◆ラバージの明晰夢・・・

能動夢の周辺で悶々と思いをはせている中で、おもしろい本に出会いました。題して「明晰夢」、スティーブン・ラバージ著、春秋社1998。
なんと言えばいいのか・・・この本では感動的なまでに包括的に夢を解きほぐしてくれています。

明晰夢(LUCID DREAMING)、意味するところは・・・能動夢や能動的想像、アクティブ・イマジネーション等とよく似ているのでしょうが、この本の特徴は夢の解釈や夢を見る技法といったことよりも、夢そのものの神経生理学的な裏づけを重視して書かれていることにあります。

スタンフォード大学の夢研究室で、脳波、眼球運動、筋電図、能の各部位の活性度といったデータを採りながら夢を見ているタイミング、期間、内容を実証的に確認する中で浮かび上がってきた知見が満載。
この本は明晰夢自体が主題の本のはずなのですが、おもしろいことにこの明晰夢を手段として使って夢の解明を行っていること。
明晰夢とは、当人が夢を見ていると自覚しコントロールできる形での夢のことなのですが・・・ある程度訓練するとかなり自在に夢を操作できる(らしい・・・)。で、夢の中で数を数えてもらったり歌を歌ってもらったり、そしてその都度眼球運動のサインを出してもらって外部から観測する。

従来の夢が目覚めた後の本人しかわからない記憶を頼りに議論するしかなかったのに比べるとこの方法なら格段に実証性がますことは確かです。

◆明晰夢と創造性・・・

実は私が能動夢や明晰夢に期待しているものは、心的なものよりも創造性の源泉・・・
ところがうれしいことにこの本では、わざわざ“明晰夢を応用する”と題した章を設け、明晰夢と“意思決定”や“創造的な問題解決”の関わりについて言及してくれています。

そして創造性の事例はなんとメンデレーエフの周期律表。日夜続く研究に疲れ果てて床に就いたある日、彼は「夢の中で全ての元素がぴったり収まっている表を見た」のだと。そしてそれを書きとめたのだが、後々訂正が必要だったのはほんの一ヶ所だけだったとか・・・
    (なお、メンデレーエフの周期律表については▼別掲記事の中でも・・・)

◆さらには胸にグサリとくるこんなフレーズも・・・

実は夢を見るのは人間だけじゃない。人類の祖先である哺乳類はその進化の歴史の中で1億3千年前には既に睡眠の一区間を割き夢を見るという機能を獲得していた。そしてその間は筋肉が弛緩するという外敵に対して無防備な状態(REM睡眠期)を作ってまで見る夢の主要な機能は、脳幹の指令により大脳神経ネットワークの要不要の再編成を一日に一回行なうことで脳を常に最適な状態に保つことにあった。

言ってみればパソコンハードディスクのデフラグのような再編成であり、その過程ではいろんなイメージが現われては消えることを繰り返えす中で必要なものだけが都合よく再収納されていく。
そのイメージフラッシュの大半は意味不明のランダムなものなのだが、その中のごく一部が前頭葉の合理化努力によって意味あるものとして解釈され夢となる。

夢の断片にいろんな解釈を当てはめたり、夢は抑圧されたものの発露だとか、願望充足だとかいろんな思いを重ね合わせるのは勝手だが・・・夢本来の機能はそうしたこととは関係なく哺乳類全般に共通する脳再編成の生理的プロセスなんだと・・・

なんかユングもフロイトも吹っ飛びそうな話ですが、これって夢理解の際には踏まえておくべき重要な側面なのかもしれませんよね。(2007.8.15)
by c_mann3 | 2007-07-14 00:00 | ユングのすそ野の 風景 | Comments(0)
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