人気ブログランキング | 話題のタグを見る

◆2017年夏、最大電力日のソーラー

【2017.12.15】 今頃になって季節外れの夏の話で恐縮ですが・・・各エリアの電力需給の7~9月のデータが出そろった所で、この夏の最大電力日の様子を分析してみました。

▼先ずは最大電力日の抽出

結構手間のかかる地道な作業ですが、各エリアの7~9月の1時間刻みの電力需給データからエリアごとに最大日を抽出しました。結果は、エリアによって最大日の日時は(7月下旬から8月下旬、時間帯は14時台から16時台と)異なるものの抽出された最大値を合計すると、16,001万kW(昨年は15,975万kW)となりました。

▼そしてその日の様子

続いてその日の様子をグラフにしてみると、いろんなことが浮かび上がってきます。各エリア(電力会社)はその最大値に見合った発電設備を確保することになりますが、ソーラーと揚水発電を組み合わせて、その最大値を巧妙に引き下げている。そしてエリアによってはそこに原発が絡んでくる。
九州エリアを例にとると需要曲線の最も高くなるところをソーラーがカバーし、従来なら14時台にあった最大点を16時台にずらせ、かつ最大値としても7.6%(図中A)の低減を果たしている。さらにその新たなピーク点をめがけて揚水発電を稼働させ、合計11.1%(図中A+B)もの最大値のカットをしています。
◆2017年夏、最大電力日のソーラー_b0050634_1882872.jpg

▼そこに横たわる原発

ただよく見ると原発が動いている。最大値を乗り切るためにはベースロードとして必要なのかと思ってよく見るとそれを上回る容量の電力を他エリアへの融通として放出していて、その状況は四国電力でも同じです。下表のように横の関連が見える一覧表を作ってみると、どうやらこれらの原発を回してまで作った融通電力は関西電力に流れている。
◆2017年夏、最大電力日のソーラー_b0050634_2320755.jpg

となると・・・自エリアにとっては原発は必要ないが、他エリアのために稼働させている、つまり日本トータルとしては原発は必要ということなのか・・・
いや、それは解せないと、日本全体の電力事業者が保有する発電設備の統計から原発を除いた値を算出してみると、なんと23,196万kWもあり、単純に計算するとこの容量では日本全体の最大電力合計の1.44倍と超余裕の数値となります。そこでもう少し詳しく見てみることに・・・

▼では日本の夏の設備余裕はいかほどなのか

上掲の最大電力日のグラフを見て頂きたいのですが、まず前述の設備の内ソーラーは昼の14時近辺ではほぼ定格の威力を発揮しているものの、最大電力を担う効果としては図のAの部分に相当と考えるのが妥当。また別の統計によると電力事業者の発電電力はその5%程度が自家消費に回っているとのことで、その分も差し引く必要があります。それを踏まえると夏のピークの設備余裕は、
「原発を除いた設備容量からソーラー、風力を差し引き、更に自家消費の5%も除いたもの」を、「最大電力から図中のAを差し引いた点」で割るのが妥当、
そこで面倒な作業ではありますが、全エリアの“A下がった点の値”を算出しました。結果そのポイントの全国合計は15,054万kWで、ソーラーの効果を示す全国総計のAは5.9%となりました。そしてこの値を使って設備余裕を計算すると、“日本の発電設備は既に夏の最大必要電力の1.40倍もある”ということになります。

毎年夏が来ると各電力会社からは“設備使用率が96%を超えそうなのでもう余裕は無い”といった類の情報が出されてきましたが(実はこれはその日に稼働させている設備の定格出力に対する利用率)、この計算結果によれば設備全体としてはもっと余裕があるということになりそうです。
原発を除いても有り余る電力設備を持ちながら、それでも原発を回そうとする日本・・・あらためてそんな風景が浮かび上がってくる、この夏の最大電力の分析となりました。

by C_MANN3 | 2023-10-17 12:15 | Comments(0)
<< ◆日本の電力構造、この一年の変化 ◆ゴールデンウイークのソーラー >>