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◇問題は英国ではない、EUなのだ

【2016/12読】 この本は英国がEU離脱を決定し、米国ではトランプ旋風が巻き起こる中で出版されたエマニュエル・トッドの新著です。題して「問題は英国ではない、EUなのだ」。エマニュエル・トッド著、文春新書1093、2016年の刊。

EU離脱については既にそれを予見していた著者にとって当然の帰結であり、強引に推し進められるグローバリゼーションに疲弊する世界の中で巻き起こったネイションへの回帰なのだと。
今回の英国のEU離脱、そして米国のトランプ旋風・・・それは世界中をグローバリゼーションの渦に巻きこみ込んだ火元の国でさえもが、人・物・金の見境のない流動による弊害が耐え難い状況に至ったことを示している。
そうしたこともあり今回EU離脱に至った要因については移民の急増や経済格差が言われているが、実はもっと重要な動機は英国議会のEUから主権を回復することにあったことが投票の出口調査からもうかがえ、それは英国が世界に先駆けて"近代”の扉を開いた“名誉革命”へ回帰とでも呼ぶべきものであると・・・

EU離脱を決めた英国はいま戸惑っているようにも見え、次は連合王国の分裂かともいわれているが、そんなことにはならず、時間はかかるかもしれないが広大な英語圏諸国との絆を深める中で英国は再び確固たる地位を再構築するに違いない。

では一方のEUはどうなるか・・・超国家を目指して突き進んできたEUは益々構成国の国家主権の垣根を低くしEUとしての官僚組織を肥大化させる傾向にあるが、そうした中で経済政策、移民政策等で益々理想主義を貫こうとするドイツに対して、今までは仏・英が歯止めの役割を果たす微妙なパワーバランスの上に成り立っていた。
だが今後は英国の援護射撃を失ったフランスがドイツの歯止めとなることは難しく、おそらくは益々ドイツ色の強いものとなる。そこでドイツが理性的にふるまわなければあちらこちらで超保守が台頭し、構成国のネイション回帰が始まり分裂する可能性もある・・・というのがトッドさんのお見立てのようです。

ところで著者のE.トッドさんは歴史人口学者で家族人類学者。この本の後半ではご自身の血筋やキャリアの中で一連の著作を世に問うに至った思索変遷の経緯が回顧され、併せて人口学や家族の形態比較の視点から見た歴史の様相が解説されていきます。

外婚制共同体家族を基盤とする国家とかつての共産圏は分布が重なる。ベトナムは共産主義化したがとなりのタイは母方同居を伴う核家族をベースにした社会だったために共産主義には染まらなかった。その共産圏が崩壊した際も核家族型のポーランドや直径家族型のチェコはスムーズに共産主義を脱したが、中国やロシアは今後も尾を引きずると。また直系家族の社会は国家機能を内包しているがゆえにとりたてて国家を必要としないとか、核家族の社会は個人主義を発達させるが実は個人主義ではみ出したものを補完するためにかえって確固たる国家を必要とする、はたまた内婚制共同体家族のアラブではもともと国家形成が困難なのだ等々・・・

そしてこうした見方の延長線として2030年代の世界を展望する章へと続くのですが、読み進めるうちにこれからもE.トッドさんの予見が現実のものとなる場面は種々出てきそうな気がし始める貴重な一冊でした。
by C_MANN3 | 2015-12-30 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)

◇資本主義の終焉と歴史の危機

◆資本主義の終焉と歴史の危機 H29/1読

水野和夫著、集英社新書0732、2014年の刊。ただ事ならぬタイトルの本ですが、日々のニュースに現れる事変や相場に一喜一憂していては見えない歴史の本質を400年スパンの金利の変化でひも解いてくれていて、しかも不気味な説得力がみなぎっている本です。

この本によると・・・資本主義は(国や地域、産業分野といった)中心と周辺から構成され、中心が利潤率を高めて資本の自己増殖を推進するシステムであり、それが機能し続けるためには常に新たな周辺の確保が必要。
大航海時代にはじまり空間としての周辺を広げてはきたが、途上国が成長し新興国になれば更なる周辺が必要。だが21世紀を迎えた今、もはや地球上に新たな実空間としての周辺は見当たらない。
資本主義の始まりはフィレンツェで利子が容認されるようになった12~3世紀と見ることができるが、以来利子率の長期低迷が続くとその都度新たな周辺が切り開かれてきた。

投資先である周辺を失えば金利はおのずと下がる。そうした歴史の中でもっとも最近の1990年代の利子率低下時代を突破するために生み出された新たな空間がグローバルでバーチャルなな電子・金融空間であったが、それは必然的にバブル生成と崩壊を繰り返す性質のものであった。
そして崩壊の度にバブルをあおった側の巨大金融機関は公的資金で救済される一方で、一国の中では中間層がローン破綻やリストラにあい貧困層に転落、国家のレベルでは債務破綻国が生みだされて格差を広げていく。気が付けば遠くの地に求めるはずであった周辺が、中心であるはずの国や地域の内部に形成されつつあり、それがたとえば日本では非正規社員層の出現であり、EUではギリシャ問題である。

資本が利潤を生む空間を失えば資本主義は行き詰る。そしてそれが格差の拡大や中間層の崩壊を伴うものであれば民主主義に基づく国民国家の基盤も失う。資本主義の終焉とは近代の終わりであり、西欧史の終わりでもある。
金利の長期低下は資本主義終焉のバロメータであるが、そうした中で日本が世界に先駆けて到達したせっかくのゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ。このアドバンテージを利用して日本は“定常状態、脱成長という成長”を模索して歴史の危機に立ち向かうべきなのだが、それにう抗い成長路線に先祖がえりしようとすることは沈没を早めるだけなのだと・・・
ではこの危機を乗り越えソフトランディングする新たな処方箋とは何か、実は著者ご自身も明確な答えは持ち合わせていないとのことなのですが、この本の構図を念頭に置いておくといま世界で巻き起こっている現象が理解しやすくなることは確かです。
by C_MANN3 | 2015-12-29 12:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)

◆歴史の終わり・・・ 

◆歴史の終わり 上・下 H27/11再読

フランシス・フクヤマ著、三笠書房、1992年刊。この本のサブタイトルは"歴史の終点に立つ最後の人間"、この方が英語版の原題には近いのですが、“自由主義や市場経済が人類がつかんだ最終の形態”といったことが書かれていて、それがソ連邦崩壊と時を同じくして出されたために自由主義陣営の勝利宣言といった受け止められ方で評判となった本。
ですがよく読むと、自由主義や市場経済は人類がやっと手にした“よりましな形態”には違いないが、その歴史の執着点ともいえる世界で、そこに生きる我々は本当にそれを安定した世界として維持できるのか?といった懸念が主題のよう。

有史以来歴史を動かしてきたものは人の「優越願望」、そしてそれとは矛盾する「平等願望」とその実現に向かて突き進むエネルギーとしての「気概」。まずは「優越願望」がぶつかり合い、幾多の戦いを繰り広げて“君主と奴隷から成る専制国家”を再生産してきた。そうした中でしいたげられた人たちの間から「平等願望」の動きが芽生え、いくつかの革命を経て人類は自由民主主義の社会システムを手に入れたはずであった。だが同じ「平等願望」を起点としていながら世界は共産主義社会と自由主義社会という2つの形態に分かれてさらに「優越願望」を競う羽目に。ところがその片側の共産主義世界が突然内部崩壊してしまったために、自由主義、市場経済のシステムがファイナルアンサーとして残ることに・・・

だがこうしてついに「平等願望」が達成された社会でも、人の心には「優越願望」やそれを求める「気概」は残っている。それをうまく昇華させないと歴史の終わりはたちまち新たな抗争の歴史の始まりとなり、繰り返されかねない・・・で著者は“最後の人間”のモデルとして戦国の時代を経た後、一転して数百年の平和な時代を維持した江戸時代の日本人の生き方に期待を寄せるといった記載も。
ともあれこの本は20年を経た今日でも何かあると蒸し返して議論されるようで、その都度著者のハヤカワさんからは新たなメッセージが・・・そのうちのいくつかを下記のリンクに。
   http://www.nikkei.com/article/DGXZZO81529260T00C15A1000000/
   http://jp.wsj.com/articles/SB10001424052702304826804579617641333732478
by C_MANN3 | 2015-12-29 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)

◆100分で「平和論」・・・

【2016.1.3】 荒れ狂うIS、溢れる難民、拡散するテロ・・・騒然とした世界情勢の中で迎えた新年、そんな中で今年のNHK「100分de名著」の新春スペシャルはなんと「平和論」。昨年のスペシャル「日本人論」と同じく、今年も味わい深い番組でした。

今年取り上げられた名著は、斎藤環さんによるフロイトの 「人はなぜ戦争をするのか」、水野和夫さんによるブローデルの 「地中海」、田中優子さんによる井原西鶴の 「日本永代蔵」、そして高橋源一郎さんによるヴォルテールの 「寛容論」。

▼まずは“戦争と平和”について・・・フロイトによると人の心の奥底には生への欲動と死への欲動があり、この死への欲望が外に向かって発動されると暴力や戦争が起こってしまう。それは人の本質に起因するものであるから、これからも完全に抑え込むことは簡単ではないと・・・そもそも現実には個人のレベルでの暴力がその上位の法による暴力で抑え込むしかないように、国家間の戦争も超国家による武力の監視が必要となるが、武力を持たない国際連盟や国際連合では十分な抑止力とはなりえないことは歴史や目の前の現実が示しているところだと。
本来はもう一方の生への欲動に根差す「連帯感」が死への欲動への押さえになればよいのだが、これも1回転ねじれると内輪の過剰な連帯が死をも辞さない他者への攻撃に転じかねない危険をはらんでいる。
では一体何に期待をすればいいのか・・・取りあえずこの場の斎藤さんによる締めでは文化の発達と対話(ダイアローグ)に期待ということに、そしてこの番組の構成としては、その一つの道筋が文化や叡智に支えられたヴォルテールの 「寛容論」ということなのでしょうか。
それにしても齋藤環さんにダイアローグとルビを振った“対話”に期待と話を締められると思わず齋藤さんの近著「オープンダイアローグとは何か」を思い出してしまってにんまり苦笑・・・

▼さて続いてもう一つの話題は“経済と平和”・・・ブローデルの 「地中海」が紹介され、一旦は国の繁栄を導く資本主義もやがて一国の経済が飽和状態を迎えると、資本は更なる利潤を求めてグローバル化を目指し、やがては国内外をとんでもない状態に追い込んでいくのだと。それを避け、安定した経済的平和を持続させるには、成長を求めず、地域に根差した多様な価値観に基づく抑制的な経済活動が望まれると・・・で、そんな世界が本当にあり得るのかといった話から、独自の経済倫理に支えられ250年の安泰を見た江戸文化、井原西鶴の 「日本永代蔵」の世界が一つのモデルだということに・・・

実はこの話の流れを聞いていて思い浮かべてしまったのが・・・フランシス・フクヤマさんの「歴史の終わり」。紛争の動因にフロイトが生と死の欲動に持ち出すのに対してフクヤマさんは優越願望と平等願望を、そして歴史を安定させる究極のモデルとしては同じく日本の江戸時代を持ち出しているんですよね。こんな風にあちらこちらで持ち上げられる江戸時代というのは、私達ももう少し勉強した方がいいのでしょうか。
そしてこの番組を見てぜひとも目を通してみたいと思った「地中海」なのですが・・・これは何と5冊から成る大著、まずは一冊にまとめられた解説本もありそうなので、そのあたりから取り組むのが無難なのかも・・・

     なおこの番組の公式紹介ページがこちらに・・・
     http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/2016special/

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by C_MANN3 | 2015-12-26 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)

◆「ユーロ」、危機の中の統一通貨・・・

[2010.12.23掲載] ギリシャやアイルランドの財政危機が言われる中、一冊の本が出ています。題して「ユーロ」、副題が“危機の中の統一通貨”、田中素香著の岩波新書1282。

国家主権を尊重し、従って性善説にたった最低限度のルールと制度で統一通貨を擁しているEU。
そのため舵取りは難しく、たとえば統一通貨で統一公定歩合の制度下ではデフレ懸念のドイツを気遣い低めの金利を設定すると物価上昇率の高い南欧諸国では実質マイナス金利となってさらにバブルを誘発する。かといって地域間格差是正の政策や緊急危機対応の融資は国家間の調整に手間取り遅れ気味となる・・・

そんな中、リーマンショックの余波がやっと収まりかけたところで出てきた放漫経営国家ギリシャの財政危機でユーロは危機に瀕していて、学者や評論家からは統一国家無き統一通貨の当然の帰結でありユーロを分断し為替調整機能を復活させるしか出口は無いとの意見も出始めている。

だがこの本の著者は言う。ドイツが飛び出せばマルクは急騰し輸出競争力を失い、南欧が分離すれば通貨は下落し国丸ごとが投機資本の餌食になる。それがわかっているメンバー国は一国として分離を考えている国など無い。

EUはそんな柔な連合体ではない。この数十年間、危機があるたびに結束を強め制度を見直し今に至っている。今回の危機をきっかけにさらに新たな国家財政危機への対応や地域間格差解消の仕組みを身につけるならEUは更に確固たるEUになっていく(そういえば先日、EU版IMFの設立が合意)・・・
そしてロシアや中国が台頭し益々利害の対立があらわになる中ではEUのまとまりは益々重要なのだとも。

ユーロの仕組みや金融危機解説の章は難解ですが、無理やり読み進めるうちに著者の熱気が伝わってくるEU賛歌の本でした。(2010.12.23)
by c_mann3 | 2015-12-24 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)

◇ ユーラシア胎動・・・

【2010.6.18】 この本が語るユーラシアには西端の“ヨーロッパ半島”は含まず、それ以東のロシア、中東、中央アジア、インド、中国を含む広大な領域を指していて、それはかつてのモンゴール帝国の版図に近い。

ソ連邦崩壊の中からロシアが復活し中国が台頭するなかで中央アジアを含めた国々では紛争の元だった国境も次々と折り合いがつき友好関係が樹立されてきたが、その枠組みとなるのが上海協力機構。そしてその絆の証は国境を突き抜けて数千キロにわたって突き進む鉄道、高速道路、そして石油やガスのパイプライン・・・それはまさにシルクロードに重なるルートであり、その沿線に並ぶ国名の末尾がスタンで終わる国々が新たな要として浮上。

新たなる道を行き交う戦略物資はかつてのシルクに変わってエネルギー資源。そうした中でロシアは石油の埋蔵量が世界の14%で第二位、天然ガスは27%で第一位。
ソ連邦の時代、石油やガスはシベリア西端で生産されパイプラインも西にのみ向かっていた。だが今新たな油田やガス田がシベリアの中央やサハリンを含む東部で発見され、生産地もパイプラインの仕向け先もがどんどん東に向かって重心を移しつつある。

計画ではいくつもの方向から伸びるパイプラインが中国の沿岸部を目指しており当面は中国の激増する需要を満たすことになるが、併せて十年を待たずに日本の石油、LNGについてもその数割がサハリンや東シベリアからのものになるとのこと。

それにしても・・・行き詰まる西欧先進国を尻目にこうしたユーラシアの国々が千年の時を経て再び世界の主役になりそうな気配の中で、米国と対等になることばかりに気を取られている日本って、大丈夫なんでしょうか?(2010.6.18)
by C_MANN3 | 2015-12-22 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)

◆金融恐慌とユダヤ・キリスト教・・・

百年に一度の恐慌と言われていたはずの経済が二年をまたずに回復の兆しを見せ、蓋を開けてみると米国では多額の公的資金注入でリセットを果たした企業の役員がとんでもない報酬をもらいつづけている・・・そんなニュースに割り切れないものを感じている中でおもしろい本に出会いました。

題して「金融恐慌とユダヤ・キリスト教」、島田裕巳著、文春新書727。宗教学者が書いた経済学の本なのですが、なかなかの説得力です。

この本によると・・・
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、こうした宗教圏の人々には唯一神への信仰があるだけでなく、共通のバイブルである旧約聖書で説かれた原罪意識や終末思想、そこから抜け出すノアの箱舟といったモチーフが無意識の中に潜んでいる。それが経済学の理論構築や運用にも反映されているが同じ物語を信じてはいても各宗教によってその理解は異なる。

例えばキリスト教圏では神は絶対であり、しかも聖と俗が分離している。そこで神の見えざる手”に導かれた自由市場経済といった発想が生まれ、極端な弱肉強食の世界を引き寄せてしまった・・・
俗なる世界で人間がどんなに強欲に動いても絶対的な神様が市場を最適に調整してくれる。その結果、もし神の怒りに触れこの世が終末を迎えても、もう一方で信心に励む聖なる自分?はノアの箱舟に乗りさえすれば救われると思っているふしがあると。

リーマンショックを百年に一度の恐慌と解釈し大騒ぎしたのは無意識に潜む終末思想の現れ・・・しかも資金注入された企業の経営陣がとり続けるとんでもない高額の報酬は「選ばれた自分」に許された当然のノアの箱舟の乗船予約券だと思っているのかも・・・

対してイスラムでは神自体は絶対だとしてもその意向に沿うかどうかは人(法学者)が人間の責任において判断する。したがって完全な神任せの自由市場とはならず、それが利息を取ることや投機的な投資を禁止するイスラム金融の制度につながっていると・・・

ところでこの利息禁止の話ですが、旧約聖書の中では但し書きがあって異教徒から利息を取ることは許されていると・・・で、どこへ行ってもマイノリティなユダヤ教徒は回りの異教徒を相手に遠慮なく金融業に励み、気がつけば世界の金融を支配するまでになっていたなどといった話も・・・

では日本はどうか。神を絶対視することが希薄な日本では市場の最適化を神にゆだねるわけにもいかず、村落共同体的な同調意識が神の見えざる手の代わりを果たしてきた。
したがってイスラムや(一昔前の)日本の資本主義では本質的に大恐慌は起こりにくく格差も広がりにくいはずのもの・・・等々。

経済や金融を切り口にキリスト、ユダヤ、イスラム、仏教、果ては八百万の神までを総なめにしたすごい本ですが、読んでいて中沢新一さんが「対称性人類学」で述べている“キリスト教、資本主義、グローバルスタンダードの▼一神教連合が世界を席巻している”といった話を思い出してしまいました。この中沢さんも宗教学者。宗教学者の視点や切り口にはなかなか味わい深いものがありますよね。

ところで、キリスト教圏では聖と俗が徹底分離といった話については▼こちらにも記事が・・・(2010.1.20)

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◆2010.1.23追記

こんな記事を書いていた矢先の1/21、オバマ大統領が金融規制強化の改革案を発表。銀行がヘッジファンドやデリバティブといった高リスク分野に投資することを禁止するとのことですが・・・もちろんウォール街は猛反発し株価も一斉に下落。
これって米国式金融のイスラム金融ナイズ?新約聖書から旧約聖書への回帰?・・・などと言うと島田さんの本を読んでのかぶれ過ぎってことなんでしょうが、宗教で裏打ちされた無意識に基づく経済行動を規制強化で押さえ込むのは簡単ではないでしょうね。

◆2010.7.16追記

さすがアメリカ。7/16、ニュースによるとついにこの金融規制改革法案が可決され、後は大統領の署名を待つのみに。
80年ぶりの抜本改革とのことですが、これが新たなグローバルスタンダードとなるならまずは一歩前進ですよね。
by c_mann3 | 2015-12-20 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)

◆ロスチャイルド、通貨強奪の歴史・・・

[2009.10.30掲載]リーマンショックから始まった金融恐慌も一年を経過。ですが実体経済はいまだ出口が見えない中、投機筋には再び資金が集まり始めているといったニュースもあり、しばらく落ち着いていた重油や金が上昇し始めていることが気がかりですよね。

そうした中で、にわかには信じがたい話がぎっしり詰まった一冊の本が出ています。題して「ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ」。宋鴻兵著、ランダムハウス講談社刊なのですが、リーマンショックの半年前に発行され、今回の恐慌を予言していたとして有名になったとのこと・・・

この本によると、日本の日銀に相当するアメリカの連邦準備制度理事会とその傘下の中央銀行は実は民間資本の民間組織。しかもその資本の過半は直接間接にロスチャイルド家の息のかかった欧州資本が占めている。つまり米国は通貨発行権、公定歩合の操作権をロスチャイルドを頂点とした国際銀行団にゆだねている状況であり、その主権を取り戻そうとした大統領は次々と不自然な倒れ方をして今に至っているのだと・・・

ロスチャイルド家は18世紀の頃より戦費調達に苦しむ欧州各国の王家に取り入り、王家の徴税権を担保に取ることで紙幣発行の形で巨額の融資を繰り返す。この融資、2~3割と利息は高いが元金の返済は不要。そうした抜き差しなら無い状況を作った上で大小の戦争、インフレやデフレの経済恐慌を演出し、余すことなく世界中の富を吸い上げてきた。

そして今、世界の経済はとんでもなく巨大で複雑に・・・巷に溢れる証券やローンは一種の擬似貨幣。今や紙幣発行権などは無くとも不動産や株価指数を担保にした証券を頂点まであおり、一挙にクラッシュさせることで富の収奪は可能に。こうして一時は世界の富が集中した日本が狙われてクラッシュ。
だとすると次に狙われるは中国、ということで著者はその対抗手段として戦術的には日本の失敗に学んだ策をとりつつも、戦略としては元を金銀本位制にすることで元の信頼性を確保し国際通貨に仕立て上げることを提案しているのですが・・・

この本、理解するには根気が、そして信じるには勇気が必要ですが、それでも無理に読み進めると通貨とは何ぞやといったことがうっすらわかるような気がしないでもない一冊でした。
by c_mann3 | 2015-12-18 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)

◆市場は制御できるものなのか・・・

[2008.9.30掲載]サブプライム問題に端を発して急激な展開を見せるアメリカ発の金融破たん劇はいったいどこに行き着くのでしょうか。
震源地の米国ではほんの1~2週間の間に兆単位の金が動く救済、破産、買収、吸収が毎日のように起こりあっという間に上位五社の証券会社の輪郭が一変してしまいました。

ですがそんなことでは事態は収まらず海外にも飛び火しヨーロッパでは金融機関の国有化が相次いでいます。そして今日、金融機関から不良資産を買い上げる大統領肝いりの金融法案が米下院で否決され、ついにNY株式は777ドル安と史上最大の下げを記録しました。

とにかくとんでもないニュースが毎日飛び込んできますが、そんな中でなんとも味わい深い本が出ています。
題して「ハイエク」、PHP新書543。池田信夫著で副題が“知識社会の自由主義”とあります。 


「ハイエク」はオーストリアの経済学者。
東西冷戦真っ盛りの時代に東の計画経済を非難する一方、返す刀で西側諸国の政府による財政出動や金利操作といったことをも批判。西も東もを敵に回してしまったばっかりにまっとうな経済学の世界からは抹殺されてしまったハイエクですが・・・

その心は社会や市場といったものを理論や計算で意図どおりに管理すること全般に共通して潜む思い上がりを問題にしたものであり一見「小さな政府論」にも通じるもの。
ですが大きな政府になりやすいケインズとの論争に敗れた後は数十年にわたって沈黙を余儀なくされ、サッチャー、レーガンの時代になってやっと日の目を見る。

ハイエクによると・・・工学的なシステムとは異なり、目的がはっきりせず判断に必要な情報も不完全な市場システムに対しては計算しつくしたつもりの施策も意図せざる結果を招くだけに終わることもあると。

ところが時代は今、金融工学を駆使しヘッジにヘッジを重ねて確実だったはずの金融市場がついに崩壊。これを押さえ込むべく「小さな政府」を目指していたはずの各国の政府が膨大な財政出動を余儀なくされている。

こうした各国の力任せの施策はハイエクの言うように意図せざる結果を招くだけに終わってしまうのか、あるいはそれなりの効果を発揮し、それと引き換えにハイエクの意にはそぐわない国家統制色の強い世界に回帰していくことになるのか・・・
いずれにせよこの混乱の中から多少なりとも新しい秩序が芽生えて欲しいですよね。

ところでこのハイエク、合理的経済人仮説に基づく均衡論には反対し、複雑な市場システムの中では人はもっと直感的に動くものなのだと・・・現在の行動経済学にも通じる学説を唱えていたこともあり1974年、ついにノーベル賞に輝くんですよね。
by c_mann3 | 2015-12-16 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)

   ・・・“風にまかせて”はさらに続きます・・・

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“風にまかせて・・・” はさらに続きます。

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by C_MANN3 | 2015-12-01 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)