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◆「生物と無生物のあいだ」・・・

「生物と無生物のあいだ」、福岡伸一著。講談社現代新書・・・これもまた感動的な本です。

DNA、アミノ酸、たんぱく質・・・そのチェーンが織り成す生体の不思議が次々と解き明かされていくプロセスが、それに携わる研究者の熾烈な生き様とともに描かれているのですが・・・
素人にはなじみにくいはずの専門的な話がみごとな比喩、暗喩とからまって、まるでDNAのように螺旋状に展開されていて読み始めると目が離せなくなってしまいます。

そんな中で・・・窒素を放射性同位元素に置き換えたアミノ酸を三日間、マウスに食べさせた後、切り刻んでそれが体内のどこでどうなっていくのかを追跡する話が出てきます。

体内に入った食物は吸収されエネルギーとして燃焼し、そのほとんどが日をおかず排泄されるはずといった予想は裏切られ・・・何と排泄されたのはホンの30%。残りはすべて予想外に広範囲なあらゆる臓器のたんぱく質に侵入し入れ替わっている。そしてその分、古いたんぱく質が分解されて捨てられているのだと。

人体を含めて生物は放っておくとエントロピー増大の法則で飽和と死滅に向かって突き進むはずのものが、常に外部から負のエントロピー(食物摂取)を取り込み自身を再編成していく。

で、こうしたことから浮かび上がってくる生命感ということになるのですが・・・

生命とは代謝の持続的な変化であり、この変化こそが生命の姿。著者はこの絶え間なく壊されながら再構成される生体組織(の秩序)を「動的平衡」と呼んでいるのですが、秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない、生命とは動的平衡にある流れであると・・・
そこにあたかも肉体があるかのように見えるが実はそれは流れの中で渦巻くよどみのようなものなのだとも・・・

なんか・・・読んでいると方丈記を思い出してしまいました。
行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまることなし・・・まるでそっくりなんですよね。

新鮮で刺激的なフレーズが満載ですが、こうした話を会社組織や組織心理の新陳代謝に擬えて読むとまた違った風景になるのかもしれませんね。(2009.6.23)
by C_MANN3 | 2012-08-04 00:00 | Comments(0)
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