◆ひずみ:マクナマラの数理学的意思決定

論理的、数理的な思考をすることで思い込みや誤謬を排した正しい結論が期待できるはずなのですが・・・


マクナラマ、この方は、近代アメリカにおいてもっとも「正しく思考し・・・」かつ、実行に移すことができた人かもしれません。
ハーバードビジネススクール出身、フォードの社長を経て、ケネディ政権の国防長官としてベトナム戦争を統括、その後世界銀行総裁となった輝かしい経歴の方です。
ORの専門家として経営、軍事戦略に直感、山勘を廃し、数理科学的な手法を導入することで、一時代を画した方ですが、さすがに要所、要所に味わい深いエピソードを残しています。

● まずはフォード社長時代
「晴れた日にはGMが見える」・・・だったと思うのですが・・・と題したフォードのドキュメンタリー小説で紹介されている彼の商品企画の指示は、全長**m、重量**トン、**馬力のエンジンを積んだトラックを年間***万台の規模で生産販売のこと、これでシェアは**%のはず!・・・といったもの。デザインコンセプトも、商品戦略もノーコメント。おそらくあらゆるデータを投入し、ORで最適計算を行った結果の指示だったのでしょうが・・・受け取った開発部門は???
いろんな場面でこうしたことが続き、フォードは低迷の時期を余儀なくされていきます。

● やがて国防長官としてベトナム戦争を統括
ORはもともと軍事戦略の世界を対象に生まれたものです。水を得た魚とばかりに威力を発揮。すべてが数値化され、地上軍は一人がマシンガンの弾3000発と等価、部隊は初期人員と損耗率のパラメータに集約され、巨大コンピュータで処理されることで資源投入計画として吐き出される。そこにあるのは数字の羅列、ですが現実の現場は後に“地獄の黙示録”と題されるほどの修羅場が延々と続く世界。戦争が終結しても後遺症は今なお残ります。

● そして晩年
回顧録でなんと“ベトナム戦争は間違いだった。すべきではなかった。”と発言し、ベトナムの戦歴のつわもの達を唖然とさせ、米国の軍人遺族の団体を激怒させたのはついこの間のことでした。

彼は真摯に勉学に励み、結果を請われその成果である数理科学的手法を経営、軍事の世界に駆使して直感、思い込みを廃し、正しく思考し、それを行動に移す権力の座に着いた稀有の人材でした。ですがその彼が残したものは累々とした犠牲・・・そして後遺症・・・

「正しく思考すること・・・」、そのよりどころとして誤謬の入りにくい数理科学的な手続き、そして論理性を重んじること・・・それっていったい何なのですか???(2005.5.24)
by c_mann3 | 2010-02-16 00:00 | 組織心理学の心象風景 | Comments(0)
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