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◆イスラーム戦争の時代

アフガニスタン、イラクと続いた戦争はどれひとつとして決着がつくことなく、今、レバノン・イスラエルへと飛び火しています。
いったん収まったかに見えたアフガニスタンではタリバンが復活しつつあり、アルカイダが動きやすくなりつつあるといったニュースが流れています。
イラクも自衛隊はかろうじて引き揚げましたが雲ゆきは怪しく再び内戦状態に戻りつつあるとか・・・

そして今、英国では航空機テロを計画していたとされる集団が逮捕され、空港は大混乱に陥っています。
今年の六月、ザルカウィの殺害に成功した米国はこれでアルカイダの組織は崩壊に向かうと胸を張りましたが、アルカイダが関与していてもいなくてもジハードの動きは沈静しそうにありません。
よく言われているように既にアルカイダは組織ではなくネット上の共有思想であり、目障りで著名なリーダー格の人たちをたとえ何人か殺害したとしても形のない組織では崩壊のしようがないのかもしれません。


航空機テロ未遂を受けてブッシュは「我が国がイスラム過激派との戦争状態にあることをはっきり思い起こさせた」と談話を発表しました。“イスラム過激派”と“過激派”の三文字がついているためなんとなく耳になじんでしまいますが・・・同じく過激派とくくっているレバノンのヒズボラやパレスチナのハマスは武器を片手にはしていても福祉や医療活動にも邁進し市民の支持を受けて政権の一翼を担う政党でもある。

ヒズボラやハマスをアルカイダと同列に拒否し続けることは“イスラム過激派との戦争”が“イスラムとの戦争”に発展しかねない危険をはらんでいるのかもしれません。


こんなニュースが続く中で一冊の本に遭遇しました。
題して「イスラーム戦争の時代」、副題が“暴力の連鎖をどう解くか”。内藤正典(一橋大)著、この四月、日本放送協会の出版です。
二十数年にわたるイスラム社会への調査研究を背景に、イスラム社会の状況、心情と苦悩といったものが親愛の情を持ってくっきりと描かれています。親愛の情を持って書かれた著作というと公平さや客観性を損なった本といった誤解を受けそうですが無論そうした本ではない。

ですが、イスラムの世界は日ごろから基礎知識にも乏しく、その分偏見に惑わされているかも知れない世界。読み終わった後の知ることの重大さと併せて感じるすっきり感は著者の視線のなせる業なのかもと思わせる一冊でした。

一つ一つの事件ががとんでもないものであることは確かですが、毎日流れる悲惨なニュースが互いの憎悪を増幅しあっていることも確か・・・憎悪増幅の連鎖を断ち切るものは、もしかしたら正確な知識に裏付けられた互いへの畏敬の念と親愛の情なのかもしれません。(2006.8.12)
by C_MANN3 | 2016-02-28 18:00 | Comments(0)
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