◆追記コーナー:読書の履歴◆


◆追記コーナー:読書の履歴◆

最新追記:6/4

【2015.9.8開始】 追記コーナー《読書の履歴》、一冊読むごとに何がしかの痕跡を残していければとこのコーナーを設けました。先ずはメモとして追記していきますが、いずれその中から独立した記事として仕立て直すものもあるかもしれません。
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新たな追記
暇にまかせて読書三昧の日々は続いているのですが、ここにその痕跡を残す作業が滞っています。どうやら今年も時々思い出したようにさかのぼってまとめ書きをすることになりそうです。

◆心がつながるのが怖い H30/3読

 意味深なタイトルに魅せられて思わず手にした本なのですが、題して「心がつながるのが怖い」。イルセ・サン著、ディスカバー21社から2017年の刊。著者はデンマークの女性で、牧師出身の心理療法家とのこと。

人はしばしば人生から目を背けるために自身の心(感情、思考、認知、願望)を鈍らせ、他者との距離を置こうとする、そしてそのためにいろんな戦略を駆使するものだと。
それをフロイトは自己防衛といい、認知療法ではコービングと称しているが、自己防衛は本来、非常事態を切り抜けるための戦略であり、一時的な措置としては役に立つし、悪いものではない。だがその戦略を無意識に採るときに問題が起こる。

自己防衛は自分の内面に対して起こるものと、他者に対して起こるものがあるが、この本の前半ではそうした自己防衛が人生の比較的早い段階で発生し定着してしまう様子が種々の弊害の事例を交えて解説されていきます。そして後半ではそれを自覚し、取り除き、本来の自分に戻っていく道筋がセラピーの場面を例示しながら紹介されていているのですが、平易な文章で語られていて読みやすい一冊です。

ところでこの本では自己防衛から離脱していく手立てとして「短期力動精神療法」と称するセラピーの場面が出てくるのですが、そこでセラピストとクライエントの間で繰り広げられている会話が衝撃的。日ごろよく聞く来談者中心療法的なものとは全く様相が異なり、クライエントの仮面を無理矢理引きはがすといった感じです。
「短期力動精神療法」・・・初めて聞く療法なのですが、もう少し詳しく調べてみる必要がありそうです。

◆心理療法の交差点1,2 H30/4読

前掲の本を読み気になっていた「短期力動療法」とはいかなるものかとネット検索していて出会ったのですが、絶妙な構成で種々の心理療法の違いを浮かび上がらせてくれている本でした。
正に手に取った瞬間、“アッ、もしかしたら私は以前からこんな本が欲しかったのかもしれない”と思ったのですが、題して「心理療法の交差点」、岡昌之さん他の編著で新曜社から2回に分けて発刊されたものです。

2013年刊の第1巻では、精神分析・認知行動療法・家族療法・ナラティヴセラピーが扱われ、2016年刊の第2巻では、短期力動療法・ユング派心理療法・スキーマ療法・ブリーフセラピーが取り上げられています。

両巻ともに3部構成となっていて、第1、2部はそれぞれの領域の臨床療法家が分担執筆しているのですが、まず第1部では各心理療法の概要が解説され、第2部ではいくつかの臨床ケースが取り上げてそのケースごとにそれぞれの療法家が見立てと介入が披露されています。その上でクライマックスの第3部では各心理療法家とこの本の編著者が一堂に会して見立てを披露しつつ大論戦に突入するといったドラマチックな構成となっています。

序章の中にこんなくだりがあります。
今の時代、心理療法を目指す人は大学院で諸派の療法を一通りは習い、ケースに合わせてブレンドするのが多数派とはいうものの、「諸派の統合」などと簡単に言われることには違和感がある。それぞれの流派はよって立つ認識論が異なりその違いは実に根源的なのだと・・・
確かに見立ての段階で既に相当な違いがあるのですが、それが一堂に会するとどうなるか・・・この本の編著者は、この業界は互いに争いを好まない業界だが、それをあえてスクランブル交差点で遭遇させ、激突まがいの異種格闘技になれば何かが浮かび上がってくるのではないかと企画されたとのことで、それは見事に成功しているようです。

一見和気あいあいの論議の中にも頻繁に他派への疑問提示や鋭い突込みがあり、そうした不調和の中で読者は何かを感じ取っていくことになるのですが、従来から何でこんなに種々の心理療法が乱立しているのかといぶかしく思っていた私などにとっては、読み進めるうちに妙に喉のつかえが下りた感じのする本でした。

◆地球の歴史 H29/8読

 題して「地球の歴史」、鎌田浩毅著、2017年の刊。中公新書2398~2400と、新書版とはいえ全3冊から成る、壮大な時空間を扱った本です。
138億年前のビッグバンから話が始まり、46億年前に地球が誕生する。以降、マグマオーシャンの時代を経て、程よく温度が下がった所で海と陸が生まれ、38億年前には生命が誕生し、今に至る。
この地球は数々の奇跡によって成り立っている。水が蒸発もせず凍りもしないほどよい太陽との距離、生命との共進化がもたらしたほどよいCO2濃度や酸素濃度・・・そうした全てが他の惑星とは異なる今の地球を形作っている。この本では今に至る大陸の移動、環境の変化、何度もの全球凍結を経ながらも続いてきた生命の進化・・・そうした地球の歴史が多層的に解説されていて、読み始めると目が離せなくなります。

だがこの本はそれでは終わらない。
2~3億年後には大陸が北極圏近くで一つにまとまることが確実視され、なんとこの大陸は「アメイジア」と名前までが決まっている。10億年後には海水がプレートの移動に巻き込まれてマントルの中に消え、生命が途絶える。そして50億年後にはついに赤色巨星となった太陽に飲み込まれ、その太陽もやがては寿命を迎えて宇宙の塵に戻る。

歴史の本も地球の歴史ともなると扱う時間軸が全く異なる。たかだか数千年の歴史物語のように悠久のロマンなどと言って感傷にふけるわけにもいかず、しかも未来にまで時空間を広げて、最後は宇宙のちりとして霧散するなどといわれると只々ため息が出るのみ・・・ですが大著のわりにはドラマチックで読みやすい本です。

◆パワハラ防止のためのアンガーマネジメント入門 H29/5読◇

 一瞬の怒りの発露がコートの上ならレッドカードで退場となり、職場ではパワハラで糾弾されることにつながる。
ストレス社会ではイライラがつのり怒りの感情が高まることは避けがたいとしても、それを取り返しのつかない一瞬の発露としないためには、怒りのメカニズムを理解し、それを日頃からいかにマネジメントしていくべきかが肝要といった本がたくさん出回っていますが、この本もそうした中の一冊です。
題して「パワハラ防止のためのアンガーマネジメント入門」。小林浩志著、東洋経済新報社、2014年の刊。
怒りとは何なのか・・・その一つとして、周りから見て理解に苦しむほど些細なことで怒りが爆発することがありますが、そうした現象が面白い例えで説明されています。
コップに少しずつ水(ストレス)がたまっていくと、やがて最後にはほんの一滴の水の追加で溢れほとばしる(怒りとして面に出る)。よって対策としては日頃から水をためないこと、たまる水はこまめに抜いておくこと、そして最終的には器を大きくすることなのだと。

また怒りはその人固有の何かが刺激されるとそれがトリガーとなって自動的に発動される二次感情であり、怒り自体は原因ではなく結果としての表れなのだと。
そこでトリガーとなる要因を探ることから話は始まり、順次具体的な手立が説明されていきます。
まずは怒りの場面や巻き起こる感情を記録し、パターンを掴む。その上でこの本ではパターン(怒りの類型)に対応した30個を超える手立てが述べられていきます。それはその瞬間に一呼吸置く、呪文を唱える、タイムアウトして場面を変える、自身が持つコア・ビリーフ(強い、時には強すぎる信念)を変える等々、いずれも認知行動療法を思わせる具体的な手立てであり、これならカウンセラーに頼らずとも自分でもできて、それなりに効果がありそうに思えるものが並んでいます。

怒りは些細な感情の積み重ねで発露し、かつ自分自身の中でも人の間でも連鎖する。職場、街中、家庭とシチュエーションは様々ですが、この本で訓練を積むことで少しでも怒りの連鎖が断ち切れるなら、ストレスも減り、世の中も多少は住みやすくなりそうです。
なおこの本ではタイトルに"パワハラ防止のための"と銘打っているように、パワハラの法規、統計的な実態、そしてレッドカードとなるボーダーライン等が冒頭の1章を割いて詳しく紹介されていて、ビジネスマンにも打ってつけです。

◆巨龍の苦悩 H29/6読◇

 津上俊哉さん。“AIIB”、“一帯一路”と中国が描く巨大構想の国際会議やサミツトが続く中、5/15のBSフジプライムニュースではその中国をどう見るかで居並ぶ論客の議論が白熱していましたが、とりわけこの方のコメントに惹かれるものがあり手にしたのがこの本。

題して◆巨龍の苦悩。津上俊哉著、角川新書で2015年の刊。中国の威圧的な言動のニュースに接すると思わず感情的な理解に走りがちですが、経産省出身で中国との関わりも深い著者の中国を見る目には、変な感情が混じっておらず、しかも見方のフレームがすっきりしているので、大変理解の助けになります。曰く・・・
中国はもうGHPで米国を抜いて世界一になることはない。
逆に(一部の人たちが冷ややかに予想しているように)クラッシュすることも無い。
ただバルブの後始末を迅速に行わなければ数年先はかなりハードランニングに近い状況となる。

そして中国の動きを見る際は以下のフレームを踏まえておくべきなのだと。
中国共産党は右派・改革派と左派・保守派のせめぎ合いとバランスの上に立っている。またその中国共産党には三つの運動法則がある。
 (A)ピンチが来ないと舵を右に切れない。(B)右旋回するときは
 まわりへの補償が必要となる。 
 そして(C)ピンチが去ると左への復元力が働く。
そんな中国の行く末は経済と権力、二つの軸で区切られた四つの象限で考えると判りやすのだと・・・
 ①強くて穏健な中国。②強くて強硬な中国。③弱くて強硬な中国。
 ④弱くて穏健な中国
ここで中国の行く末は④といったことにはなりそうになく、②や③ははた迷惑。だとすると①になることを願うが、そのためには加熱しすぎてバブルめいた経済をいかにして中速の安定成長路線に移行させるかにかかっている。

習近平は中国共産党運動法則の“(A)ピンチ”への共通認識の中で期待の切り札として登場し、その権力基盤を固めつつ種々の施策を打ち出してはいる。だか推進に際しては常に“(B)の周りへの補償”の気遣いが必要。それが時としてはねっ返り左派の言動への容認やリップサービスとして現れ、そのことが周りの国にから見て強硬な印象を与えたりもする。だが改革に本気で取り組んでいることは確か、その邪魔をしないためにも外野席は変に中国のナショナリズムを刺激したりはしないほうが良い・・・等々とあります。

なおこの著者には他にも一連の著作があり、併せて読むとここ数年の中国の流れが更によくつかめます。
    ◆中国停滞の核心   文春新書957、2014年の刊
    ◆中国台頭の終焉   日経プレミア、2013年の刊
ともあれこれからは中国のニュースに接する際は三つの運動法則を思い起こして感情的にはならず、①の強くて穏健な国になって頂き共に栄えることができるよう祈るしかないようです。

◆なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか H28/7読◇

ロバート・C・アレン著、NTT出版、2016年の刊。この本の原題は“グローバル・エコノミック・ヒストリー”、それは歴史の事象を西欧中心史観や一国史観から脱却した視点で見直すことで新たな歴史観を得ることにあると。この本ではその中の争点の一つ、イギリスの産業革命とそれに続いた一連の国々の経済成長の様子が、成功の一般モデルの模索と共に分析されていて味わい深い一冊となっています。

イギリスの産業革命、それは到達した結果がドラスティックなものであったため、後に産業革命とよばれるようになったものではあるが、近年の新たな視点で資料の掘り起こし当時の社会状況や経済成長率の推定を重ねていくと、その実態はもっと緩やかで長期にわたる変化であった。長いプレ工業化社会を経て、技術的にも大発明というよりは職人的な技術改良を積み上げて段階的に工業化が進展したものであり、経済成長率も2%程度の穏やかなもの。

だがその到達点が他国に対して圧倒的に優位な地位であったために、他の周辺国は一斉にその後を追い始める。まずはドイツとアメリカが成功し、続いて帝政ロシアと明治期の日本が一定の成功を収めるに至る。だがその道筋は先行するイギリスの答えを見た上でのキャッチアップ型の産業化であり、機械や技術を導入し制度をまねても条件が整わない国では成功には繋がらなかった。
そこでこの成功、不成功の分析から導き出されたのが以下のキャッチアップの標準モデル。
  ① 内国関税の廃止、インフラ建設、国内市場の統一
  ② 幼稚産業の保護と対外関税の創設
  ③ 通貨の安定と産業資金供給の銀行設立
  ④ 工業労働者育成のための普通教育の普及
そして戦後にこのモデルをさらに徹底した経済成長のモデルが誕生した。それは“ビッグプッシュ型”の近代産業化であり、旧ソ連と日本がこの典型として年率6%を超える成長を五年、十年と続け、世界の先進工業国に躍り出ることとなった。

だがそれにも限界はあった。キャッチアップ型では、キャッチアップを成し遂げもはや目の前に追従するモデルが無くなってしまうと、後は自力で独自に成長のスタイルを模索することになるが、キャッチアップ後は世界の技術フロンティアの拡大スピードに合わせた成長しかできない。そしてそれはせいぜい年率1~2%なのだと・・・
ビッグプッシュ型の特徴は、イギリスが民間活力による自然発生的な模索過程であったのに対して徹底して官主導であること。官が指導モデルを見失い民間の活力に身をゆだねはじめると、その成長率はかつてのイギリスの産業革命時代のそれに回帰してしまうということなのかもしれませんね。

ですがそれよりも気掛かりなのはこれからキャッチアップしようとする国々。先進国がグローバルスタンダードを押し付けてくる現代にあっては四つの条件の、特に②などは確保することが難しそうな気がします。

◆職業としての小説家 H29/10読

 10/5、今年のノーベル賞はカズオ・イシグロさんに決まりました。今年も逃した村上春樹さんへの落胆の声は、イシグロさんが日系人だったため、歓喜の声にかき消されてしまった感があります。
その村上さんが興味深いエッセイを書いておられます。題して「職業としての小説家」、スイッチングパブリッシング社、2015年の刊。書き続け、読まれ続ける小説を書くための、職業人としての生きざまを色々な角度から書いておられます。

 例えば、何をどう書くか・・・テーマとそれを表現する文体の如何がその作家を特徴づけることになるが、深遠なテーマを重い文体で書こうとすると、作家はやがてその重みに耐えられなくなる。そこで村上さんは日常の中の何気ないテーマを繋ぎ合わせ、それを軽いタッチの文体で書く事を目指したと、そしてその文体は(かつてジャズ喫茶を経営していた村上さんらしく)ジャズの軽妙なフィーリングがベースになっているとのこと。

 日常の執筆活動についても特異です。芸術作品を書く作家というとどうしても興に乗れば昼夜書き続けるが、行き詰ると悶々とした日を過ごす、仲間とのサロンを作り夜な夜な飲み歩く等といった勝手なイメージを持ってしまいますが、村上さんは異なる。
同業仲間とは群れず、毎日ランニングを欠かさず、決められたリズムで一定の時間量を書く。構想を組み立てながらひたすら書き、何度も練り直す。そのくだりを読んでいいるとまるで緻密な試行錯誤を繰り返して仕上げていく大工さんか何かの職人のようだと思っていたら、なんとご本人がその様を“とんかち仕事”と称していて思わずニンマリ。
そうして書き終わるとまず奥さんに見てもらう。そこで意見が出たヶ所は意にそう沿わないにかかわらず、必ず筆を加える。だがそうして脱稿し出版社に手渡した後は業界人などの論評には一切構わず、読者のみに身をゆだねるのだと。

 実はこの本、賞についても言及されていて、ノーベル賞を含めて賞を得た人、得なかった人の言を引き合いに出しながら、一過性の賞自体は問題ではない、永く読者に読まれ続けることがすべてなのだと・・・

随所に含蓄のある執筆姿勢や本を世に送り出す際の気遣いの話が並び、タイトルにわざわざ“職業としての~”と銘打っておられる理由がわかる気がする一冊でした。

 
読書の履歴は更に続きますが、後は区分別の別室で! 

現在の各室の収納状況は以下の通りです。

《心理・認知系の部屋》・・・ ◆その島のひとたちは、ひとの話をきかない、 ◆「無境界」・・・自己成長のセラピー論、 ◆レキシコンに潜む文法とダイナミズム、 ◆オープンダイアローグとは何か、 ◆ユングの「哲学の木」、 ◆ユングの「赤の書」

《進化・生命系の部屋》・・・ ◆生命 最初の30億年、 ◆エピジェネティクス、 ◆破壊する創造者

《経済・経済史の部屋》・・・ ◆ポヒュリズムとは何か、 ◆ブレイクアウト・ネーションズ、 ◆善と悪の経済学、 ◆資本主義の終焉と歴史の危機、 ◆問題は英国ではない、EUなのだ、 ◆ウォーラーステイン、 ◆世界システム論講義

《歴史等その他の部屋》・・・ ◆シュメルの世界、 ◆物語 チェコの歴史、 ◆大阪アースダイバー、 ◆中東から世界が崩れる、 ◆イスラム国の野望、 ◆民族という名の宗教、 ◆シルクロードと唐帝国、 ◆多神教と一神教、 ◆古代都市平城京の世界、 ◆道が語る日本古代史/古代道路の謎、 ◆道路の日本史/完全踏査古代の道、 ◆古代飛鳥を歩く、 ◆シルクロードの古代都市、 ◆ジャポンヤ --イブラヒムの明治日本探訪記--、 ◆イブン・バットゥータの世界大旅行、 ◆甦れ、わがロシアよ、 ◆ロシア人しか知らない本当のロシア、 ◆物語 ウクライナの歴史、 ◆歴史の終わり 上・下、 ◆中世シチリア王国、 ◆NHK さかのぼり日本史 ⑦~⑩
全ての部屋をスクロールで一気に見る

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by C_MANN3 | 2016-12-28 00:00 |  ・・・風にまかせて・・・ | Comments(0)
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