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◆さらに続く進化論への好奇心・・・

好奇心の趣くままに、さらに進化論の本を漁り続けています。どの本も読み進めるうちに新たな視界が開ける思いの感動があります。で、そんな本を何冊か・・・


▼「カンブリア爆発の謎」、宇佐美義之著、技術評論社

5億4200万年前、爆発の名にふさわしく造形のバリエーションをを競うかのように奇妙な形をした生物が一斉に出現したカンブリア紀。多細胞生物が固い組織を獲得して多様化した結果でありリン酸塩を多く含む地層から発見されるとのことですが、こうした爆発的な進化はこの時代だけのものでもなく、この瞬間に始まったものでもない…この進化の準備はもっと以前から始まっていたのだと。

まずは15億年前にビーズの糸として多細胞生物が出現し、7億年前の地球全体が氷河に覆われる時代を経て、6.3~5.4億年前のエディアカラ期に生物は一斉に多様化を始める。そしてその後の再度の氷河期でいったんリセットされたのち、カンブリア爆発の時代を迎えた。だがそれは形の変化であって遺伝子レベルでの準備はもっと以前の9億年前ごろに始まっていたとも。

▼「生命の起源」、パリティ編集委員会編、丸善

この本は物理学雑誌パリティの何冊かの特集記事を編集したもの。
第2章ではよく話題になる、メタンやアンモニアに火花放電をかけるとアミノ酸ができるといった疑似原始地球大気実験や、40億年前の原始スープが充満する海底の熱水噴出孔を模した実験などが紹介されています。

そして第6章では我々の共通の祖先LUCA、そしてそこから真核生物が生まれた不思議について・・・以下、章を追って生命を持つ太陽系外惑星を探しつつけている話、さらには数理学的な実験で自己複製機能を持った生命は作れるかといった話が続きます。
一部難解な章もありますが、驚くほど多様な分野の方々が物質や生命の起源に迫りつつある様子が窺えます。

▼「大量絶滅がもたらす進化」、金子隆一著、ソフトバンク・クリエイティブ

この本も衝撃的です。劇的な進化にはその手前の大量絶滅が必須。大量絶滅の中でわずかに生き残った者が敵のいない自由な空間で新たな環境に適応することで進化が起こるのだと。そして大量絶滅は隕石といった偶然の産物だけではなく、マントルの対流に起因する大陸の集合離散、それに伴う海進、海退、気象変化といった現象により周期的に繰り返されてきた現象なのだとも。

ところでこの本では今西理論を引き合いに、生物というのはすみ分けて均衡するもの、あえて戦いを挑んで自己の勢力を広げることはむしろまれ、周りの大量絶滅で奔放に手足を伸ばせる空間を得てこそ進化は可能といった表現も見られるのですが・・・この話はたとえば“会社組織の中での新興勢力の台頭”といった話にオーバーラップさせてみても、なんか示唆的ですよね。(2011.4.22)

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他にも下記の本の紹介記事を別掲しています。

   ◆地球の歴史・・・鎌田浩毅著、中公新書2398~2400、2017年の刊   
   ◆生命 最初の30億年・・・アンドルー・H・ノース著、紀伊国屋書店、2005年刊
   ◆エピジェネティクス・・・仲野徹著、岩波新書1484、2014年刊
   ◆破壊する創造者・・・フランク・ライアン著、早川書房2011刊

by c_mann3 | 2012-08-04 00:00 | Comments(0)
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