◆創造性:等価変換論

アナロジーは創造性を支える重要な基盤の一つであり、ジェネプロアモデルでもアナロジーは“生成的(generative)認知過程を担う要素のひとつとして位置づけられています。

このアナロジーをベースにした創造性理論の代表格として、市川亀久彌先生の提唱した等価変換論があげられます。

一見新しく創造されたかに見えるいろんなものも探してみるとそれとそっくりの何らかの先行モデルが見つかるといったことから、逆に積極的に、新しい未知の課題に挑戦する際、既存既知のものをベースにアナロジー変換していくことで新しいものを捻出するというのが等価変換論。

アナロジーそのものについては前掲で紹介した東京理科大の方のHPでわかりやすく解説されていますが、実際に創造に活用する際は、結果論としてのアナロジーだけでは済まず、何かを切り捨て、何かを付け加えなければ使えるものにはならないこともあり、提唱者の市川先生は単なるアナロジーといって片付けられることを嫌っておられました。

等価変換論は文章で表現しようとするともう一つピンときませんが、下記のホームページを見ていただければイメージがはっきりするのではと思います。いずれも市川先生の著作、「創造性の科学」NHK出版(1970)をベースにしたものです。

まずは、大阪学院大学 中川徹先生の、
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/Ichikawa010918/IchikawaET010918.html

もうひとつは、千葉県御在住のどなたかのもの、
http://www2.bii.ne.jp/~manda39/2tieF/4aideaF/ett.html#ettAn

いろいろな創造性理論とか技法論がありますが、個人的には一番のお気に入りのものです。
この先生がかつて(1970年前後に)開設されていたセミナーはユニークでした。

週一回、丸一日の半年コース。午前中は市川先生を中心にした創造性理論とか技術発達論の連続講義、昼からは毎回講師が変わるアラカルトコース。
メーカーの技術者、新製品で名をはせた中小企業の熱血社長、画家・・・いろんな方が午前中の講義にはお構いなく実践と成功体験に基ずく創造性の持論を展開するといった編成でした。一番印象的だったのは、ある画家が、真白なキャンバスから一幅の絵画を仕上げるまでのプロセスをカメラに収めて紹介されたもの。油絵なので上塗りすると色も形もどんどん変化していくのですが、その過程での御自身の心境を克明に解説され、創造プロセスに立ち向かう“人”のこころのゆらぎ、迷いと収斂といったことが垣間見える感動的なものでした。

いろんな畑でいろんな人がそれぞれの切り口で創造に挑んでいる。一見互いに無関係なようでいて、続けて見ていると背後に潜む共通項が浮かび上がってくる。
発明されるものや作品自体が何らかの先行品と類似性があるといったことだけでなく、創造行為そのものにもジャンルを超えて共通の成功要因、成功手順といったものがある感じがし始めます。

次々と熱く繰り広げられる体験談をシャワーのように浴び続けることでこちらの体にも熱いものがすこしずつ染み込んでくる・・・これがこのカリキュラムの狙いだったのかも知れません。

やがて時代を経て内橋克人さんの『匠の時代』シリーズとか、山根一眞さんの『メタルカラーの時代』シリーズ、最近ではNHKの『プロジェクトX』といったいろんな畑の創造物語のオムニバス巨編が出現し、私たちは創造現場の感動を擬似的にしろ追体験できるようになりました。
が、今にして思うとこの創造性セミナーはそれよりはるか以前の時代にこうしたオムニバス巨編がもつ効果を狙った先取り的な企画ではなかったか・・・などと思うことがあります。

たくさんの感動を吸収して自分の体温を変えていく・・・感動と理論を車の両輪のごとくバランスよく身につけていく・・・これが創造性を高めるための要件ではないか・・・

創造性を理論として扱うと抜け落ちやすい「感動」。“飛ぶ鳥を見て感動し、ならば私もと羽根をつけて崖から飛び降り怪我をした発明家がいました”なんていう例を持ち出すまでもなく、感動したからといって即自分が再演できるわけではありませんが、スポーツで言うイメージトレーニング的な効果は確実にあるのではと思っています。(2005.2.6)
by C_MANN3 | 2009-10-12 00:00 | 組織心理学の心象風景 | Comments(0)
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