同時多発テロから5年、9.11を前後する中でさらにいくつかの本に出会いました。
◆そのひとつは「テロ後、世界はどう変わったか」・・・ 岩波新書770。9.11に関する論説集なのですが・・・その中の一編、大澤真幸著、“文明の外的かつ内的な衝突”が印象的でした。 曰く・・・9.11を起こしたテロリストとそれに反応したアメリカは鏡映関係にあると。イスラム原理主義者の「聖戦」と称するテロを狂信的な蛮行として非難するアメリカがとった行動は、自由と民主主義を守る“聖戦”としての報復攻撃。 そして実は、戦争を聖戦と称して鼓舞しなければ国家への忠誠心が集結できないアメリカ。対して突然国内でテロを繰り広げた原理主義者は鼓舞されずとも何かへの忠誠心から死をいとわない聖戦に突入した人たち。 この事態を目の当たりにしアメリカが自国で求めている忠誠心を上回る忠誠心をもった集団の存在に驚愕、この無意識の驚愕と嫉妬が報復反応を過激なものにしてしまった・・・といった論調なのですが、なるほど、そんな見方もできるのかも知れませんね。 ◆もうひとつは「中東イスラーム民族史」・・・ 副題が“競合するアラブ、イラン、トルコ”。宮田律著、中公新書1858。先月出たばかりの本だけあって1500年も前のイスラーム誕生前後に始まり中東の地に繰り広げられる一大スペクタクルなのですが、つい先月の事件までがシームレスに描かれているところがミソ。ますます混迷の度を増す中近東やイスラーム社会の歴史的背景みたいなものが薄ぼんやりと見えてくる感じです。 せっかくの本なのですが・・・困ったことに基礎となる地名や国名の位置関係も今ひとつ頭に入っていないしイスラーム宗派の違いも分かっていない。何とか国の北東部の何民族などと書かれていてもその向こうが何国でどの宗派の国なのかなんてことをいちいち地図や付図で確認しながらの読書でとにかく骨が折れる・・・ですが911に限らず一連のテロや戦争を理解するためには必須の本、案外秋の夜長に理解に手間取りながら読むにはうってつけの本なのかもしれません。 ------------ ◇ --------------- こんな記事を書いていたころ、相前後して受験校の「世界史」未履修問題が話題になっていました。 「世界史」などは切り捨てた効率第一の受験勉強で、一流大学から一流企業に進みやがては国際舞台に散っていく・・・だがそこには切り捨てたはずの「世界史」が今に尾を引く世界が待っている。英語だけが国際化じゃない・・・やっぱりちょっと、まずいんじゃないかって感じはしますよね。(2006.9.11頃 記) ------------ ◇ --------------- ◆2011.5.2追記・・・9.11から10年を経た今日、米軍の急襲によりオサマ・ビンラディン死すとのニューズが流れました。直接声明を発表するオバマ大統領、グラウンド・ゼロの地で歓喜する米国市民、いろいろな反応を示す中東諸国・・・これを一つの節目として、世界は変化し始めるのでしょうか?要経過観察ですよね。
by c_mann3
| 2016-02-28 14:00
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