中沢新一さんの「対称性人類学」を読み面白かったこともあり・・・人類学といえばレヴィ=ストロースの構造主義・・・という短絡的な発想で久しぶりに構造主義の本を読みたくなってしまいました。
まずは数十年前に読んで感動した記憶のある本、「ピアジェとレヴィ=ストロース」、ハワード・ガードナー著1975年版を引っ張り出して眺めてはみたのですが・・・細かい字で怪しげな内容がぎっしりと詰まった本で、もう一度読もうとすると今の私にはちょっと視力と根気が心配。やっぱり本は若いうちに読みこんでおくことが必要なんでしょうね。 二十代の多感な時期に感動して読み、以来構造主義のファンになったつもりだったのに読み返してみると中身はまったく記憶から消えてしまっている。 もっとも知識は意識の領域から消えてしまったとしても、それは無意識の奥底に沈殿し何かに思いをはせる際のシェマとしては作用しているはず・・・ ---------- で、混沌とした事象の特質を分解し縦軸、横軸をうまく選んでスプレッドシート状にあらわすと混沌の中に潜む共通項(ないし構造)が見えてくる・・・その一例が元素の周期表・・・それは仕事でものを考えるときはいつも図表を作ることからはじめる私の発想と類似・・・などという不遜な理由でファンになってはいたのですが、実は肝心の構造主義の構造って何だ?ってことはよくわからないままでした。 早い話が、どこかの現代思想の解説本でフロイトが構造主義者に区分されていたりするのを見るとますますわからなくなってしまう。 この本、「ピアジェとレヴィ=ストロース」は紛れもなく構造主義を紹介したはずのものなのですが・・・ レヴィ=ストロースが世界を時間の履歴を消去し共時的に理解しようとする構造主義者だとすると、ピアジェは時間軸上の発達過程を扱う構造主義者。勝手な別表現をするとこの二人はシステム指向とプロセス指向といった感じでベクトルがまったく異なる気がするのですが、どちらも構造主義者ということになっている。 とにかく構造主義の輪郭ってわかりにくいですよね。 ところが最近見つけた本、橋爪大三郎さん著、講談社現代新書の「はじめての構造主義」を読んでいて何となく理解できるような気がし始めました。この本はレヴィ=ストロースが構造主義を生み出すに至った過程が軽妙に解説されていて・・・構造主義はヤコーブソン経由のソシュール言語学やモースの贈与論をベースにし、さらには絵画の遠近法とか射影幾何学、位相幾何学といった数学の世界ともつながっている思想なのだとのことです。 遠近法は風景をきわめて正確に描写できるにもかかわらず、描く人の立ち位置で絵が異なってしまう。これが神の目線といった絶対的なものを突き崩す作用をもつことで一人ひとりの個の確立につながっていく。一方において立ち位置を変えると描かれている絵そのものは種々変わるにもかかわらず、いかなる場合でもその風景が持つ固有の特質は保持されており、それが「構造」なのだと・・・ あらゆるものを相対化し絶対的なものを崩壊させる一方で、その背景には普遍的な構造が潜んでいるとの思想は何となくユングの普遍的無意識を連想させるものがあり・・・神話分析と相性がいいといったことにもつながっていくのかもしれませんね。(2007.2.10) ---------- ◆[2009.11.4追記] 今朝の新聞によると101才の誕生日を目前にして、レヴィ=ストロースさんがお亡くなりになったとのこと。最後までご健康で頭脳明晰のままだったそうですが、さすがですよね。 ◆[2010.7.31追記] レヴィ=ストロースさんの代表作のひとつ▼「野生の思考」についての別掲記事を設けました。
by c_mann3
| 2011-11-16 00:00
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