さる大手家電メーカーがいよいよ経営に行き詰まり創業者一族はついに退陣。支援に入っているはずの銀行や外資系ファンドの間で議論されている再建策は・・・もちろん事業の整理統合、撤退、売却と言うことなのでしょうが、撤退、売却は採算の悪い不慣れな事業かと思いきや、競争力があり採算性のよい本業が手っ取り早い売却のターゲットになっているとの報道も・・・
おそらくそんな結末にはならないとは思うのですが、もしそうなれば・・・そうして再建され、残された会社とはいったい何なのかと思いたくなります。 こんなニュースが飛び交う中で一冊の本が出ています。 題して「そもそも株式会社とは」岩田規久男著、ちくま新書646。先月出たばかりの本です。 実は買ったばかりで読むのはこれからなのですが・・・会社は株主のもの、経営陣のもの、従業員のもの・・・いろんな議論が沸騰する中で“どの論も誤解や感情論が多すぎる”というのがこの本の主題のようです。 企業を支配するのは「交換の法則」、「誘因の法則」、「希少性の法則」といった経済原則。この法則が作用する限り、株主主権といっても株主が好きにできる範囲は限られる。それは経営主権論にも、従業員主権論にも当てはまる。いろんな主権を理論として主張するのは勝手だけれども、現実にその主権を一方的に確保しようとするとその原資自体が消滅してしまうといったことのようです。 手っ取り早い話として主権を利益配分の優先権と考えると・・・開発投資や従業員給与を犠牲にして株主配当を求めると早晩市場や従業員に見放され配分の原資そのものが確保できなくなる。開発投資や株主配当を犠牲にして従業員を優遇しても、経営陣がなりふりかまわず我を通しても・・・いずれ同じ結末を迎える。 この本では、1980年代のM&A全盛期のアメリカの状況も紹介されています。 実はアメリカでも資本の巨大化とともに株主が分散し、1980年代の当初には株主主権がほとんど働かなくなっていた。で、経営者は潤沢な余剰金で勝手気ままに多角化路線をつき走り、きわめて資本効率の悪い企業体が続出。そこに目をつけたのが乗っ取り屋買収ファンド。 こうして始まったいくつかの敵対的買収劇を目の当たりにし、バブリィな多角化路線を突っ走っていた各企業の経営者は一挙に防衛的で友好的なM&Aを使った事業の再編成に着手、80年代の10年間で産業の再編成と効率化が一挙に進んだのだと・・・ なんか、この4~5年の日本に類似の話ですが・・・ 結局会社というものはブラックボックス経営で経済合理的なものとの乖離があるレベルを超えるとのっとり屋の餌食になる。対応としては全てを公開しいろいろなステークホルダーの意見が反映され、資源が余すことなく活用され、含み益も隠し損も無い状態を維持することが一番安全な道ということのようです。(2007.4.10)
by c_mann3
| 2010-09-12 00:00
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