新たな色で世界を塗り替えるといったことが繰り返えされるといったことなのでしょうか。ただ現生人類の単一起源説では新たな①は④の中からではなく、再び外部から入ってくるということに・・・繰り返し繰り返し新たなグローバルスタンダードを発信し続けた当時のアフリカっていったいどんな世界だったのでしょうか・・・(2010.7.20)

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by c_mann3 | 2012-08-10 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)

◆さらに続く進化論への好奇心・・・

好奇心の趣くままに、さらに進化論の本を漁り続けています。どの本も読み進めるうちに新たな視界が開ける思いの感動があります。で、そんな本を何冊か・・・


▼「カンブリア爆発の謎」、宇佐美義之著、技術評論社

5億4200万年前、爆発の名にふさわしく造形のバリエーションをを競うかのように奇妙な形をした生物が一斉に出現したカンブリア紀。多細胞生物が固い組織を獲得して多様化した結果でありリン酸塩を多く含む地層から発見されるとのことですが、こうした爆発的な進化はこの時代だけのものでもなく、この瞬間に始まったものでもない…この進化の準備はもっと以前から始まっていたのだと。

まずは15億年前にビーズの糸として多細胞生物が出現し、7億年前の地球全体が氷河に覆われる時代を経て、6.3~5.4億年前のエディアカラ期に生物は一斉に多様化を始める。そしてその後の再度の氷河期でいったんリセットされたのち、カンブリア爆発の時代を迎えた。だがそれは形の変化であって遺伝子レベルでの準備はもっと以前の9億年前ごろに始まっていたとも。

▼「生命の起源」、パリティ編集委員会編、丸善

この本は物理学雑誌パリティの何冊かの特集記事を編集したもの。
第2章ではよく話題になる、メタンやアンモニアに火花放電をかけるとアミノ酸ができるといった疑似原始地球大気実験や、40億年前の原始スープが充満する海底の熱水噴出孔を模した実験などが紹介されています。

そして第6章では我々の共通の祖先LUCA、そしてそこから真核生物が生まれた不思議について・・・以下、章を追って生命を持つ太陽系外惑星を探しつつけている話、さらには数理学的な実験で自己複製機能を持った生命は作れるかといった話が続きます。
一部難解な章もありますが、驚くほど多様な分野の方々が物質や生命の起源に迫りつつある様子が窺えます。

▼「大量絶滅がもたらす進化」、金子隆一著、ソフトバンク・クリエイティブ

この本も衝撃的です。劇的な進化にはその手前の大量絶滅が必須。大量絶滅の中でわずかに生き残った者が敵のいない自由な空間で新たな環境に適応することで進化が起こるのだと。そして大量絶滅は隕石といった偶然の産物だけではなく、マントルの対流に起因する大陸の集合離散、それに伴う海進、海退、気象変化といった現象により周期的に繰り返されてきた現象なのだとも。

ところでこの本では今西理論を引き合いに、生物というのはすみ分けて均衡するもの、あえて戦いを挑んで自己の勢力を広げることはむしろまれ、周りの大量絶滅で奔放に手足を伸ばせる空間を得てこそ進化は可能といった表現も見られるのですが・・・この話はたとえば“会社組織の中での新興勢力の台頭”といった話にオーバーラップさせてみても、なんか示唆的ですよね。(2011.4.22)

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他にも下記の本の紹介記事を別掲しています。

   ◆生命 最初の30億年・・・アンドルー・H・ノース著、紀伊国屋書店、2005年刊
   ◆エピジェネティクス・・・仲野徹著、岩波新書1484、2014年刊
   ◆破壊する創造者・・・フランク・ライアン著、早川書房2011刊

by c_mann3 | 2012-08-08 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)

◆文明、文化はやはり多地域起源説・・・

(ふたつ上の記事で)人類はアフリカ単一起源だとしても、文明文化は多地域起源でなければ心情的にもしっくりこないなどとわけのわからない記事を書いていたのですが、世界各地の文明文化の起源と伝播の経緯をダイナミックに解説してくれている本に出会いました。

ジャレド・ダイアモンド著、題して「銃・病原菌・鉄」、副題が"一万三千年にわたる人類史の謎"で上下2巻の大作ですが感動的な本です。

たとえば農業は作物の遺伝子分析等で辿っていくとメソポタミア、中国、中米、南米(アンデス)、合衆国東部の5ヶ所が起源。
そして文字の起源を辿っていくとメソポタミア(シュメール)、メキシコ(マヤ)、中国、エジプトが独自の発祥地のよう。
それ以外の地では伝播を受けて進化したものだがその伝播には特徴がある。山脈、砂漠、気候帯といったものが伝播の妨げとなるため大陸の中では縦には伝播しにくく横に拡がる。したがって横に大きく広がるユーラシア大陸は伝播には有利。

文明の誕生は発明や発見といった一瞬の出来事ではなく、数千年をかけて少しずつ芽生えて育っていくもので、栽培や飼育に都合の良いものをかぎ分けることからスタートする。したがって植物にしろ家畜のもとの野生動物にしろ都合の良い生物が生息している地域であることが先発隊の条件であり、その人種が優秀ゆえに生まれたわけではない。そこでは自然淘汰では不利な変異種でも人類に都合の良いものを栽培することで人為的な淘汰が進み野生種がいつしか栽培種となる。

狩猟生活で自然を食い尽くす⇒それが栽培の誘因となる⇒定住が可能となる⇒効率化で余剰生産が生まれる⇒余剰で統治機構や軍隊や道具をつくる専門家を抱えることができる・・・こうしたスパイラルで文明や文化は生まれ、進化し、かつ伝播していく。いったん伝播を受けてしまうと自身で生み出すよりはそれを磨き上げる方が手っ取り早いため、文明文化の源流は辿っていくといくつかの起源に行き着くがそれは単一ではない・・・

不思議なことに発祥の地は今の先進国とは異なる。なぜ先発の地は伸び悩み、そうではなかったところが台頭し、現在の文化、文明、経済の不均衡が生まれたのか・・・その解明がこの本の主題なのですが・・・

メソポタミアは自然を食い尽くして途絶えた。中国はあまりにも統一のとれた国家が支配したため進歩の芽を摘んでしまった。
そんな中で東方からの大陸横伝播の終端として遅れて始まったヨーロッパの文明が、その後の改善進化で世界を圧倒する近代文明に到達した背景には地政学的な理由がある。
複雑な地形が原因で小さな国家や民族が統一されないまま残り、強すぎず弱すぎず、中程度の結びつきの世界であるヨーロッパは文明進化の切磋琢磨に必要な多様性があるがゆえに、伝播を受けた文明を磨き上げることには有利だったのだと。

この本は農業や文字が生まれて育っていく一つ一つの話がそれ自体でも面白い。ですが"伝播には「実体の模倣」と「アイデアの模倣」がある"とか、"偉大と言われて名を残している個人や集団の業績をつなぎ合わせるのみで歴史を語ることは困難”といった記載もあり、発祥や発見発明、進化とは何ぞやといったことについても改めて考えさせられる感動的な必見本です。

自然環境に分け入り嗅ぎ分けたものを育てることで自然に農業が芽生えていくといった話はどことなくレヴィ・ストロースの「野生の思考」を思わせたり、E.S.リードの生態心理学に通じる雰囲気もあったりもしますが、なによりもこの本には全世界と一万年を超える人類の歴史をわしづかみにした壮大さがあります。(2011.12.1)
by C_MANN3 | 2012-08-06 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)

◆「生物と無生物のあいだ」・・・

「生物と無生物のあいだ」、福岡伸一著。講談社現代新書・・・これもまた感動的な本です。

DNA、アミノ酸、たんぱく質・・・そのチェーンが織り成す生体の不思議が次々と解き明かされていくプロセスが、それに携わる研究者の熾烈な生き様とともに描かれているのですが・・・
素人にはなじみにくいはずの専門的な話がみごとな比喩、暗喩とからまって、まるでDNAのように螺旋状に展開されていて読み始めると目が離せなくなってしまいます。

そんな中で・・・窒素を放射性同位元素に置き換えたアミノ酸を三日間、マウスに食べさせた後、切り刻んでそれが体内のどこでどうなっていくのかを追跡する話が出てきます。

体内に入った食物は吸収されエネルギーとして燃焼し、そのほとんどが日をおかず排泄されるはずといった予想は裏切られ・・・何と排泄されたのはホンの30%。残りはすべて予想外に広範囲なあらゆる臓器のたんぱく質に侵入し入れ替わっている。そしてその分、古いたんぱく質が分解されて捨てられているのだと。

人体を含めて生物は放っておくとエントロピー増大の法則で飽和と死滅に向かって突き進むはずのものが、常に外部から負のエントロピー(食物摂取)を取り込み自身を再編成していく。

で、こうしたことから浮かび上がってくる生命感ということになるのですが・・・

生命とは代謝の持続的な変化であり、この変化こそが生命の姿。著者はこの絶え間なく壊されながら再構成される生体組織(の秩序)を「動的平衡」と呼んでいるのですが、秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない、生命とは動的平衡にある流れであると・・・
そこにあたかも肉体があるかのように見えるが実はそれは流れの中で渦巻くよどみのようなものなのだとも・・・

なんか・・・読んでいると方丈記を思い出してしまいました。
行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまることなし・・・まるでそっくりなんですよね。

新鮮で刺激的なフレーズが満載ですが、こうした話を会社組織や組織心理の新陳代謝に擬えて読むとまた違った風景になるのかもしれませんね。(2009.6.23)
by C_MANN3 | 2012-08-04 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)

   ・・・次は・・・

      ◆次は「心の哲学」や「アフォーダンス」について・・・⇒⇒


by C_MANN3 | 2012-08-01 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)