「ほっ」と。キャンペーン

<   2017年 01月 ( 9 )   > この月の画像一覧

◇通り過ぎて行ったプーチン

このコーナーではこのブログの記事から、日々流れてくるニュースの中でも特に大きな話題となったニュースにまつわる記事を集めてみました。
その後治まった話もあれば、今に尾を引く話も・・・話題はいろいろです。


【2016.12.16】 山口、東京と二日間の日程を終え最後は講道館で締めくくったプーチンは満面の笑みを浮かべて去って行きました。その後は息をつく暇もなく額に汗しながら「一定の成果はあった」と各テレビ局を説明に駆け巡る安倍首相の姿が印象的ではありました。

80項目3000億円に上る経済協力が合意されましたが、期待していた北方四島の返還に関しては一歩も前進できないままの結果となりました。
ただもともと島の返還はそう簡単な話ではなかったはず。国際世論の反対をものともせずクリミアを強引に併合し、シリアのアサド政権にも過激な肩入れする背景の一つは、それぞれにある(ひとつは黒海に、もう一つは地中海に面した)海軍基地の現状維持確保にあるとも言われる中、太平洋に出ようとするウラジオストックの海軍基地の前方をふさぎかねない島の返還には、たとえ二島といえどもOKするつもりはないということなのかもしれません。

歴史にifは無いのかもしれませんが物は考えようで、もしゴルバチョフかエリツィンの時代にたとえ二島でも返還を受けていたとしたら、その後国威を回復したロシアは今頃は、強気で東シナ海に勝手な線引きをする中国と同じように北方四島の付近に勝手な線引きをして日本に迫ってきているかもしれない・・・そう思うとそんな緊迫した事態よりは1mmも動かないほどに静まり返った今の四島の方がまだしもましではないかと考えることもできます。

ただ北方四島では墓参の自由と拡大のめどが立ち、しかも二島ではなく四島を対象にした「特別な制度のもと」での経済協力の協議を開始するということになったことは大きな前進かもしれません。
筋を通せば制度設計が山に乗り上げる懸念はありますが、とにもかくにも折り合いさえつけばまずは進出する。それは別項の80項目のプロジェクトも同じなのですが、とにかく機会さえ整えば進出する。そしてそこでじっくりと地元と共栄できる企業城下町を作る。中ロの国境線問題を解決した中国がその後一挙にシベリアに進出はしたがほとんど地元への利益還元が無い強引な経営で顰蹙を買っているとの話をよく聞きますが、日本ならそういうことにはならない。
資本と技術を持ち込み地元密着で事業を定着させていくなら、領土は増えないが日本の経済領域は拡大する。それが地元で愛されるものであるならば共存生活空間の拡大にもつながる・・・今回の2日間の会談がそうした未来につながることを願いたいですよね。 
by C_MANN3 | 2017-01-20 00:00 | Comments(0)

◇問題は英国ではない、EUなのだ

【2016/12読】 題して「問題は英国ではない、EUなのだ」。エマニュエル・トッド著、文春新書1093、2016年の刊。
この本は英国がEU離脱を決定し、米国ではトランプ旋風が巻き起こる中で出版されたエマニュエル・トッドの新著です。

EU離脱については既にそれを予見していた著者にとって当然の帰結であり、強引に推し進められるグローバリゼーションに疲弊する世界の中で巻き起こったネイションへの回帰なのだと。
今回の英国のEU離脱、そして米国のトランプ旋風・・・それは世界中をグローバリゼーションの渦に巻きこみ込んだ火元の国でさえもが、人・物・金の見境のない流動による弊害が耐え難い状況に至ったことを示している。
そうしたこともあり今回EU離脱に至った要因については移民の急増や経済格差が言われているが、実はもっと重要な動機は英国議会のEUから主権を回復することにあったことが投票の出口調査からもうかがえ、それは英国が世界に先駆けて"近代”の扉を開いた“名誉革命”へ回帰とでも呼ぶべきものであると・・・

EU離脱を決めた英国はいま戸惑っているようにも見え、次は連合王国の分裂かともいわれているが、そんなことにはならず、時間はかかるかもしれないが広大な英語圏諸国との絆を深める中で英国は再び確固たる地位を再構築するに違いない。

では一方のEUはどうなるか・・・超国家を目指して突き進んできたEUは益々構成国の国家主権の垣根を低くしEUとしての官僚組織を肥大化させる傾向にあるが、そうした中で経済政策、移民政策等で益々理想主義を貫こうとするドイツに対して、今までは仏・英が歯止めの役割を果たす微妙なパワーバランスの上に成り立っていた。
だが今後は英国の援護射撃を失ったフランスがドイツの歯止めとなることは難しく、おそらくは益々ドイツ色の強いものとなる。そこでドイツが理性的にふるまわなければあちらこちらで超保守が台頭し、構成国のネイション回帰が始まり分裂する可能性もある・・・というのがトッドさんのお見立てのようです。

ところで著者のE.トッドさんは歴史人口学者で家族人類学者。この本の後半ではご自身の血筋やキャリアの中で一連の著作を世に問うに至った思索変遷の経緯が回顧され、併せて人口学や家族の形態比較の視点から見た歴史の様相が解説されていきます。

外婚制共同体家族を基盤とする国家とかつての共産圏は分布が重なる。ベトナムは共産主義化したがとなりのタイは母方同居を伴う核家族をベースにした社会だったために共産主義には染まらなかった。その共産圏が崩壊した際も核家族型のポーランドや直径家族型のチェコはスムーズに共産主義を脱したが、中国やロシアは今後も尾を引きずると。また直系家族の社会は国家機能を内包しているがゆえにとりたてて国家を必要としないとか、核家族の社会は個人主義を発達させるが実は個人主義ではみ出したものを補完するためにかえって確固たる国家を必要とする、はたまた内婚制共同体家族のアラブではもともと国家形成が困難なのだ等々・・・

そしてこうした見方の延長線として2030年代の世界を展望する章へと続くのですが、読み進めるうちにこれからもE.トッドさんの予見が現実のものとなる場面は種々出てきそうな気がし始める貴重な一冊でした。
by C_MANN3 | 2017-01-18 00:00 | Comments(0)

◇豊洲市場、欲しいもう一つの議論・・・

【2016.10.12記】 新たに就任した小池知事が「いったん立ち止まって見直す」と宣言すると同時に露わになった、豊洲市場の水浸しの地下空間の写真。あまりにも奇妙で不気味な風景に以降、テレビではニュースも昼のワイドショーもこれ一色に染まってしまいました。

後は雪崩を打つようにあるはずの盛り土が無い、専門家会議や技術会議の勧告とは異なる、これで市場としての食品の安全性は保たれるのか、そしてこの地下空間は一体何なのかと・・・話は一挙にいつだれが専門家会議の勧告を捻じ曲げたのか、その際の報告はあったのか、あったとすれば承認したのは誰だと話は進み、こうした話が持ち上がった際にはお決まりの、ケシカラニズムに基づく犯人探しと責任追及の世界に突入してしまいました。

もちろん安全性に疑念が出た以上、専門家会議の勧告を受けて展開されたはずの推進の各段階で不適切な発注や指示、計画変更の協議や承認がなかったかとの経緯の究明は大事です。ですが責任の追及一色に染まってしまった都議会やマスコミの動きを見ていると・・・何かもう一つの大事な事柄がかき消されてしまっている。

それはこの一連の犯人探しが終わり、戦いすんで日が暮れて、夜が明けた後・・・経緯はともかく今目の前に横たわっている土壌、地盤、そして建造物は・・・使えるものなのか、何がしかの改造が必要なのか、はたまた市場としての利用は放棄すべきものなのかといった話に立ち戻る。そして何よりもこれが大事のはず。

つまり手続きの適合性とは別の次元の話としての、今目の前に横たわっている“物”の妥当性の吟味ということなのですが・・・そのためには各プロセスに関わった人の設計意図、専門家会議の勧告とは異なるが、あえて実施設計の段階で変えていった理由と、それが将来の市場の安全な運営にとって可なのか否なのかを再検証することが必要、そしてそのためにはそれに直接かかわった人たちからの意図の表明が必要なはずなのにそうしたことはほとんど話題になってこない。

例えば建造物の下に盛り土が無いことがケシカランということになっていますが、盛り土を完全に残すことが金科玉条なら建物は高床式にでもすべきだったということなのでしょうか。建物の下には基礎があり、何がしかの設備空間が必要な事は当たり前のことなので改めて会議体に(承認願いといった)手続きが必要な事項とは思っていなかったといった話も出ています。

公開されている専門家会議の報告概要を見てもそこには、土壌や地下水の事前除染、そのための仕上げとしての盛り土、そして運用開始後も汚染状況をモニタリングできる設備を有すること、地震の際の液状化防止として地盤の改良と地下水位を一定に制御するための揚水設備を有すること、といったことは規定されていますが、そこに建物を造る際の基礎や構造についての言及があるわけではない。
よって関係者はその技術的見識と、それを担う組織のブライトにかけても一歩前に出て、今作られているものがなぜこうした形になっているのかを説明すべきです。

例えば建築物の下の盛り土についてはプロポーザルの技術提案をした日建設計からの見解書が出ていますが、一旦こうした疑念を持たれてしまった以上、各部署がこうした見解を市民に分かる形で表明し、都はそれを束ねて世間に問うことが必要であり、それを責任究明とは別に、並行して早急に行うべきです。

実はこの地下空間はまだ未完成で、雨水等の排水処理システム、地下水位を制御する揚水システム等が稼働し始めれば地下空間にたまった水は消えてなくなるという話もあり・・・もしそうならば今回の騒ぎはその大半が、未完成な建造物の地下に土足で踏み込んで引っ掻き回し、本当に確かめるべき関係者からの意見聴取もせずに巻き起こしたカラ騒ぎということになるのですから・・・

▼2016.10.20追記
地下水制御システムが稼働し始めれば・・・などと書いていたのですが、10/14地下水制御システムが本格稼働を開始し、地下水位観測値の推移がホームページで公開され始めました。

で、早速その値をよく見てみると多少下がりかかってはいるようなのですが、数値だけが公開されても理解は難しいですよね。21か所の観測点で地下水位が2.5mから4.5mと大きくばらついている・・・どうやら野原のため池の水位を測って高ければ排水ポンプで一挙に排出するといったイメージとは様子が異なる。

そもそも地下水位とは何を表しているのか、地下水を排出するとはどういうことなのか(もしかして排出井戸に少しずつにじみ出てきたものを排出しているだけなのだとか・・・)、そしてその下がり具合は設計で想定していたものと比べてどうなのかといったことを解説付きで公開して頂かないと、またしても的外れなコメントが流布しかねない。

せっかくの情報公開ですからこうした技術的に込み入ったものについては(池上先生並みの分かり易さとまではいかなくても)それなりの解説を添えて公開して頂くのが“市民との情報共有”のあるべき姿ではないかと・・・ともあれ本件はもうしばらく要経過観察ということのようです。

▼2016.10.31追記
地下水管理システムが本格稼働し始めて半月が経過しました。公開されている21ヶ所の地下水水位の記録をグラフ化しながら様子を見ているのですが・・・+1.8~2mの管理目標にスムーズに接近しているとは言い難い状況が続いています。
b0050634_23141784.jpg地下水管理の制御目標ラインの近辺に敷設されている砕石層が通路となって、その下から湧き上がってくる地下水や、上から滲み落ちてくる地下水を集めて排水井戸に導くはずなのでしょうが、それがうまく機能していない感じがします。

そもそもこの砕石層は、建物の地下空間の内外とつながっているのでしょうか。外部とつながっているのならこれを通路として外部の地下水が地下空間に流れ込んでくるでしょうし、つながっていないのなら地下空間に一旦たまった水を排水井戸に導く事はできない・・・なぜ地下空間があるのかだけでなく、地下水管理システムの設計意図についても当事者の説明が欲しい所です。

▼2016.11.16追記
地下水管理システムが本格稼働し始めて一ヶ月が経過しても管理水準の1.8mには届きそうにない中、気長に発表される数値をグラフに足しこんできたのですが、ここにきてとんでもないことに・・・
グラフ中の赤◆印は日量10mmを超える雨量があった日を示しているのですが、先週末の11/11、日量40mmを超える雨が降った際に地下水位は一挙にリバウンドしてしまいました。これではいつまでたっても管理水準には到達しないのではないか・・・やはり地下水管理システムについても設計者がどういう目論見で設計施工したものなのか、説明して頂くことか必要のようです。(もうしばらくはグラフを更新しながら様子を見ることにはしますが・・・)
by C_MANN3 | 2017-01-16 00:00 | Comments(0)

◇ イスラム国の野望・・・

【2016.10.20記】 IS、イスラム国のニュースが毎日のように流れる中で読んだ本なのですが・・・
◆イスラム国の野望 H28/10読

高橋和夫著、幻冬舎、2015年の刊。著者は中東で何か事が起こると決まってコメンテイターとしてテレビに現れる放送大学の教授。その教授による「イスラム国の野望」と題した講演会を拝聴したことをきっかけに、同じタイトルのこの本にも目を通すことに・・・

この本では残虐極まりない人質の殺戮で恐怖心をあおる一方で、巧妙なネットメディアによるプロパガンダで広範囲な諸国から妄信的な若者を引き寄せ、ついにはシリア、イラクの両国にまたがる領域を支配するに至っているイスラム国(IS)が、実に分かりやすく解説されていきます。

その母体は米軍が引き上げ一挙に不安定化したイラクで排除されたスンニ派で、かつてフセインを支えたバース党の官僚や軍人の面々。従って単なる過激派集団ではなく緻密な官僚機構を持ち、軍隊は最新兵器を扱う連度も高い。あちらこちらの富豪からの寄付、石油資源、身代金、支配地域からの徴税と資金源も豊富なのが特徴。
それを率いるバグダディはカリフの象徴である黒いターバンをまとい、7世紀のムハンマドの世界を理想として、なりふり構わぬ戦闘とイメージ戦略ですべてのイスラム世界の支配を目指して国家を宣言するに至っている・・・

それを殲滅すべく周辺国やEU、ロシア、米国は躍起になってはいるがそれぞれに思惑や事情があり、その真剣さには温度差がある。
例えばアラブの春の流れを自国民に銃を向けることで止めてしまった独裁政権のシリアは、取って代られると世界がほっとして認めそうな国内の穏健勢力を潰すことに忙しく、自国を1/3も支配されているのにイスラム国つぶしには熱心ではない。むしろまず自国の穏健勢力を殲滅することで“アサド政権が崩壊するとシリアはイスラム国になってしまいますよ”と各国を脅迫できる構図を望んでいるかのようでさえあると。

ところがイスラム国をたたく手前に立ちはだかるシリア独裁政権への思惑もまた国により異なり、たぶんもうしばらくはイスラム国は壊滅しそうにない。そんな中で、イスラム国の支配地域と直接対峙するクルド人勢力が奮戦しており、高橋教授はクルド人の動きに注目したいと・・・

クルド人はシリア、イラク、トルコ、イランに分断されて暮らし、国家を持てない民族としては最大の人口を有する人たち。
実は私もこのイスラム国が殲滅した跡地には、奮戦の成果として念願のクルド人国家ができるなんてことは無いものだろうか(それが無理ならたとえ国境を挟んだ自治領連合国であってもと・・・)、もとはと言えばサイクス・ピコ協定で分断された民族なのだから、百年の苦難を強いた今、仏・英・ロは罪滅ぼしとしてクルド人国家の樹立に協力してもいいんじゃないか・・・などと夢想しているのですが・・・

ともあれ、日頃断片的に流れるニュースだけでは良く理解できない中東、そしてイスラム国の実情が多少なりとも理解できたような気がする有難い講演と一冊の本でした。
by C_MANN3 | 2017-01-14 00:00 | Comments(0)

◇原発事故から丸五年の節目を迎えて

【2016.3.11】 今日で原発事故から丸五年が経過しました。日本のエネルギー事情はこの五年間で年を追うごとに大きく変化してきましたが、それは原発がほぼ動かない中でも社会は回っていけるということを実証し続けた、日本の誇るべき適応力の姿でもあります。
必要とする発電設備の容量は年間のピークを迎える7~8月の最大電力によって決まりますが、下の図表に示すようにその値を7月の最大電力の年次推移で見ると、震災前のH22年を基準にして既に15%(東京電力に至っては20%強)も低減されていることが解ります。

b0050634_21453745.jpg最大電力の低減は日内のピークを直接下げる手段と、ベースを下げる間接的な手段によって達成されますが、自家消費分のソーラー、ピークカット自家発電、ガスヒーポン空調等の普及が日内のピークを下げることに貢献しているようであり、昼下がりのピークは以前に比べると格段になめらかになっています。また大口需要を中心とした新電力への乗り換えの加速もベースを下げる形で旧電力会社の必要最大電力を下げることに寄与してるはずです。
そうしたことの結果として震災前を基準にすると比率で15%、絶対値としては10電力合計で2600万kWの最大電力減となるに至っているのですが、これは既に原発26基(点検停止の稼働率を考慮すると30基)分に相当する発電設備が削減可能な(というか余力になっている)ところまで来ていることを示すものです。

b0050634_1441750.jpgなおFITで全量買い取りとなる大規模ソーラーがついに2000万kWを越えましたが、これは電力需要の削減には寄与せずFITを介して電力会社の供給力となり、日中の最大電力への対応力を増大させています。

このソーラーの2000万kWという値は前述の夏の最大電力の13%に相当するものです。上の図はとある電力会社の7月の電力の日内負荷パターンにその13%相当のソーラー発電の効果を組み合わせた概念図ですが、青線の見かけ上の日内電力負荷に対して、ソーラー分を減じた赤鎖線のラインが実際に電力会社が火力、水力等で確保しなければならない電力であることを示したものです。結果として、日内の最大値はかつてのように青マルの午後の2~4時ではなく、赤マルの夕刻の19~20時に一段低い値となって移動しており、この青マルと赤マルの落差分が電力会社が確保すべき最大設備を削減できるソーラー効果となりますが、これを全電力会社で合計すると800~1000万kW、すなわち原発8~10基分程度になっていることが窺えます。

いずれにせよ大手(旧)電力の実質的な日負荷パターンは絶対値もプロポーションも様変わりし、もはや原発が無いとピークか乗り切れないといった状況ではなくなりました。また火力代替では燃料コスト増で経営が成り立たないといった話も降って湧いた燃料価格の暴落で大きく軽減され、各電力会社がそろって黒字になる有様です。

にもかかわらずここにきて、安全審査の終わった原発が川内、高浜と動き始めています。このまま20基を超える審査待ちの原発が次々と動き始めれば日本の原発依存はもとの黙阿弥ではないか・・・そんな暗澹たる気分になりかけていたところにこのタイミングで出てきた高浜原発の稼働停止の仮処分決定で、なんと一旦動き始めていたものを含めて2基が停止に。こんなこともあり得るんだ、諦めるのはまだ早い・・・そんなことを思いつつ迎えた5年目の節目となりました。

確かに安全審査には20基を超える原発がその合格を待っている。しかし一方でそれを上回る稼働差し止めの訴訟も判決を待っていて、たとえ一時だとしても都度ブレーキはかかる。審査が進むにつれ、その安全対策費も巨額な物として立ちはだかっている・・・やはりこの数年でバタバタと10基を大きく上回って再稼働し始めるといったことには多分ならない。
そしてそのタイムラグの1年1年で日本のエネルギー事情はさらに変わる。4月からはついに小口電力の自由化が始まり、その先には2020年の発送電分離が迫っている。この5年間で地道に仕込まれてきたLNGや石炭の大規模高効率火力発電所が発電を開始し、シェールガスを始めとする低価格の燃料調達も動き始め、その多くが新電力の戦力となっていくことで、旧電力への依存は大きく減じ始める・・・一部の原発再稼働ありきの電力会社を除けば、もはや原発はコストカットの切り札というよりは足手まといになりつつあるのかもしれない。

ともあれ急速に変化するエネルギー事情を背景に原発再稼働の圧力と阻止のせめぎ合いの中で、いずれは脱原発に向かうのだとしても、その途中の過渡期最大稼働数が10基を大きくは超えないことを願うばかりです。そしてそれが、後始末もままならない未曽有の大惨事を引き起こし、幾多の先進国を脱原発に舵を切らせてしまった日本の自省を込めた節度、矜持というものです。 (6/1 ソーラーに関して一部訂正)
by C_MANN3 | 2017-01-10 00:00 | Comments(0)

◇ロシア、クリミアを編入・・・そしてユーラシア主義

【2014.3.19記】 米国やEUの非難、制裁決議の中、ロシアがまさかのクリミア編入に突入しました。

強い軍事的威圧の中とはいえ、クリミア自治共和国内限定の国民投票、クリミアの共和国としての独立宣言、それを受けてのロシアの国家承認と編入への手続き開始・・・ことは一挙に、白昼堂々と、しかもほとんど流血も伴わず進んでしまいました。

米国やEUは制裁強化を進めようとはしていますが足並みはそろわず、ロシアがウクライナ本体への侵攻でもしない限り、ことはこのまま既成事実となってしまいそうです。

時代はもう21世紀だというのに、今もなお、こんなことが起こり得るんですね。“圧倒的な強い力と強い意志”が機を見て動けばこれからもこんなことは起こり得る・・・

クリミアでもモスクワでも国民が沸きかえる中、プーチンは“クリミア住民とロシア国民の強い支持に応えた”と高らかに宣言。

ただ、“民族の民意に応える”という言葉は気高いですが…それはロシアに回帰する場合にのみであり、チェチェンのように離反しようとする民意には容赦なく厳しい。そうした矛盾を平然と抱えて突き進む限り、まだまだいろんなことが起こりそうですよね。

----------------

【2014.4.9追記】・・・「ユーラシア主義とは何か」・・・

 
クリミアのニュースが下火になったのでこれで小康状態かと思ったら、ウクライナ東部が騒然としてきました。
そんな中、「読むなら今でしょ」と、以前から気になっていながら手つかずだった一冊の本を読み始めています。

題して「ユーラシア主義とは何か」、浜由樹子著、成文社で2010年の刊。
ユーラシア主義とは1920年代、ヨーロッパ由来の共産主義により樹立したソビエト政権を逃れてロシアからヨーロッパに亡命した知識人たちの間で沸き起こったムーブメントなのですが、その主題は“ロシアはヨーロッパなのかアジアなのか”、広大な版図と多民族で構成されるがゆえに“多様性と一体性”が望まれる本来のロシアは、何をよりどころに、何を目指して、どうふるまうべきなのかが篤い争点に。

だがその運動は祖国の大勢に影響を及ぼすことも無く、やがて第二次大戦への突入でいったんは消滅していたのですが、ソ連邦の崩壊で再び自問自答せざるを得ない時代になったのだと・・・


以下はそんな本を眺めながら思うたわごとですが・・・

ゴルバチョフの意向を越えて一挙に崩壊したソ連邦、歯止めになるはずだったCISも機能しないまま雪崩を打つようにヨーロッパになびいて行く連邦構成諸国を、只々見送るしかなかったロシア。以来20年余を経て国力を取り戻したロシアが今うごめき始めている。

b0050634_14313831.jpg大国の強引な覇権主義のようにも見えるが、プーチンの胸中にうごめくものはそれだけでもない、ユーラシア主義の自問自答から生まれる新たな精神的支柱を持ったロシアの再構築なのかもしれません。
ですがユーラシア主義の命題の一つ“民族の多様性(の尊重)と一体性(の確保)”は本来矛盾も抱え込んでいる概念。ひとつには多民族の精神的支柱であったいろんな宗教を一旦カッコでくくり、“新たな新興宗教であった共産主義”を押し付けることでソ連邦は成り立っていた面があるが、それが崩壊した今、その新たな精神的な支柱としてロシア正教色を強めるならイスラム色の強い地域との軋轢が強まるのは自然なこと。そして何より多様性は尊重はするが離反は許せないとなると軋轢はさらに強まる。

そして一方のヨーロッパも次々と増えるEU加盟申請国を前に抱え込む経済格差だけでなく、さらにはトルコのようなイスラム圏の国迄もが加入するとなると・・・“ヨーロッパとは何か”を考えざるを得ない状況にあり、ここでも命題は域内の“民族の多様性(の尊重)と一体性(の確保)”、そしてそれをなしうる限界はということになりそうです。

“民族の多様性(の尊重)と一体性(の確保)”・・・そういえばそれは中国にも当てはまる悩みのはず。21世紀は同じ悩みを背後に抱えながら同病相哀れむはずの勢力圏同士が角を突き合わせる、奇妙な世紀なのかもしれません。
by C_MANN3 | 2017-01-08 00:00 | Comments(0)

◇余震、汚染、電力不足・・・

[2011.3.25掲載]  大地震から2週間たってなお、先ほどもM6を超える余震のニュースが流れていましたが、被災地の皆様の大変な状況に追い打ちをかけるかのように繰り返す寒波、広がる放射能汚染・・・せめて天候だけでも早く穏やかになればとお祈りするばかりです。


▼出口の見えない福島第一発電所・・・

今回の大地震では原発のダメージが困難をさらに深刻なものにしていますが、原子炉の冷却停止は一進一退。やっと峠を越えたかに見えていたのですが復旧作業での被ばく、野菜汚染、飲料水汚染、そして土壌汚染と益々思わしくない状況となりつつあります。

それにしても福島第一発電所では、効き目のない対策が1個ずつ小出しにされている感じでどんどん状況が悪くなっていく感じも。

いろんな展開を想定して第2弾、3弾の策が並行手配されているといった“司令塔存在”の気配がない。
海外を含めて心配する周りからの技術支援や機材の提供を断ったという話は論外ですが、刻々とあらわになる事態を前にして明日あさっての状態を推し量り、必要な機材や投入のタイミングを想起する人、それに合意する人、執行する人・・・そうした人たちの連携の歯車が回っている感じがしない。

ことの発端は自然災害だったとしても、どうやらこの不可思議な展開の顛末は人災の様相が濃くなりつつある・・・
天災のようでいて人災、高度な技術マターのようでいて組織心理の問題が潜んでいそう。これでは危険を冒して奮戦している現場の人にも、広がる放射能汚染の中で逃げ場のない市民にも展望が開けない。

こうした背後に隠れていそうなものは、いずれ腕利きのルポライターやドキュメンタリー作家によってその経緯が露わになる日が来る。奥の院の当事者の方達にはそうしたドキュメントで名前が出されても恥じることの無い判断や采配をお願いしたいですよね。

市民の側は二転三転する記者会見と表に出る現象だけをただひたすら見守り、一日も早く事態が好転することを祈るしかないのですから・・・


▼加えて繰り返される東京電力の計画停電・・・

「明日の朝から実施します」と通告されて突然始まった計画輪番停電・・・交通信号、IP電話、自宅救命医療器・・・すべてを強制停止させる今回の方式は数日間はやもう得ないとしてもまずいですよね。こんなことは続けられないし方法は他にもあるはず。

とは言うものの繰り返して襲う寒波、立ち上がらない発電所を背景に計画輪番停電はスタートし、日一日と回を重ねるごとに予想通りの弊害が浮き彫りに・・・

だったらせめて東京電力は需給のひっ迫具合をリアルタイムでWeb公開してほしい・・・などとTwitterで咆えていたらなんとそれが始まりました。

30分刻みで刻々の需要と発電余力、そして前週同曜日の推移のグラフを期待していたのですが、結果は一時間刻みで対比のグラフは昨日分と前年相当日。
気温も何曜日かも判らない前年相当日では参考にはなりにくいのですが、それでも眺めていると本当に節電が必要なタイミングなどが掴める。 (そのグラフはこちらに

そして案の定、朝6時から始める不必要性も顕になり開始時間は9時から、そしてやがて昼からへと変更に。やはり「見える化」は見るほう、見せるほう双方に合理性を促すといった効果があるようです。(2011.3.25)
by C_MANN3 | 2017-01-06 19:53 | Comments(0)

◇叡智の源、地中海世界ふたたび・・・

[2011.2.13掲載] 別掲の記事でも触れているように、 ユング著「錬金術と無意識の心理学」やフォン・フランツの「ユング思想と錬金術」を拾い読みしていると、ユングの共時性や錬金術といった概念が遠く古代の地中海世界にまで遡る叡智の流れであることがうかがえます。

天文学、錬金術、グノーシス・・・古代地中海世界のギリシャやエジプトに端を発したこれらの叡智がイスラム世界を経て中世のヨーロッパに伝わり、そこでルネッサンスとも大きく関わったのち、ユングの世界に流れ込んでいる。


その叡智の源、地中海世界が今、大きく揺らいでいます。

チュニジアに端を発した民衆の蜂起は遂にエジプトの大統領を辞任に追い込みました。
首都カイロのタハリール広場に集まった群衆の雰囲気は大統領の辞任で一変、険悪で一触即発だった群衆が、子供連れが目立つ歓喜の群衆に・・・
なんか、ベルリンの壁崩壊前後を思わせる風景です。そしてその火の手は中近東にも広がろうとしています。ほんとうにドミノ現象は起こるのかも知れない…

そんな中で先日、とあるテレビ番組では姜尚中(カン サンジュン)さんがこの火の手はさらに中央アジアまで広がり広大なイスラム圏全域が生まれ変わる可能性すらあると・・・そしてそうなったとしてもどの民族も叡智に富み、歴史と誇りを持った民族であり単純にイスラム過激派が席巻することにはならないだろうとも。

数千年の時を経て再びよみがえる気配の地中海、中近東、中央アジア。壮大な歴史のうねりを感じさせてくれます。

ですが、壁崩壊後の東欧がそうであったように、歓喜の後には混沌と困難がまっている。人も国家も民族も・・・変容のプロセスは容易ではないですよね。

変わらなければ未来がない、でも思うように進展しないと揺り戻しが起こる。変わりたい自分と変わりたくない自分、変わりたい勢力と変わりたくない勢力がせめぎ合う時代が10年、20年と続くこともある・・・(2011.2.13)
by C_MANN3 | 2017-01-04 00:00 | Comments(0)

◇「ユーロ」、危機の中の統一通貨・・・

[2010.12.23掲載] ギリシャやアイルランドの財政危機が言われる中、一冊の本が出ています。題して「ユーロ」、副題が“危機の中の統一通貨”、田中素香著の岩波新書1282。

国家主権を尊重し、従って性善説にたった最低限度のルールと制度で統一通貨を擁しているEU。
そのため舵取りは難しく、たとえば統一通貨で統一公定歩合の制度下ではデフレ懸念のドイツを気遣い低めの金利を設定すると物価上昇率の高い南欧諸国では実質マイナス金利となってさらにバブルを誘発する。かといって地域間格差是正の政策や緊急危機対応の融資は国家間の調整に手間取り遅れ気味となる・・・

そんな中、リーマンショックの余波がやっと収まりかけたところで出てきた放漫経営国家ギリシャの財政危機でユーロは危機に瀕していて、学者や評論家からは統一国家無き統一通貨の当然の帰結でありユーロを分断し為替調整機能を復活させるしか出口は無いとの意見も出始めている。

だがこの本の著者は言う。ドイツが飛び出せばマルクは急騰し輸出競争力を失い、南欧が分離すれば通貨は下落し国丸ごとが投機資本の餌食になる。それがわかっているメンバー国は一国として分離を考えている国など無い。

EUはそんな柔な連合体ではない。この数十年間、危機があるたびに結束を強め制度を見直し今に至っている。今回の危機をきっかけにさらに新たな国家財政危機への対応や地域間格差解消の仕組みを身につけるならEUは更に確固たるEUになっていく(そういえば先日、EU版IMFの設立が合意)・・・
そしてロシアや中国が台頭し益々利害の対立があらわになる中ではEUのまとまりは益々重要なのだとも。

ユーロの仕組みや金融危機解説の章は難解ですが、無理やり読み進めるうちに著者の熱気が伝わってくるEU賛歌の本でした。(2010.12.23)

---------------このコーナーはここまでです-----------------
ブログのTOPに戻る

by C_MANN3 | 2017-01-02 00:00 | Comments(0)