◆心理学もいろいろ・・・

友野典男さんの「行動経済学」という本、タイトルがそうであるように経済学のように見えるのですが・・・実は心理学に近い。
経済活動に絞って、人の行動を支配する心理を認知科学的に解明し体系化したものなのですが・・・読めば読むほど不思議な感覚に襲われてしまいます。

種としての“人”の心を扱う学問である心理学もどうやらいろいろ・・・例えばユングなどは心の中でも“さまよえる魂のゆらぎ”といったテーマが取り扱われ時間軸としても人のライフステージのほぼ全域を対象にしていますが、行動経済学が扱う心はもっと瞬間的で表層的なもの(と言ってもその基は種としての人の心の深層に根ざしたものなのですが・・・)。

で、ユングなどでは人の心の在りようというものにはいろいろな状態がありえてそれがエナンティオドロミアとか補償とかいって揺れ動く。それが自然な状態であり、すべての状態は相対化されそのうちのどれかの状態が基軸とか規範といったことではないですよね。

ところが行動経済学はまるで心理学のようだとは言いながらも一方において紛れもなく経済学。行動経済学では人の経済行動における心理的なブレやバイアスの形で人の心の特質が解明されていくのですが・・・
数理的な確率論からみるとこう判断すべきなのだが人はそれとは異なる特徴的な判断をしてしまうといったように、そのブレを測る際に常に経済合理的なものが基準線として持ち出される。

無論、常に数理的で経済合理的な判断をする人などいないと言うのが行動経済学の立場なのですが・・・合理的経済人という仮想的な基準を基に生身の人の持つブレ様が次々と解明され並べたてられていくと・・・規範的なものがなくて全ては揺れ動くなどと言う心理学よりも、人の心が持つ特質がより鮮明に浮かび上がってくる感じがします。

行動経済学で浮かび上がってくる姿は、人によって多少のばらつきはあったとしても種としての人が持つ傾向、特質には確固たるものがある感じがします。少なくともいろいろあって大きく揺れ動くといったイメージではない。

おそらく・・・広大な心の領域をカバーしようとすると、両極の二つの心理学は今後も双方が必要なのでしょうが・・・行動経済学のこの本は、あらためて心理学はいろいろ・・・と思わせてくれる一冊でした。(2006.10.16)
by c_mann3 | 2012-10-10 00:00 | クオリアとか進化論など | Comments(0)
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