組織と創造性:癒し系企業の未来

(2002/11/24記)昨日の朝日新聞、be on Saturday で田中耕一さんの勤める島津の社長や社風が大きく紹介されていましたね。
読めば読むほど、田中さんだけでなく、会社も“癒し系企業”といった感じを強くしています。

社長ご自身も変わったご経歴のようで・・・まず防衛庁、次に日本航空機製造でYS11の敏腕セールスマンを経て島津に来た時は、まるでお公家さんの世界に野武士が一人迷い込んだ感じだったとか。
研究開発の3割は未来に向けるが特にノルマや期限は求めないとか・・・社長ご自身は文系出身で、研究の良否は担当者の目を見て判断するとのこと。

この中で特に興味を引くのが、コストダウンをして大量生産するのが苦手というか・・・そういう気持ちがないということ。

いろいろ考えて見ますと多くの企業が、週刊誌のように頻繁に低コストで新機軸の新製品を出し、大量生産、大量販売することで社員をリングの中を走り続けるモルモット状態に追い込んでいく・・・
すべてのエネルギーが癒し系とは程遠い独特の方向に収斂し、まるで魔法に掛かったようにそこから抜け出すことができなくなっている。

ですが、ほかに道がないわけではない・・・それが技術的に高度で高額な商品を非量産システムで世に出し続ける、グローバル・ニッチ・トップ戦略なのかもしれません。


最近続く企業の不祥事で決まったようにいわれる言葉、「組織ぐるみの隠蔽体質」。一方の島津に感じることは・・・組織ぐるみの温存体質。
実はさすがの島津さんでも、田中さんがもっと急ぐ他のプロジェクトに移されそうな気配があったとか・・・
それを察したさる上司が、二回にわたって田中さんを英国の研究子会社に配転し、業務が継続できるようにした・・・

厳しい経済情勢の中で多くの会社と同じように赤字を抱えながら・・・それでも何か古くから引き継いできた風土めいたものを組織ぐるみで温存しようとしている企業・・・

海外の子会社まで使っての異才の温存作戦、見る目を持った上司もノーベル賞ものかもしれません。  
 
世相を近代的な合理主義で乗り切り、風土改革と称して何かを切り捨てることで輝かしい成長を確保する会社にもすばらしいものがありますが、一方においてこうした社風を多少の犠牲は覚悟の上で温存しようとする企業にも未来があってほしいと思わずにはいられません。キーワードは、非量産、グローバル・ニッチ・トップ、そして風土改革は慎重にということかも。(2005.2.8)
by C_MANN3 | 2009-08-04 00:00 | 組織心理学の心象風景 | Comments(0)
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