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◆組織の文化と制度:生成と変容

海で泳いでいると、あるとき突然はっと肌で感じるほどに水温の異なる層を感じるときがあります。一様に見える海水も水面下では温度や濃度の異なる水流が渦巻いていることを感じる一瞬です。

組織の中で、いつもともに仕事をしていて分かり合えている筈の職場で、ちょっと話題や切り口を変えたとき、ふっと通じなくなる瞬間を感じることがあります。表面的には均質に見える組織の中でも、コーヒーにたらしたミルクが溶けることなく尾を引く軌跡のように、色々な価値観や文化が交じり合うことなく層を成して渦巻いていることを感じる一瞬です。

客観的事実としての状況や時間を共有し、日常ツーカーで通じ合えているはずの組織で何かの瞬間垣間見える異質な感じ・・・組織の深層には何かが漂っている・・・そのひとつが企業文化なのかもしれません。

ということで、しばらく「企業組織の文化と制度」について、雑感を書き連ねたいのですが、まずは、企業文化の生成と変容・・・架空の組織の物語からその推移をたどると・・・

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突然現れたさるベンチャー企業がユニークな商品を引っさげてデビュー。商品がユニークなだけでなく、社長の発想も企業の運営もユニークで独特のカルチャーを持った企業として急成長を遂げていく。

やがて社員の数も急増しアイコンタクトだけでは行き届かなくなり自身の経営風土を定着させるべく制度化をはじめる。ですが、ユニークな風土を正確に制度に翻訳するのは至難の技。ということで、コンサルタントとかを雇って制度の整備を始めると外部導入の制度に潜む異質なカルチャー。

さらに組織が大きくなり、研究開発、製造、販売と組織を機能分業し始めると・・・それぞれの職能が持つ固有のカルチャーが忍び寄る。

さらに組織は大きくなり、大量中途採用、業務提携、企業吸収、合併なんかを始めると相手企業のカルチャーや社会通念としてのカルチャーが流れ込んでくる・・・だかそうしたものをすべて覆い隠し続けるカリスマ社長の強力なリーダーシップ。

しかしいつの日かカリスマ創業者が引退するころになると、長年にわたって忍び込み潜伏していた種々のカルチャーが一挙に表面化し、いろんなものが渦巻く組織となる。

いずれ業績も低迷期を迎えることとなり、これではいけないと、ミッションマネジメントの導入などといって文化の再構築を図ろうとするがすでに簡単に合意できるほどに核となるものはなくなっている・・・で、企業の歴史を紐解いて自己のアイデンティティを手間隙かけて模索する・・・なんてことになるのでしょうか。

ユニークな文化が風化したからといって人の集合体である組織で文化が消滅するわけではない。組織は社会の中で細胞膜に守られたひとつのセル・・・細胞膜を突き抜けて浸透してくる社会や業界のカルチャーが、かつてユニークであったものに置き換わっていくだけのこと・・・

企業文化の創生、変質、風化、再構築は果てしなく社史を塗り替えていくパワーソースなのかもしれません(2005.2.21)


by c_mann3 | 2010-08-18 00:00 | Comments(0)
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