◇心理療法の交差点1,2

◆心理療法の交差点1,2 H30/4読

「短期力動療法」とはいかなるものかとネット検索していて出会ったのですが、絶妙な構成で種々の心理療法の違いを浮かび上がらせてくれている本でした。

正に手に取った瞬間、“アッ、もしかしたら私は以前からこんな本が欲しかったのかもしれない”と思ったのですが、題して「心理療法の交差点」、岡昌之さん他の編著で新曜社から2回に分けて発刊されたものです。

2013年刊の第1巻では、精神分析・認知行動療法・家族療法・ナラティヴセラピーが扱われ、2016年刊の第2巻では、短期力動療法・ユング派心理療法・スキーマ療法・ブリーフセラピーが取り上げられています。

両巻ともに3部構成となっていて、第1、2部はそれぞれの領域の臨床療法家が分担執筆しているのですが、まず第1部では各心理療法の概要が解説され、第2部ではいくつかの臨床ケースが取り上げてそのケースごとにそれぞれの療法家が見立てと介入が披露されています。その上でクライマックスの第3部では各心理療法家とこの本の編著者が一堂に会して見立てを披露しつつ大論戦に突入するといったドラマチックな構成となっています。

序章の中にこんなくだりがあります。
今の時代、心理療法を目指す人は大学院で諸派の療法を一通りは習い、ケースに合わせてブレンドするのが多数派とはいうものの、「諸派の統合」などと簡単に言われることには違和感がある。それぞれの流派はよって立つ認識論が異なりその違いは実に根源的なのだと・・・
確かに見立ての段階で既に相当な違いがあるのですが、それが一堂に会するとどうなるか・・・この本の編著者は、この業界は互いに争いを好まない業界だが、それをあえてスクランブル交差点で遭遇させ、激突まがいの異種格闘技になれば何かが浮かび上がってくるのではないかと企画されたとのことで、それは見事に成功しているようです。

一見和気あいあいの論議の中にも頻繁に他派への疑問提示や鋭い突込みがあり、そうした不調和の中で読者は何かを感じ取っていくことになるのですが、従来から何でこんなに種々の心理療法が乱立しているのかといぶかしく思っていた私などにとっては、読み進めるうちに妙に喉のつかえが下りた感じのする本でした。
by C_MANN3 | 2009-01-03 00:00 | 組織心理学の心象風景 | Comments(0)
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