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◆ソーラー抑制第3年次、終了


《ソーラー抑制第3年次、春の陣終わる》

【2021.11.1最終更新】 2018年の10月から始まった九州電力のソーラー出力抑制は3巡目の第3年次が終了しすべてのデータが出そろったので、本記事を最終更新しておきます。
結果としてこの1年間の抑制実施日数は63日間となり昨年の85日から大幅な減少となり、肝心のkWhベースの年間ソーラー遺失率も3.8%と昨年より良好な結果となっています。

◆ソーラー抑制第3年次、終了_b0050634_19393714.jpg 九州エリアのこの一年間の毎月の推移は右図に示す通りです。

 最初の数か月は原発の稼働基数が昨年を下回っていたことが(図中のD)功を奏し、抑制量はkWhベースの抑制率(B)でも、抑制日数(C)でも昨年を下回る推移でしたが、原発が4基のフル稼働となって以降は月間の抑制率(B)が昨年を上回る推移となりました。
 
今年もこの一年間でソーラーが約60万kW増加し、エリア需要に対するソーラー比率も14.7%(昨年は13.7%)と伸長している中で抑制実施日数大きく抑えられたのは遠隔制御を活用した制御方式の進化(ブロック別輪番on/off制御から、必要時間帯のみの抑制率制御へ)もあってのことと思われます。

 ただ各月の需要に対するソーラー比率(図中のA)は毎月の日射量の平年対比の変化により年によって大きくばらつくため、参考までに気象庁の日照時間の変化を合わせて図示しております。

 なお年間値の推移は下表に示す通りとなっており、一番肝心な通年のkWh抑制率(遺失率)は直近の1年間で3.8%と昨年を下回る値を示しています。
◆ソーラー抑制第3年次、終了_b0050634_19431595.jpg

《ソーラー抑制第3年次、秋の陣終わる》

【2020.12.1記】 2018年の10月から始まった九州電力のソーラー抑制も既に第3年次、3巡目となり迎えた秋の陣のハイシーズン。この1年間で九州エリアのソーラー設備はさらに90万kW上乗せされ状況としては大変だったはずなのですが、この10、11月での抑制日数はたった1日(昨年の同月は12日)で秋の陣を終えてしまいました。
その様子が窺えればと昨年と今年の抑制日の日内変化をグラフにしてみました。 

◆ソーラー抑制第3年次、終了_b0050634_21244448.jpg
 この図は昨年の10/13(日)と今年の10/25(日)の1日の様子を並べたものですが、まず塗りつぶしの面グラフが下から原発、水力、火力、それに包み込まれるようにして抑制された後のソーラー(橙色)、そしてその上がソーラーの抑制量(茶色)を示しています。また線グラフは下からまずエリア需要の規模(赤)、赤点線がそれに揚水動力を加えたもの、さらにそれに域外への送出電力を加えたものが黒点線の総発電電力を示しています。
 こうしてみると(緑の線で示した)実ソーラーの発電量は間違いなく100万kW増え、抑制分を加えた実ソーラーのエリア需要電力に対する比も74%から94%に迫るまで上昇しているのですが、ほぼ同程度の抑制率でおさまっている。これはひとえに原発の稼働基数の違い(昨年は3基で今年は1基)が功を奏したものと思われます。

 さて次は来年の春の陣ですが、実はこれから順次原発が再起動する予定であり、原発が4基フル稼働する中で迎えるゴールデンウィーク近辺でのソーラー抑制がどの程度となるのかが、気になるところではあります。

 なお昨年までの様子はこちらにまとめておりますので併せてご参照のほどを
       ⇒ http://cmann3.exblog.jp/29994100

# by C_MANN3 | 2023-10-20 12:01 | Comments(0)

◆更新;ソーラー抑制第2年次の今・・・

【2020.11.1最終更新】
九電のソーラー抑制第二年次のデータが出尽くし、通年の抑制率が4.3%と
なりました。よって今回が本稿の最終更新となります。
(初稿は2020.4.1)

 2018年10月から始まった九州エリアのソーラー抑制は、第2巡目のゴールデンウイークの山場も超え、第二年次としてのデータが出揃いました。この1年間でソーラーの設置量は80万kW増加し抑制の必要量もその分厳しさを増していましたが、このコーナーはその様子が前年同月との対比できる形でグラフ化し月度更新してきたものです。(データソースは九州電力と、四国電力、中国電力のHP公開値によるものです)

▼まずは2018年/10月に始まった初年度の推移(グラフでは点線表示)
 10月の秋のシーズンから始まり、2019年の春に本格的な抑制が始まりましたが、4月に抑制日数が20日を記録(図中のA)、その後は5/13日に原発が1基点検停止に入ったため出力調整に余裕ができたようで、以降は抑制がゼロとなりました。また5月にはエリア需要に対する月間kWhベースのソーラー比率が18.7%を記録(図中のB)しています。
◆更新;ソーラー抑制第2年次の今・・・_b0050634_21424863.jpg

▼そして迎えた2019/10月からの第2年次(グラフでは実線表示)
 この1年間でソーラー設備が80万kW増加していることてソーラーの出力抑制は2月の早い段階から昨年同月を上回るペースで進みました。ただ川内原発の2基が3/16に続いて5/20と相次いでテロ対策設備の遅延による停止(C)となり、今年の4月~6月のピーク時の出力調整には余裕ができたこともあり、抑制日数は高いもののkWhベースの抑制率は抑えられ、エリア需要に対するソーラー比率も昨年を上回る水準での推移となりました。

▼通年の各指標
 ソーラー抑制については抑制実施日数ばかりが注目されますが、ソーラー設置者にとっては収益に直結する“年間を通したkWhベースでの抑制率”が重要です。
 こうした年間指標がどう変化しているかをまとめたのが下表です。初年度は2.8%に収まっていた年間抑制率が第二年次では年間で4.3%まで増加(年間抑制量として2.2億kWhの増加)しましたが、この犠牲と引き換えに年間のエリア需要に対するソーラー受入れ比率は13.7%と1.8ポイントの上積み(12.9億kWhの上積み)を達成する結果となりました。
 なお抑制率を抑えるために重要となる揚水発電への退避(揚水動力)と広域連系を通じての他エリアへの電力送出についてもエリア需要量との比率として指標化しておりますので併せてご参照のほどを。
◆更新;ソーラー抑制第2年次の今・・・_b0050634_21430506.jpg
 なおそれ以外の注目点としては抑制率増加の一方において、エリア需要に対するソーラー比率が増加した結果、水力、風力等を含めた再生エネルギー比率は25.3%と、なんと2030年度の政府のエネルギー基本計画の目標をすでに達成してしまっています。(もっとも脱原発の観点からは残念なことに原発比率もほぼ31.4%と、これまた政府目標を上回ってはいるのですが・・・)
 ともあれ(今季は稼働停止が相次いでいるとはいえ)出力調整のきかない原発を4基も抱えていながら13.7%ものソーラー比率をたたき出したことは、注目に値する九州電力の電力調整力です。
 また第二年次からは抑制が前日予告(ほぼ実施される)だけでなく、遠隔制御のサイトのみを対象とした当日決定予告(結果的には抑制が実施されないことが多い)の方式がとられ始めたことも抑制日数の低減に寄与していることが窺えます。
 
▼ソーラー先進地域をエリア間比較してみると
 九州、四国、中国はソーラー導入量が多い先進地域ですが、このエリアの2019年度の年間指標を、上記の九州エリアと同じ形式でまとめてみました。
 結果としてこの表からは、エリア需要に対するソーラー比率が同様に高い九州と四国での対応の方式が異なることが窺えます。
 片や九州エリアでは揚水発電の活用、他エリアへの送出といった手立てとソーラー抑制をミックスして対応しているのに対して、四国エリアでは今のところ大量に他エリアに電力放出(なんとエリア需要の50%に相当する電力を他エリアに放出しており、その分火力発電が多くなり出力の調整代が生まれる)をすることでソーラー抑制をせずに踏ん張っているといった状況の様です。
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▼ところで、もう一つの指標
 抑制が問題視されるソーラーですが、上記のようにkWhベースでしかも年間で見ると、あまり緊迫感が見えてきません。
 しかしながら一旦、端境期の正午過ぎの様子をkWベースで見ると様相は一変します。たとえば4月29日の12:30台のソーラー比率は・・・
 九州のソーラーが抑制していてなおエリア需要の81%に達しており、四国エリアは82%、中国エリアでも73%をマークしています。

 この緊迫感は電力の日内変動を図にするとよくわかります。下図は4/28~30の九州エリアの日内変動を示したものですが、まず塗りつぶしの面グラフが下から原発、水力、火力、それに包み込まれるようにして抑制された後のソーラー(橙色)、そしてその上がソーラーの抑制量(茶色)を示しています。また線グラフは下からまずエリア需要の規模(赤)、赤点線がそれに揚水動力を加えたもの、さらにそれに域外への送出電力を加えたものが黒点線の総発電電力を示しています。

 ソーラーが発電し始めるとまず水力と火力を絞ってソーラーを(需要の枠内に)包み込もうとするのですが包み切れずにエリア需要を超えてしまう。そこでまず揚水動力分を発電加算し、まだ足りないとエリア外送出分の発電を(需要として)追加する。それでもはみ出した分が結果としてソーラー抑制量となります。
 恐ろしいのはこの図に追記した緑線の"抑制しなかった場合の実ソーラー”です。見て頂くとわかるように4/29はなんとソーラー単独でエリア需要ラインを突き破ってしまっており、九州電力のご苦労が窺えます。
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# by C_MANN3 | 2023-10-20 04:01 | Comments(0)

◆原発事故から丸九年の節目を迎えて

3/19 再開された映画fukushima50で追記

【2020.3.11記】 3/11に合わせて公開された待望の映画“fukushima50”。公開日に即出向けばよかったのですが、人の少ない週明けにと思ったばっかりに、コロナの影響で近場のシネマコンプレックスがまさかの緊急閉館となりおあずけに。
 そのfukushimaからはこの3.11で9年もの歳月が経過。ですが福島の現場では廃炉の作業は進まず、汚染水ばかりが増えていく。その一方で規制委員会の安全審査を通過した原発はつもり重なり16基まで増え、内9基は一旦稼働を始めました。

▼目先の稼働は一進一退
 ただここにきて稼働基数は一進一退。一時期は9基がそろい踏みしていたのですが、2019年度に入って以降は相次く点検停止で基数を落とし、これからはさらにテロ対策設備の遅延によるペナルティ停止が相次ぎます。それに伊方3号機の仮処分停止も重なり2020年度は5基を下回る稼働状態がしばらく続きそうです。
 そして審査を通過している残りの7基は対策工事は進んでも金銭授受疑惑のスキャンダル等もあり、再稼働のめどは立たないままの状態が続いています。ですが、これが原発の行き詰まりで、脱原発に向かう兆しなのかというと・・・そうではない。

▼一方で進まない廃炉表明
 脱原発、少なくとも“原発依存を減らす”というならその確証は廃炉基数の積み上げのはずなのですが、現在確定している廃炉は24基でこの数が全く動かない。
現在審査中のサイトでは活断層の疑念のあるものも少なくないのですが、結局廃炉とはならず、対策費を積み上げるだけで折り合いがついてしまう可能性もある。審査請求をするか否かの態度を保留しているサイトでは、昨年の東電刈羽の例にもあるように頑として廃炉の言明を避ける。しかも20年の稼働延長はすでに常態化してしまっています。今後も全てが稼働延長を申請するものとしてこのままいくと、少なくとも数字の上では2030年代には30基を超える基数が稼働する可能性がある。そしてその数は2050年に至っても20基を超えたままの可能性さえあり、これでは文字通り“元の木阿弥の原発列島”になりかねません。

 審査を重ねるごとに高くなる安全基準の高度化とそのバックフィットで費用負担はますます増大し、しかも見えない再稼働の時期・・・原発は経営資源としては日を追うごとに不良資産の様相を濃くしているはずなのですが、なぜかそれが廃炉の見極めにはつながっていかない。これはもしかすると・・・不良資産も不良と認めなければ帳簿上は金を生む資産のまま温存できるということなのか、あるいは政府方針である2030年のエネルギー基本方針を崩さないための忖度なのか等と勘繰ってみたくもなります。

▼皮肉を込めての 新たなエネルギー基本計画への提案
 政府は一見、原発政策を成行きに任せているようにも見えるが、基本方針で原発比率を20~22%として置いておく限り、それは電力会社にとってよりどころでありつっかえ棒になっている。この数字を下げればそれに見合って廃炉が進むと思うが、下げる気配はない。
 しかもこの方針にはもう一つの問題がある。同じく規定している再エネ比率の22~24%と、これに関わるCO2削減目標の26%は、今や国際的にも周回遅れの目標値であり、COPの国際会議が近づくたびに蒸し返しかえされて非難の的となっている。
 まともに考えるなら再エネ比率は1日でも早く10ポイント程度のアップをさせることが望まれるが腰は重い。何しろ合計は100%なので、それをあげれは原発比率の見直しに波及しかねないということなのでしょうか。

 どうせ数値の御旗だけを掲げて成行きに任せるのなら、そして原発比率の御旗が下せないのなら、再エネ比率の10ポイント上げは石炭火力の下げで辻褄を合わせてはどうか・・・そうすれば再エネ比率のアップと、最近目の敵にされることの多い石炭火力の抑制ポーズの、2つの面で国際理解を得るためのアピールにはなる・・・などといった皮肉なことを思ってしまいます。
 そしてその上で(ちょっと矛盾した期待ですが・・・)原発と石炭は成行きに任せ、再生エネだけは真剣に取り組くんでいただくなら日本の電力にも将来展望が開けるというものです。
 
▼10年スパンの再エネ拡大抜本策;水力の掘り起し
 2030年のエネルギー基本方針は、原発比率はともかくとして再エネ比率はソーラーだよりの成り行きに任せても多分達成されそうな勢いです。ですが同じ再エネでも10年近くなっていながら風力も地熱も動かず、水力は小水力のみ。
 ですがソーラー強しといえども成り行き任せでは現在の目標22~24%を大きく超えることは困難であり、これを10ポイント上積みしようとするなら本格的な施策が必要となります。

 そして10ポイントものアップに見合う再エネ電力源としては大規模水力の掘り起しかない。ダムがご専門の元国交省河川局長、竹村公太郎さんの著書「水力発電が日本を救う」ではこの話が篤く解説されています。
 現在の多目的ダムには法的な縛りが多く、治水と利水の権益のせめぎあいにも根の深いものがある。なんと多目的ダムと言いながら発電設備のないダムがかなりある。ここ数年繰り返される大水害では最悪のタイミングでダムの緊急放流が余儀なくされているが、それを回避するための予備放流は権益が絡んでいて柔軟な調整の場がないとも・・・
 竹村さんはこうしたしがらみを断ち切り、ダムの運用変更とかさ上げ(かさ上げなら費用も期間もあまりかからない)を図るならばなんと年間消費電力量の10%に相当する1000億kWhの電力が上積みできるのだと(まさに10ポイントアップです)。しかもそれはここ数年で必要が言われ始めた水害からの列島強靭化との連携施策となるものであり、まさに治水と利水を同時に狙える道なのだとの提言には大いなる魅力と迫力を感じるのですが・・・

《2020.3.19追記》再開された映画 “fukushima50” を見る

 やっとシネコンが再開されました。ですがコロナウイルスの雲いきは益々怪しく、いつ再度の休館になるやもしれず見るなら今のうちと出かけてみると、不気味なほどにロビーには人影が少ない。劇場側ではチケットを市松模様の一つ飛びの席でしか販売せず、半券のもぎ取りもしないといった安全体制での再開でしたが、その配慮もむなしく450席の部屋で数えてみると観客はたったの15人でした。
 ですが映画は思っていた通りの迫力で、当時テレビにくぎ付けで目に焼き付いていたはずなのに忘れかけていた風景がよみがえってきます。
 この映画を見て思うことは人それぞれであっても構わない、一人でも多くの人が見て、思い起こし反芻する機会になればと思うのですが、どうやらコロナ騒動の波に飲み込まれて観客動員数が伸びないままに終わりそうなのが残念です。

# by C_MANN3 | 2023-10-20 03:11 | Comments(0)

◆日本の電力構造、この3年間の変化

【2020.1.3】 R01年度上期の電力事業者統計と、1000kW以上の自家発電所の統計が出ましたので、日本の電力構造のこの3年間の変化を恒例の上期の年次推移としてとりまとめてみました。

上期の年次推移では年間データを待たずに半年早く変化を見ることができるのが取柄ですが、ただ一つの難点として、太陽光の発電電力のみは上期偏重のためその構成比が高く出る点にご留意を。
なお今回もこの3年間の増減を“換算年率”と“稼働率80%の原発に換算した基数”で表末尾に表記しています。また各表は表をクリックして頂くともう少し大きい字で見て頂けます。

《電力需要》 ここでは本表の総計ができるだけ日本の全体をカバーしたものとなるように、特定供給、自家消費の項目には1000kW以上の自家発電所の値も合算しています。
どうやら昨年の総需要は高めに出ていたようで、R01年度で再度以前の値に戻ってしましました。結果として3年間の増減年率は-0.2%とほぼ横ばいの推移となっています。新電力の販売シェアはここにきて高圧、低圧領域での旧電力の巻き返しが激しく、15%近辺で頭打ち傾向が見られます。一方低圧電灯の領域では順調にシェアが増加しており、トータルとしての新電力シェアは15%まで来ております。
◆日本の電力構造、この3年間の変化_b0050634_2250135.jpg

《発電電力量》
 旧電力は販売が年率3.1%(3年間で原発10基分相当)と大きく下落しているにもかかわらず、発電量の下落は2.1%(原発6基相当)にとどまっています。これは旧電力の電力が新電力経由で販売されることで規模が維持されていることを示唆するものです。
燃料種別で見ると原発、ソーラーの伸長が著しく、そのしわ寄せが石油の激減とLNG低下となって表れてるようです。なお石炭は微減です。
なお今回よりJERAについては電源開発、日本原子力と同様に旧電力として区分集計しております。
《低炭素化》 原発はいまだ6%に止まっています。対して“水力+新エネルギー”はソーラーの伸長で既に19%まできており、政府の2030年目標に対してもう一歩の所に迫っています。また化石燃料比率も66%まで下がっていますがこれには原発再稼働の効果も含まれているのが残念なところです。
◆日本の電力構造、この3年間の変化_b0050634_22515964.jpg

《発電設備》 この表では原発を除外して集計しています。原発を除外すると旧電力は原発9.2基相当分の設備を減らしていますが、一方で新電力事業者が7.1基相当分の上積みをし、自家発電設備も原発4.8基相当の増となっています。結果として原発を除く発電設備の総量はほぼ一定のままとなっています。
《設備稼働率》 全設備の稼働率は半年間の総平均で45%近辺を推移していますが、区分別では旧電力の設備と新電力事業者の設備で稼働率に数ポイントの開きが出ています。旧電力では原発の稼働とソーラー受入れで火力の稼働率が低くなっているものと思われます。また燃料種別で見ると石炭がベースロードとして安定稼働しているのに対して、LNG火力は需給調整として扱われているためか、石炭より低い稼働率となっており、その差がさらに広がりつつあります。
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なおこの全設備量は夏の最大需要の1.62倍に上る規模であり、これを稼働率に換算すると62%で残りの38%が余裕ということになります。この値から設備点検等による停止の10%と送電ロスの5%を差し引いたとしても実質余裕としては23%程度が残る計算ですが、実際の運用では短期長期の需要を見ながら受給調整停止と称して戦列から外すことで、日々の需要に対する余裕率を常に5~10%にコントロールしているということのようです。(なお一旦戦列から外すと北海道の胆振東部地震でも見られたように突発事態には即応できず、再稼働には日数を要するということになります)

また旧電力の《発電》と《設備》の表を組み合わせてみると、旧電力は発電量を原発6基分落しており、しかも原発が6基分動いている。となると旧電力では原発以外の発電設備はプラスマイナスで12基分余剰になっているはずですが、《設備》統計からわかるようにその内の9基相当分の設備を廃止しています。そのほとんどは石油発電やその他の老朽設備のようですが、日本の発電設備は需給や原発の再稼働を見ながら新陳代謝と総量コントロールをしていそうなことが窺えます。

# by C_MANN3 | 2023-10-20 01:03 | Comments(0)

◆春を迎えて、連日続くソーラーの抑制

7/1 6月度の抑制はゼロ。抑制日数の予測検証を、下端に追記更新。

【2019.4.5】 ここしばらくは連日のように九州エリアのソーラーの抑制が続いています。昨年の10月、始まった当初は抑制は当面は特定の季節の土日程度で収まるのではと思っていたのですが・・・春を迎えた三月に入って以降は予想とは異なり、土日の枠を超えて平日にも頻繁に抑制が続いています。

昨年の4月、5月にはエリア需要に対するソーラー比率が80%近くになっても受け入れられていたはずなのにこの一年で一体いかなる状態変化が起こっているのか。その様子が気になり、公開されているエリアの1時間ごとのデータをもとに分析してみました。

▼まずは抑制のひっ迫度を指標化
先ず毎日のソーラー最大点におけるエリア需要、火力、水力発電、揚水動力への回避等の各データを使って抑制せざるを得なくなるひっ迫度をいくつかの指数にしてみました。

 ・ひっ迫度A=ソーラーの最大点値/(その時点のエリア需要)
 ・ひっ迫度B=ソーラーの最大点値/(エリア需要から原発、バイオ等の絞れない
                   ものを除いたもの)
 ・ひっ迫度C=ソーラーの最大点値/(エリア需要から絞れないものを除き、それに
                   揚水回避、エリア外への退避を加えたもの)


ひっ迫度Aは最も基本的な指標ですが、実際は原発、バイオ発電等、ソーラーが増えても絞れないものがあるため、それを減じたもので除したのがひっ迫度Bであり、原発が稼働し始めるとこの指標は急増します。ですがこの指標が100%を越えてもそれで抑制に至るわけではなく、揚水動力、エリア外への送電でひっ迫度を減じることができるため、それを加味して指標化したものがひっ迫度Cです。

▼ひっ迫度指標による分析の結果
その上で実際に抑制が行われた日のABCの指標値を突き合わせてみると、実際に抑制が実施された日にはひっ迫度Cの値が70%近くまで上がっていることが判明しました。そこで今回は68%を越えた日を抑制予測日として月ごとに集計すると、実際の抑制実施日数とほぼ合致する結果となりました。

以上の結果を指標値の推移と共に各月の抑制日数とともにグラフにすると下図のようになりました。各指標は各月の平均をプロットしたものであり、例えばひっ迫度Cは雨の日も曇りの日も含めた平均であるため、この平均値が40%を越えたあたりから抑制日が増え始めます。
その上でこの図を見ると、ひっ迫度Cが特に2018年度の後半あたりから大きくなっており、対前年比でみると20ポイントもの上昇を示しています。この変化は、併せて図示している原発の稼働台数増大と、図示はしていませんがソーラー自体が前年比15%程度増加し、逆にエリア需要は5%程度低下していること等が重なって表れたものと思われます。
◆春を迎えて、連日続くソーラーの抑制_b0050634_1355876.jpg

▼これを使っての3~6月の予測
ひっ迫度Cの指標で抑制日数がほぼ見通せることが判明したため、3~6月の予測をしてみました。なおその際に使う1時間ごとのエリアデータには前年同月のデータをもとに、エリア需要、ソーラー発電量を前年同期比で修正したもの使っています。こうして得られた予測結果ではグラフの右上端に表形式で記載しているように向こう3ヶ月の抑制日数が4月に20日間、5月が13日間、6月で6日間となりました。

以上はラフな試算結果であり、実際の抑制日数がこの試算よりも低く推移するならば、それに越したことはないのですが、まずはこの試算結果を手元に置きながら、ソーラー抑制の山場であるゴールデンウイークの推移を見守りだと思います。
《期待される原発の運用見直し》
抑制日数とともに、もう一つ気になるのがkWhベースの通年の太陽光発電抑制率です。今回併せて試算してみると、抑制が始まった昨年の10月から今年の9月までの最初の1年間のkWh抑制率予想は3.6%と出ました。これは補償が無ければ即、発電事業者にとっては利益率が3.6ポイント下がることを意味しています。(但しこの%値は下端追記欄の結果検証で順次改定の予定)

ソーラーの機動的な抑制は更にソーラーを受け入れるためには必須の措置であるとしても、犠牲は少ないに越したことはない。やはり別掲の記事でも提言しているように、(長期サイクル運転の導入等)原発の運用を見直し、点検停止を抑制のハイシーズンに持ってくる 等の配慮はあっても良いのではないかと思います。試に試算してみると、この4月、5月にもし原発2基が点検停止するならば、両月合計の抑制日数は33日間から19日間へとほぼ半減します。ソーラー先進地の九州電力ならではの叡智に期待したいところです。

◆【2019.7.1追記を更新】 抑制日数予測の結果検証

◆春を迎えて、連日続くソーラーの抑制_b0050634_11272512.jpg▼まず四月度の抑制日数は予測の20日に対して実績も20日と、ぴったり一致しました。
▼5月度は予測が13日に対して10日にとどまり、続く6月も予測が6日に対して抑制日はゼロで終了ました。

詳しくは、玄海3号原発が当初の想定よりも1か月早い5/13に定期点検に入った日を境に、それ以降は連日続いていた抑制がぴたりと止まり抑制無しの状態が続いています。

5/13以降には晴天雨天の頻度等での特異な形跡もないため、この変化は“出力絞りのきかない原発の稼働基数がソーラーの出力抑制に強く影響する”ことを裏付けているものと考えてよさそうです。

▼なお、3,4,5月度の一時間刻みのエリア需給データが出ましたのでそれを反映させ、H30/10月からR01/9月までの1年間のkWhベースの抑制率予想を、上記の3.6%から2.7%へと修正させて頂きますが、これも原発前倒し停止の効果と言えそうです。

# by C_MANN3 | 2023-10-19 04:05 | Comments(0)